みっちみちに埋まったフロアの熱気が高まるほどに、大喜びで高機動ロックンロールを次々にぶっ放してゆく4人。序盤のうちに川上洋平(Vo・G)が「We are [Alexandros]!! 暴れる準備は出来てるかー!」と煽り文句を叩き付けると、白井眞輝(G)と磯部寛之(B・Cho)のそれぞれに高度なフレーズが絡み合って生存への全速逃避行を目論む“Run Away”が転がってゆく。ロックンロール・バンドとしての生々しさ、荒々しさ、そして色気を継承しつつ、人力サウンドでブロステップさえも消化してしまったような現代型ロック・ナンバーの数々が、オーディエンスを沸騰させていた。イントロから視界一杯のクラップを巻き、ストレンジなギター・リフで大歓声を浴び、白井もまた「*#@$×◎ー!! もっと声出してくれー!!」と、もの凄いシャウトでその渇望感を伝える。ほとんどノンストップで8曲をプレイし、ようやく「Yeah!! 楽しいぜー! ライヴってこんなに楽しかったっけっていうぐらい楽しいです。みんなも、明日はないってくらい楽しんでください。うちらも、そのつもりでやるんで」と告げる川上。キャリアの中で数多くの必殺ナンバーを育て上げて来たとはいえ、この前半戦の勢いはとにかく圧巻だった。
しかしここで、熱気を解きほぐすかのようなパフォーマンスで“Travel”へと繋げてゆく川上。ただアップリフティングなナンバーで畳み掛けるのではなく、平熱の情感を伝えるための技ありな一幕であった。「音で出し切っている日は、喋らなくていいなあって思って。音で会話してる感じ?」とステージの充実感を語りつつ、ミドルテンポのアンセム“Forever Young”も織り込んでゆく。ここから再び熱い上昇線を描き始めるというステージ進行が見事だ。パンキッシュな爆走を繰り広げる新曲“Droshky!”をプレイすると、川上は「この前バンド名も変わって、でもまだ5年目。(ストレイテナーの)ホリエさんに、お前らって何なんだろうな、若手でもないし、って言われて。でも始まったばかりだと思ってるんで。(背後の[Alexandros]のロゴを指して)略称とかもね、それは俺じゃなくて、みんなが決めることだから。俺たちは、みんなのバンドだからさ」と語る。そう、武道館を経て、[Alexandros]として再出発したツアーで彼らが見せていたのは、ただバンド本体の演奏がどうのこうのではなく、一人一人のファンを受け止め、受け入れ、それによって更なる成長を遂げるという、懐の深さだった。「まだまだ一緒に作っていきたいと思うんで、よろしくお願いします」という川上の言葉にも、いよいよみんなのバンドとなった[Alexandros]の姿が透かし見えていたはずだ。
終盤戦は“Oblivion”から、特大シンガロングによって完璧なハイライト感に包まれるクライマックスへと向かっていった。アンコールにも意気揚々と応え、来るニュー・シングルのもう1曲“Adventure”でこの日を締め括られるまで、バンドとオーディエンスが、弛まぬコミュニケーションと熱気で作り上げたライヴだった。6月にはニュー・シングル『Adventure/Droshky!』と映像作品『[Alexandros] Live at Budokan 2014』のリリースを控え、今後更に多くの人々を巻き込んでゆくことを確信させる、[Alexandros]の姿があった。(小池宏和)