【特集】2025年屈指のバイラルヒットを生んだ新鋭バンド・セカンドバッカー。あなたを守るポップなロックの実像と最新曲“喧嘩するほど”が示す可能性とは?

【特集】2025年屈指のバイラルヒットを生んだ新鋭バンド・セカンドバッカー。あなたを守るポップなロックの実像と最新曲“喧嘩するほど”が示す可能性とは?
たとえバンド名を聞いてピンと来なくても、“犬とバカ猫”という昨夏リリースされた楽曲のタイトルを知らなくても、聴いてみたら「ああ、これか!」となる人は多いのではないだろうか。各サブスクのロック系やニューカマー系のプレイリストに軒並み名を連ねたうえ、TikTokでは床に置いてローアングルにしたスマホカメラに向けてひたすら肘打ちを繰り返す、という動画にこの曲のサビが使われてミーム化。数多くの著名人やインフルエンサーが投稿するなどしてSNS総再生数33億回超を記録したほか、CMソングにまで抜擢されるという特大バズを起こしたのだ。


なんで肘打ちなのか? 特にバイオレンスな要素を感じない曲だし、てっきり本人たちの預かり知らぬところで曲と動画が一人歩きしているパターンかしら、と気になって調べてみたら、発端はタワレコで出会ったリスナーに「年中夏休み」扱いされたというエピソードを添えて憤りをコミカルにぶつける、まさみ(Dr)本人による投稿であった。そもそも彼はバンドのドラマーとして活動する傍、TikTokで85万人超(本稿執筆時点)のフォロワーを抱えるクリエイターとしての顔も持っているのである。……令和だなあ。

そんなまさみ擁するバンド・セカンドバッカーが、上記のバイラルヒットを記録して以降では初となる新曲“喧嘩するほど”を1月21日(水)にリリースする。これまたポップな中毒性を有した楽曲となっており、バンドの認知と人気をよりいっそう押し上げていきそうな気配がたっぷり。となればこの機会にぜひ「聴いたことある」からもう一歩踏み込んで、セカンドバッカーとはいかなるバンドなのかも知っておきたい。

まずはプロフィールと来歴から。メンバーはこうへい(G・Vo)とまさみの2名で結成は2023年。ライブやMVの演奏シーンではサポートベーシストを加えたスリーピース形態をとっている。2023年5月に初の音源“どうせ枯れるなら”をリリースして以降はコンスタントに楽曲を発表しながら、翌年にはJAPAN JAM出演を果たすなど存在感を増していき、11月には初のワンマンライブにしていきなり渋谷WWW Xを即完。2025年には初の全国流通盤となるEP『言えなかったことばっかりだった。』をリリース、そこから先行配信された楽曲“犬とバカ猫”が冒頭で触れたバズを引き起こし、秋には初の全国ツアーを完遂──というのが、これまでの大まかな歩みだ。

サウンド面はいかにもスリーピースらしいタイトなバンドサウンドが軸。ギターはコードバッキングやアルペジオが中心で、複雑なリフやこれ見よがしなギターソロみたいな要素は搭載されない。リズムも8ビートや4ビートが基本でフィルは控えめ。時にリズムマシンのような正確さで、時に歌うようにメロウなプレイで、あくまで下支えに徹している印象がある。“バンドマンとして”や”夜露死苦”といったアッパーなライブチューンを除けば、かなり余白を残したアンサンブルを構築するタイプだ。

その余白の部分を埋める要素こそ、穏やかに語りかけるように、鬱積した感情を吐き出すように、ふと呟きを漏らすかのように、それぞれの曲調や舞台設定に見合った表現で届ける、こうへいの歌。演奏面のミニマリズムとは対照的に、これでもか!と文字量を詰め込み、ラップやポエトリーリーディングに接近するくらい勢いある字余りっぷりを見せている。描かれるテーマの多くは恋愛で、何気なく他愛ない日常のワンシーンを通して「君」と「僕」の関係や距離、その推移と変化を淡々と捉えていったかと思えば、グッと自己の内側へと潜り込んで、そこに渦巻く整理のつかない感情や感傷をそのまま吐露していたりもする。

恋愛という誰の身にも起こりうる身近な題材と、無理に美化したり清書することのない等身大の言葉は、近年のポップスにおいてほぼ必須項目とも言うべき「共感」に直結する。リスナー個々が持ち寄った現状や思い出を乗せ、ぶち撒けて昇華するという役割を負ううえで、余白の残されたロックサウンドは非常に効果的だ。センチメンタルな空気を纏ったMVなどのエモーショナルブランディングや、SNSを活かした「近い」存在感の確立も同じことが言えるだろう。セカンドバッカーのキャッチフレーズは「あなたを支えるバンド」であり、オフィシャルサイト上のインタビューによれば「2番目の守り人」として「あなたの1番ではなく、2番目であってもあなたのことを思い続けたい」との思いが込められているそうだから、成り立ちからしてもうリスナーフレンドリー。そのマインドに忠実な音楽性と表現方法を体現し続けているわけだ。

そして最新曲“喧嘩するほど”は、これまでの文中で触れてきたセカンドバッカーの特徴や強みがしっかり発揮されていると同時に、新たな一面もまた感じさせるのだ。骨格としてはパワーポップ調で、のっけから大ぶりなコードストロークにベースもドラムもぴたりと並走する、至極タイトで軽快なバンドサウンドを展開。サビでは4つ打ちのリズムとキャッチーなメロディが弾ける、ライブでのキラーチューン化が約束されたタイプの曲である。それに加え、全体を通してブレイクを多用してそこへセリフ調の歌を乗せてみたり(歌詞カードにはないドキッとする箇所も)、メロディアスなBメロの一部にだけボーカルやギターにリバーヴをかけていたりといった小技も光り、2分半そこそこというショートチューンながら単調な印象を回避している。

歌詞に描かれるのは、倦怠期を迎えたカップルの痴話喧嘩といったところ。彼らの歌詞には男女どちらとも取れるものや、一曲の中で両者の立場が入り混じるものもあるが、この曲の主人公は口調からして女性だろう。《全然休みんなっても構ってくんない》うえに浮気性と思われる相手に対して、《帰ってくるならそれだけで》いいし《貴方が誰と寝たって/構わない痛くもないわ》のだと啖呵を切って強がりながらも、《もう時々優しさをくれませんか》なんて健気さも顔を覗かせるあたり、時代や筆致が違えば演歌や歌謡曲になったっておかしくない、典型的な「ズルズル行ってしまってる」タイプの恋模様が綴られている。にもかかわらず、ポップな曲調と語呂と語感のハマりが気持ちいい言葉選び、そして半ばヤケクソ気味なテンションの高さによって、むしろなんだか爽快感すら感じさせる仕上がりとなっているのが面白い。

この曲の主人公は別に前向きにも後ろ向きにも着地しない……というか着地自体していない。きっとこのカップルはそんなに好転しないまま今の関係を続けていくんだろうなぁ、という曲でもある。で、リスナーの大半がこういう恋愛の渦中にあるか、もしくは経験者なのか?と問われればそんなことはないはずで、つまり「共感」という観点ではマスへ向いていない。「あなたを支える」というバンドの精神における「あなた」の範囲だって限定的な曲だ。けれど間違いなくポップスとしての間口は開かれており、ポジティブなパワーを放っている。そのことこそ、セカンドバッカーのさらなる飛躍へのキーになるのではないだろうか。

ごくごくパーソナルな内容でも、書き手から離れたフィクショナルな内容であっても、等しくエンターテインメントに昇華できる懐の深さ。ふわっとした舞台設定で最大公約数を狙いにいくのではなく、楽曲ごとに違った人間模様や物語、そこに宿るリアリティでピンポイントの「あなた」に刺していける胆力。バンドを取り巻く環境も大きく変化したであろうバズを経て生まれた“喧嘩するほど”から感じるのは、音色のチョイスや言葉選びによって得られる自分たちらしいカラーへの自信と、どんなテーマだってセカンドバッカーの曲として勝負してやろうぜ、という気概である。このモードに入ったなら、ラブソング×ギターロックという需要の高さゆえに群雄割拠するシーンにおいても、今後ますます頭角を現していく存在となっていくに違いない。(風間大洋)

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