──mono²としての最初の楽曲“愛情”は、ピアノと歌を軸にしたミディアムバラード。Yaffleさんはドラマ『人間標本』の劇伴も手がけていますが、“愛情”はどんなビジョンを持って制作されたのでしょうか?Cenaさんの声が(リスナーの)頭に張り付くような曲にしたいとも思っていて(Yaffle)
Yaffle 音響的には、さっきお話ししたことに通じてますね。
──音数を抑え、歌を活かす。
Yaffle そうですね。最初はピアノと歌だけでいいんじゃないかと思ってたんですけど、もうちょっとドラマっぽさが欲しいということで、音を加えて。『人間標本』というドラマは、アウトラインはとても派手ですけど、最終的には親子愛を描いているし、情感に迫るものがあると思っていて。あとは自分が音響的にやりたかったことだったり、Cenaさんのイントロデュースでもあるので、ベン図が交わっているところを自分になりに見出しながら作っていきました。すごく自由にやらせてもらいましたね。Cenaさんの声が(リスナーの)頭に張り付くような曲にしたいとも思っていて。
──確かに、歌が頭の中で鳴っているような感覚がありました。
Yaffle 特に僕が音楽を摂取し始めた時は、イヤホン、ヘッドホンで聴くことがほとんどだったんですよ。スピーカーで聴くとかライブに行くとかではなくて、夜、ひとりで聴くことが多かったし、「声の近さ」が好きだったんですよね。最近はそこまでじゃないですけど、その頃は「近さこそが正義」みたいなところがあったし、それがボーカリストとリスナーの距離につながっていると思っていて。ショーを観ているような感じなのか、内心に語り掛けてくる感覚があるかで、音楽体験は全然違いますからね。
──“愛情”の場合は完全に後者ですね。最初からサウンドメイクや音の位相もイメージしながら作っているんですか?
Yaffle はい。よく勘違いされるんですけど、楽曲の制作はベルトコンベア式ではなくて。歌詞があって、メロディがあって、コードを付けて、ビートが……みたいな順番ではなくて、思い描いている表現を実現させるためには、最初の段階で最適化された設計をしなくちゃいけない。たとえばですけど、演歌の曲を渡されて「これを2026年の最新の音にしてください」と言われても無理なので(笑)。“愛情”は歌詞や歌声、音像を含めて、表現したいことを実現できるように初めに仕様を決めることができたので、すごく楽しかったですね。
──当然ですけど、自分のユニットなので制作の自由度はめちゃくちゃ高いですよね。Cenaさんは“愛情”のデモ音源を聴いた時、どんな印象を持ちました?
Cena スケジュールがタイトで、すぐ録らなくちゃいけなかったんですよ(笑)。なので曲を覚えることと「どう表現しよう?」が一緒に来た感じというか。ドラマの内容を踏まえて、どういうニュアンスで歌うのがいちばんいいのか、頭をフル回転させてました。
Yaffle ドラマ自体は「親子愛」がテーマで、恋愛とはまったく違うじゃないですか。同じ「愛」という言葉で括っていいのかな?と思うくらいの違いがあるので、それを歌に変換するにあたって、どういうアプローチが最適なのか?ということですよね。言い方が難しいですけど、声の汚し方というか。そこはかなり試行錯誤しました。
Cena やりすぎるとヒステリックに聴こえてしまうし、引っ込めすぎると優しいだけになってしまって。そこは何度も話し合いながら試してましたね。
──お互いにやりたいことがあるわけで、普段のプロデュース業とは違いますよね。
Yaffle そうですね、違うと思います。普段も(歌のテイクを比較して)「こっちのほうがいいですね」とかはありますけど、歌でずっとやってきた方にあれこれ言ったりはしないので。
Cena 楽曲はYaffleさんが作ってくれますからね。「楽曲=子供」だとして、それをどう育てていくか?という視点は同じだと思っているし、Yaffleさんが表現したいことを押し出すのが自分の役割なのかなと。
Yaffle というか、Cenaの歌があればなんとかなるので。こういう仕事を始めた頃、「曲はともかく、仮歌がよければコンペ通りやすいよね」とか言ってたんですけど(笑)、素晴らしいプレイヤーがいれば、コンポーザーは誰でもいいんですよ。
──そんなことは絶対にないと思います(笑)。
Yaffle (笑)。学生の頃ジャズも勉強してたんですけど、「曲はいいけど、演奏がダメだな」ということはなかったですけどね。これも余談ですけど、音大の卒業制作の課題がオーケストラの楽曲で、オケのメンバーのブッキングまでやらされたんです。40人~50人くらい集めなくちゃいけなくて大変だったんですけど、その時「ブッキングも含めて作曲だから」と言われて。
──どんなメンバーに演奏してもらいたいか?も作曲の一部だと。mono²に当てはめると、Cenaさんにオファーした時からYaffleさんの制作が始まっていたと言えるのでは?
Yaffle そうです。Cenaさんに歌ってもらうことが自分の表現の一部なので。
──“愛情”とドラマ『人間標本』のサウンドトラックジャケットは、Cenaさんのイラストですね。
Cena 絵を仕事にしたいと考えていた時期もあったんですよ。でも、描きたくない絵を描くことができなくて。
──依頼を受けてイラストを描くのは難しいかも……。
Cena なので職業にするのは向いてないなと思って(笑)。“愛情”とサウンドトラックのジャケットは楽しく描けました。『人間標本』には「色覚」とか「蝶々」とかいろいろなモチーフがあって。「色覚」を表現するのはどう考えても無理なので、「蝶々」をテーマにしました。絵を描く時はいつもそうなんですけど、何か意味を込めているわけではなくて。あとから自分の絵を見て「なんでこうしたんだろうな?」と思うんですよ。言葉でも思考でもないところを使って描いてるんだと思うし、だからこそ、描きたくないものは描けないんだろうなと。
mono²では敗者のための音楽をやりたい。僕自身もそういう音楽に助けられてきたんですよね(Yaffle)
──5月22日には渋谷WWW Xで初ライブも決定し、次作の制作も進んでいるそうですが、この先mono²としてどんな音楽を届けたいと思っていますか?
Yaffle これも表現が難しいですけど、敗者のための音楽をやりたいと思っていて。(敗者の)定義は人それぞれでいいと思うんですけど、僕自身もそういう音楽に助けられてきたんですよね。誰かが落ち込んでる時に、「頑張れよ」という励まし方もあるし、「俺もしんどいよ」という励まし方もあると思うんですけど、mono²は後者みたいな存在であったらいいなと思うし、それができれば社会にとって意味があるものになるのかなと。僕の裏テーマですけどね、それは。
Cena 私も同じような感じがして。もがいていたり、何者にもなれない、でも何者かになりたいという人に対して、mono²というアーティストが力を与えることができたらなと。私もそうなんですけど、悲しい時に楽しい曲を聴いて虚無感を覚えることもあると思うんですよ。すごい落ち込んでる時に、空が晴れていると逆にしんどかったり。そういう時に聴いてもらえる音楽を表現していきたいですね。
Yaffle 一致しました(笑)。
──Yaffleさんとしては、本当に自分がやりたい音楽を体現できる場所でもあるのでは?
Yaffle まさしく。普段のプロデュース業とはルールが違うだけなんですけど、さっきも話したように、やりたいことを実現するために根本から設計できるので。なんでもやれるって、難しいところもあるんですけどね。mono²の定義はまだ決まってないし、今の時点では「わー、何もなーい」って泳いでる感じです(笑)。
──次の作品もめちゃくちゃ楽しみです。ちなみにmono²というユニット名の由来は?
Yaffle えっ、なんだったかな……。
Cena (笑)。
Yaffle ふたり組っぽくて、造語で、カラフルっぽくなくて。あとは発音しやすくて、英語表記にしてもいい感じで……っていろいろ考えて、mono²になりました。まあ、他にも意味はありますけど、語呂ですね(笑)。