──今回のアルバム、たとえば“フレイドル”の《明日の夜に死んだって/私は全部覚えてる》という歌詞や、“middle”の《この先の道は迷路》という歌詞に象徴されるように、未来のわからなさとか、あるいは「死」という絶対的な未来とか、そういうものを前提にしている歌詞が多いなと思ったんです。その中で、「今、生きている」ということを書き残しているし、いろんな予感がある中で「あとは進むしかないんだ」という精神状態を書き残している……そういう感覚がアルバム全体にあるような気がして。この背景にあるものってなんだと思いますか?最初は「私が注目されているんだから、私が引っ張らなきゃ」って、勝手に背負っちゃっていたと思う。でも「任せていいんだ」と思えた時に、「バンド全体で何かを残したい」という気持ちが出てきたんだと思います。(比喩根)
比喩根 この1、2年で、最初に“ネオンを消して”なんかでハネた頃と比べると、再生数は減っていると。で、いろんな人に話を聞くと、初動の3年がどうこうと言われるし、高校生と言われていたのがいつしか20代になり……二十歳なりたてくらいまではよかったけど、そこから5年6年経つと、バンド歴はもう中堅になってくるじゃないですか。そこでの焦りもありましたし、でも、そんな中でも、この1、2年でライブの評価は上がったり、こうやってメンバーが力を付けたことをバンドに還元してくれたりして。最初は「私が注目されているんだから、私が引っ張らなきゃ」って、勝手に背負っちゃっていたものがあったと思うんです。でも、それが分担されるようになって、「任せていいんだ」と思えた。そう思えた時に、「バンド全体で何かを残したい」という気持ちが出てきたんだと思います。
──なるほど。
比喩根 「前に進まなきゃ、進まなきゃ」って、ひとりで背水の陣みたいなことをずっとやっていた気がしていたけど、そうじゃなくて。chilldspotというバンドで頑張っていきたいんだから、あとはやるしかないって。ずっとマイナスの背負いみたいなものがあったけど、もう振り切って、迷路かもしれないけど、走っていくしかない。「最後は死ぬだけでしょ? だから、なんでもよくね?」みたいな、答えが今までよりも軽くて前向きなものに変わっている感じはあると思います。自分の中のバンドに対しての責任感がポジティブなものになったというか。曲もひとりで書いた曲じゃないし、だからそういう部分が出てきているのかもしれないです。
──この1、2年でライブの手応えも変化していたんですか?
比喩根 周りの人に言われていたことを言われなくなったり、それによって私が勝手に背負ったりっていう状況の中でも、自分たちのライブ映像を振り返って観ると、「そんなの全然気にしなくていい」と思えるくらいにライブの安定感は増していたんですよ。魅せ方としても、自分たちでできることが増えていて。あと動員も落ちなかったんですよね。だからこそ「もっと勝負できるんじゃないか?」と思えたのはあると思います。私が思っている以上にメンバーには華があったし、存在感もあるし、だったら、それを見せたいっていう。そう思えるくらい、この2、3年のライブでの手応えは大きかったと思う。
──比喩根さんがひとりで背負っていたという状況は、玲山さんと小﨑さんはどんなふうに感じていたんですか?
玲山 ずっと昔からそれはあるんですよね。背負いがちというか。
比喩根 性格的にね(笑)。
玲山 「私が引っ張っていかなきゃ」と思いがちだと思うし、それもわかるし。でも最近はフラットな感じになってきたのかな。昔よりは、張り詰めていない感じがする。
小﨑 昔は(比喩根が)ひとりで歌詞やメロディに悩んでいる時間があったけど、そこに僕らは関与していなかったから、比喩根が溜め込んでいたり、病んでいたりっていう状況に対しても、僕らは助ける方法がわからなかったんですよね。でも今は相談もしてくれるし、僕らも歌詞も書けるしメロディも作れるようになったから、その相談に乗れるし。昔よりは軽減させられているのかなって思いますね。
比喩根 うん、だいぶ軽減してると思う。
──最初に比喩根さんが「気にかけてもらいやすくなった」と言っていましたけど、確かに今回のアルバムは過去最高にキャッチーで間口の広いアルバムだと思うんです。そこに辿り着くために必要だったのが、「chilldspotとして残したいものがある」という思いだったことは、バンドとしてすごく健康的なことですよね。私は、今がいちばん「途中だ」って思ってるかもしれない。「まだまだあるんだ、この先で何かを得たいんだ」っていう感覚もあるし(比喩根)
比喩根 そう思います。「バンドとして残したいものがある」と思った時に、それを「知る人ぞ知る名作」みたいなものにしたいわけじゃなくて。chilldspotがやりたいこと、できることの中で、より多くの人に聴いてもらえるにはどうすべきかを考えて、メロディを工夫したりっていう、そういうことに向き合うようになったんだと思います。
──アルバムの最後を飾る“middle”では、さっきも引用しましたけど《この先の道は迷路》と歌われていて。この曲がアルバムの最後にあることには、とても大きな意味があるなと思いました。どのようにして生まれた曲なんですか?
比喩根 この曲は、アルバムに入る曲がほぼ出揃った時に、「ミドルテンポで、空間広い系の曲が欲しね」となって作ったんです。歌詞に関しては、小﨑くんがくれたトラックを聴いた時に、雨の中の河川敷みたいな場所を、女の子ふたりがウワーッて走ってる、何かから逃げているっていうイメージが湧いたんですよね。だから、キュンキュンしたり、甘酸っぱい感じというよりは、ちょっと悲壮感があるようなイメージですね。
──甘いだけじゃなくて、もっと現実味がある情景ですよね。今回、リリースツアーのタイトルが「5th one man live tour “mid way”」じゃないですか。このツアータイトルも“middle”に繋がっているような気がして。「何かの途中にいる」という感覚が、今のchilldspotにはあるんですかね?
比喩根 ツアータイトルの「mid way」は、“middle”のタイトルが決まる前にはもう決まっていたんですけど、でも本当に、「途中」っていう意味合いでツアータイトルは決めたんです。私は、今がいちばん「途中だ」って思ってるかもしれない。「まだまだあるんだ、この先で何かを得たいんだ」っていう感覚もあるし。とにかく私は、前よりも爪痕を残すことを意識するようになったかな。どのライブでも、どのフェスでも、どういう曲を出すにしても、爪痕を残したい。
比喩根 それはハッキリしていて。前までは自分で勝手に背負い込んでいたし、フロントマンでいることに勝手な責任を持っていたと思うけど、今はそんなのを持たなくてもメンバーに魅力があるってことを知ってる。前までは「私がフロントです! 私の歌の力で!」って押し切ろうとしていたけど、今は一歩引いて、chilldspotというバンドのかっこよさを伝えたい。そのくらい、このふたりがすごくいいし、chilldspotというバンドがすごくいいから。そのためにどうしていくか?っていう感じなんですよね。「自分の歌を歌いたい」というより、chilldspotのためにできることをやりたい。なので、「何を残すか?」と言われたら、「声がいい」とか「曲がいい」みたいなことじゃなくて、総合芸術としてのバンドのエネルギー。バンドというもののかっこよさだと思います。
chilldspotのインタビューは9月30日発売の『ROCKIN'ON JAPAN』11月号にも掲載!
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