──そうしてできあがったこの曲について、大きく分けてふたつの面から読み解きたいなと思っていて。ひとつは、アレンジとか曲調、サウンドプロデュースの面。もうひとつは、描かれている物語。まずは曲調については、ものすごくポップな曲だし、珍しくストレートにエモーションが出ていて、サウンドプロダクションもリッチで。どういうプロデュース感覚だったの?帰ってきて曲を作るのであれば、もうスカしたり、自分のフィールドに持ち込むのは終わりにしようと。自分の現状は置いておいて、作品は先に進みたいなって思った
Deu PEOPLE 1は「大衆音楽」って名乗ってますから、帰ってきて曲を作るのであれば、もうスカしたり、自分のフィールドに持ち込むのは終わりにしようと。自分の現状は置いておいて、作品は先に進みたいなって思ったんです。だから派手にしたかったですね。ちょっと下品なぐらいに。僕はセンスで生きてるので(笑)、ちょうどいいラインを僕は引くのが得意なんですけど、その先に行きたかったっていうか。自分が背伸びして届かないところまで行って、なんとかバランスをとって成長しようと。ちょっと無理やりだけど、先にスケールを大きく作ってから、自分を大きくするっていう。それもあって、最後のサビが始まってから2分もあるし、曲自体も4分半を越えてて、大盛りなんです。決めていたのは、最後にカノンっていうか、メジャーコードに帰ってくることと、《金字塔》って歌詞を1回しか使わないこと。そこに向けてダイナミクスを作りたかったので、なんなら5分ぐらいの尺を目掛けて作ってました。どんどん足してって、そこからバランスとるっていう。今まで作ってきたサイズ感のものを作ってもしょうがないなと思ったんですよね。それでいて、意外と構成はシンプルではあるんです。ややこしいことはしているんですけど、メロディの種類もそんなに多くないし。そこは個人的に、よくやったなとは思ってます。
──いつものようにセンスよくスタイリングされてるんだけど、着崩す感じがなくって。スタイリングに合わせて、モデルの自分もちゃんとポーズつけなきゃっていう姿勢が見えるよね。それは今までのPEOPLE 1にはなかったアティチュード……とまでは言わないけど、明確にそれを引き受けている。
Deu バランスをとるのは上手なので、特に休む前は、基本的にバランスとる役割をしていた感じで。今回は、作り手としてはわりとそこは無視して、いちばん最初に音を出す人として、クリエイターとして携わった感じですね。
──この曲でやりきれた実感はある?
Deu いや、ここからですね(笑)。こっからですよ、“金字塔”への旅は。正直、別に金字塔を目指していたわけではなかったので。本当の意味では、ここからです。もっと、うまいことやろうと思ってたんですけどね(笑)。
──ボーカリストとしては、今までとは違う性質を持った曲を乗りこなすことに対してはどうでした?
Ito キーがずっと高いし、言葉もたくさん詰まってるので、どこで息を吸えばいいんだ?みたいな感覚もあり、最初は難しかったですね。レコーディングも、なかなか時間をかけてしまって。さっきDeuさんも言っていた通り、PEOPLE 1の中ではかなり長い曲ではあるので、ライブのリハとかでも、歌い終わると疲れるますね(笑)。ライブでどうなるかは不安もあったんですけど、今は楽しみになってきてます。
──長い艶やかなファルセットもあるし。
Ito あそこはだいぶキツかったですね。何回もNGテイクを出して、机に突っ伏しながら、やってました。この曲は、難しい部分も多かったけど、自分の歌をどういうふうにしたいかとか──周りに伝わることも大事だけど、伝わらなかったとしても、自分はこういうことを考えながらやった、って思える部分が、他のどの曲よりもあるんです。自分がこの曲をどう乗りこなせたかと言われると、そういう気持ちかな。いろんな付加要素に助けられたなって思います。1年何ヶ月ぶりに出す新曲で、新たなスタートでもあるし。こういうきっかけが、『ガンダム』でほんとに助かったなって思います。
転がる道は知らないけど、転がっていくボール自体がデカくなった。コントロールは、ある意味しないです、もう
──楽曲で描かれている物語に関しても、これまでとは大きく違う部分があると思っていて。世界観、人生観、人間観は変わらないんだけど、この曲って「自分が立っているこの場所と果て」「死か、最後までやり切るか」みたいなことが、潔く描かれている。その2点のアングルでのストーリー展開は、今まであんまりやってこなかったと思うんです。どちらかというと、その2点の間の「ぐじょぐじょ」みたいなものを歌うじゃない?
Deu 「ぐじょぐじょ」(笑)。いや、そうですね、合ってます。世の中が、そういう潔い物語ばっかりになるのは、よくないと思っているんですよ。「別に、生きててそんなことしなくたっていいんだよ」って思う。まっすぐに成長してうまくいってとか、そういうのもいいですけど、そうじゃないアナザールートが、成功例としてはあんまり世の中に提示されないというか。それがイヤだったので、どちらかというとアナザールートのほうをやっていたんですよね。そうじゃない人が置いてきぼりになっちゃうのはちょっと……僕がそういうことを気にするタイプなので。でも今回は、ある意味、聴いてくれる人を信頼して、これは俺の話だよっていう。「真似しなくていいよ、俺が今こう思ったんだ」って話。やりたい人はやればいいですけど、別にこれが正義だとは思わないし、僕は今こう思っているっていう話で。まあ、実は俺は昔からこういうタイプの人間ではあるんですよね。でもそこは書かなかった。だから結構、個人的な気持ちですよね。
──今までだったら、もしこういう物語を描くなら「これ、ちょっとやけくそ感入ってますよ」みたいな、エクスキューズを入れたと思うんだよ。でも今回はそういうことはしない。その代わり、ちゃんと細心の注意を払って、ポップスとして成立するようにしている。針の穴に糸を通すようなことをやってると俺は思ったんですけど。
Deu 確かに、そういうエクスキューズ、「ただし」みたいなのが一個もないですね。ここまで活動してきて、歌詞を聴いてくれる人もいっぱいいるので。そういう人たちを信頼しているという。
──そこに“金字塔”ってタイトルをつけて、「そういうものなんだよ」という。
Deu 大層な名前を。たまにやるんです、先に大層なタイトルを決めるパターン。“東京”とか“怪獣”とかもそうなんですけど。
──これはいいですよ。
Deu ありがとうございます(笑)。
──もうひとつ聞きたいのは、これは特殊な曲なのか、それとも自分たちのこれからの道を設定する曲なのか。
Deu サウンド面は後者かもしれないですね。これぐらいのスケール感をやる。うちはなんでも屋さんなんで、今後ミニマムなのも出るとは思いますけど、新しい道としてこういうこともやる、っていうのはありますね。でもそれは、最早「PEOPLE 1」にしかわからないような気はしてて。もう我々もわからないし、ある意味、僕にも道は決められない(笑)。この曲だけで言うと、曲作り、もの作りをする人間として、最大火力を上げようっていうバイブスで作ってはいるので、それによってPEOPLE 1に変化が起こる可能性もありますけど、それは意図したものではないのかもしれないです。PEOPLE 1の登場人物の中のひとりのレベルやバイブスが変わったことによって、母体に影響は出るような気はしますけど、僕がどうこうというよりかは、それはPEOPLE 1に決めてもらうっていう。ただ、僕がこれから書く曲は、ミニマムだとしても、ギアは上がりっぱなし。そういう意味では、結構変わるかもしれないです。
──ただ「そっちに行きますよ」ってことではなくって、「それを避けることをやめますよ」っていう感じかな?
Deu うん。あとは、転がる道は知らないんですけど、転がっていくボール自体がデカくなった。コントロールは、ある意味しないです、もう。
このインタビューの続きは5月29日(金)発売のJAPAN7月号に掲載!