sukekiyo@日本青年館

sukekiyo@日本青年館 - pic by 中村 卓pic by 中村 卓
 DIR EN GREYの京が新たに結成したsukekiyo。これまでイベント出演などで、その片鱗を垣間見せてきたが、4月30日に1stアルバム『IMMORTALIS』を発表し、5月1日から東京と京都で2daysずつ行われる初めてのツアー『別れを惜しむフリは貴方の為』で、いよいよ全貌が明らかとなる。4月28日には東京・LIQUIDROOM ebisにおいて、モバイルサイト会員限定で初めての単独公演が行われたものの、アルバムのリリース前であり、限られた人数しか目撃できなかった故に、これからがはじまりと言えるだろう。ここでは東京・日本青年館公演の2日目の模様をレポート。まだ京都公演があるので、詳細は記せないが、それでも彼らが既に孤高の存在感を放っていることはわかってもらえると思う。

 何より、オーディエンスの様子が、類を見ないものだった。ずっと着席のままで、一曲ごとの声援や拍手もない、緊迫した雰囲気。でも、それもそのはず。ライヴ、と呼ぶのが躊躇われるような独特なステージだったのだ。セットもパフォーマンスも、演劇のような構築美、というか。いや、過剰な演出や装飾はないのだ。映像も照明も、効果的でありながらシンプルだったし。でも、一つ一つの要素が突発的ではなく、思考を凝らしているように映った。例えば、京の歌い方にしてもそう。シャウトなどといった激しい側面もあるのだけれど、それもきっちり世界観の中に収めるように、丁寧に聴こえてきたのだ。それによってメロディの美しさが際立ち、演奏が高い天井まで荘厳に響き渡る。なかでも、アルバムの中でもsukekiyoの方向性を濃く感じさせられた“in all weathers”は、夢の奥底まで連れて行かれたような余韻を残した。また京が、まるで舞うように、ステージいっぱいを使って動く姿も、sukekiyoにおける表現という特別感があった。もっと言うと、京も含めてメンバー全員が、喋らず煽らず、オーディエンスではなくsukekiyoそのものと対峙しているように見えたのだ。特に“烏有の空”で、何かを求めるように手を伸ばし、広げ、跪いた京の姿は、異世界の住人のようで引き込まれてしまった。とは言え、台本通りのように無機質なわけではない。5人全員が黒いゴシックな衣装に統一していたものの、ソロプロジェクトではなくバンドなのだと思えるような、各々の血の通った個性が表れていた。ベースのYUCHIはガンガン頭を振るし、ドラムの未架は隙間でクルッとスティックを回したりするし。もちろん音もCDで聴いていた以上に、どの楽器も飛び出たことをやっていると確認出来た。言わば、○のようなバンドではなく、☆のようなバンドというか、歪さがグルーヴを生み出すタイプなのではないだろうか。想像以上にヘヴィネスを増した楽曲も数々あったし、こちらも思わず体を揺らしたくなるのだが、周囲を見渡すと誰もが整然と聴き入っている。オーディエンスも含めて空気作りが成されているように思えた(空気そのものは真逆ではあるが、そこはDIR EN GREYのライヴとの共通点と言えよう)。

 最後、その場所を現実に返すように京は「おやすみ」と言い、ゴトリとマイクを置いてステージを去っていった。はっとしたように初めての拍手が起こる客席。実際に生で見ることによって、よりはっきりしてきたsukekiyo像は、想像以上に異端だった。今は、彼らが探求していく道を、追いかけたい気持ちでいっぱいである。(高橋美穂)
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