the band apart×WRONG SCALE@新木場STUDIO COAST

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5月21日リリースの『BONGO e.p.』とTOUR DVD『510x283』を引っ提げたthe band apartの全国ツアー。フルカワユタカ(大阪)/HINTO(広島・福岡)/Tera Melos(高松)/マキシマム ザ ホルモン(名古屋)/BLACK BUCK(金沢)/avengers in sci-fi(札幌)/八十八ヶ所巡礼(仙台)と個性豊かな対バン相手を招いての全国行脚を経て、辿り着いた9本目=セミ・ファイナルの東京公演である。この日のゲストバンドは、なんと2009年2月2日の解散ライヴ以来、5年半ぶりの復活となるWRONG SCALE! 遡れば互いのデビュー前から親交があり、件の解散ライヴにもバンアパが出演するほど深い縁で結ばれた両者。その5年ぶりの競演を間近に控え、開演前の新木場STUDIO COASTは2階席までびっしりのオーディエンスで埋め尽くされている。そして開演時刻の18時半ジャスト、割れんばかりの歓声に迎えられて先攻・WRONG SCALEが登場!

the band apart×WRONG SCALE@新木場STUDIO COAST
5年半ぶりの復活ライヴ、その記念すべき1曲目を飾ったのは“trace of grief”。軽やかなギター・カッティングとディスコ・ビートが勢いよく放たれ、満場のフロアは瞬く間にハイジャンプの波と化していく。続く“calling”では、彼らの代名詞と言える、野田剛史(B・Vo)/菊川正一(G・Vo)/大西俊也(G・Vo)の3人による流れるようなヴォーカル・リレーが炸裂。エモーショナルな歌と音が堰を切ったように溢れ出し、会場全体に満ちた祝祭感を輝かしく彩っていく。久しぶりのステージを楽しみ尽くすように、とてもリラックスした様子で楽器を奏でる4人の姿も眩しい。その後のファーストMCでは、今回のライヴ出演に関してバンアパの原昌和(B)に熱心に口説き落されたエピソードを明かす野田。「(ドラムの楠は)マジで5年半ぶりにドラム叩いてますからね!」と解散前と変わらぬ軽妙かつ皮肉交じりのトークを繰り広げる姿もまた、感慨深いというものか。

the band apart×WRONG SCALE@新木場STUDIO COAST
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その後も感涙必至のキラー・チューン連打でフロアを躍動させていく4人。菊川&大西のギター・コンビによる激しく上体を揺さぶりながらの全力プレイが見られた“Always want to be loved”、圧倒的な疾走感で歓喜の頂点へと上り詰めた“melt down”、不穏なメロディとともに迸る激情を燃やし尽くした“G.F.S”、一糸乱れぬアンサンブルが冴えわたった“Things as they are - date 3.12 -”……そのどれもが、生まれたての瑞々しさにも似た眩しすぎるエネルギーとともにフロアに届けられていく。5年半のブランクもあって、時折つんのめった暴走やミスの見られる演奏はお世辞にも上手いとは言えない。しかし、この一点の曇りもないサウンドこそWRONG SCALEがWRONG SCALEである所以だし、それが今まさに目の前で輝きを放っている事実が何よりも嬉しいと思える名演の連続である。ラストMCでは彼らにとって初めてのメンバー紹介も行われ(照れ臭さもあって?、いつも以上に早口にメンバーの名前を告げる野田の姿が個人的にツボでした)、“p.s moved out”を万感の思いで撃ち放って大団円。野田曰く、今後の活動予定はなく、何らかのイベントや対バンに誘われる形でしか活動しないだろうとの事。またしばらく彼らのライヴを観られなくなるのは寂しい限りだが、そんなマイペースなスタンスも含めて、「らしさ」が全開となった清々しい復活劇だった。

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そしていよいよthe band apartの登場。「続いては東京都千代田区永田町、安倍晋三さんからのリクエストで、the band apartの“誰も知らないカーニバル”です」という“ag FM”NEW ver.のSEを経て、最新EP収録曲の“誰も知らないカーニバル”でライヴをスタートさせる。曲名よろしく、祭りの賑わいを彷彿とさせる享楽的で躍動的なアンサンブル。荒井岳史(Vo・G)の隣には、長きにわたってバンアパのレコーディング・エンジニアを手がけ、本ツアーではサポート・パーカッションを務める速水直樹氏の姿も見られ、彼が叩き出すボンゴのリズムがトライバルな狂騒感を煽っていく。速水氏がステージ袖に引っ込んでの“higher”からは、一転して青く研ぎ澄まされた音像を響かせていく4人。そのまま“photograph”と往年の必殺チューンで繋げると、流星のごとき煌びやかなサウンドが飛び交いCOASTを壮大な宇宙空間へと導いてしまった。

ひと息ついて「今日はWRONG SCALE本当にどうもありがとう!」と荒井が挨拶。熱い拍手に沸くオーディエンスを前にして、「新木場って遠いよね。なんか磯くせぇし……」という原による流れぶった切りのトークが展開されるあたりは、いつものバンアパである。その後は最新EPからの“The Base”、昨年4月にリリースされた最新アルバム『街の14景』からの“ノード”と繋げて、音という音が濁流のようにうねりまくるカオティックなサウンドを届けていく4人。『街の14景』のリリース・ツアーでも思ったが、メンバーそれぞれの個性が今まで以上に露わになった最近のバンアパの曲は、その攻撃性も、中毒性も、一筋縄ではいかない変態っぷりもハンパないことになっている。“クレメンタイン”“Flower Tone”の連打では、変則的なコード進行と転調をポップに響かせて、妖しい色香と快楽に満ちた摩訶不思議なバンアパワールドの只中へ。鮮やかに発光するライティングの妙も相まって、COASTをさらなる熱狂の高みへと誘っていった。

ヘヴィ・ロックやポスト・ロックにジャズ、フュージョン、ファンクなど多彩なテイストを織り込んで、聴き手の予想を遥かに超えたドラスティックな展開を見せるバンアパ・サウンド。その本領は『BONGO e.p.』でもいかんなく発揮されており、“来世BOX”“環状の赤”の連打では、再びサポート・パーカッションの速水氏を迎えた5人編成でスローテンポながら自由な遊び心とアイデアに満ちたサウンドを披露。実は『BONGO e.p.』にはボンゴの音が使われていないらしいが、それでも作品タイトルが違和感なく受け入れられるのは、特定のジャンルに捉われないサウンドを追求した結果、すべての音楽性に通じる度量の広さを持ち合わせるに至ったバンアパ・サウンドの成せる技といったところか。続く“Taipei”も5人編成で奏で、爽快なドライブ感と野性的な高揚感がせめぎ合う未曾有の熱狂空間を作り上げた彼ら。この一連の流れは、the band apartが紡ぎ出す音楽の懐の深さと可能性の大きさを改めて印象づけるセクションになっていた。

the band apart×WRONG SCALE@新木場STUDIO COAST
「今日は弁当がすごい美味しくってね……」と唐突に述べる原と、「ロンスケといい(オーディエンスの)みんなといい、時が経っても変わらずにいてくれてありがとうございます」と生真面目に述べる荒井。その対照的なトークでフロアを沸かせ放題沸かせたところで、“Rays of Gravity”からはクライマックスへ向けて猛ダッシュ。川崎亘一(G)のスペイシーなアルペジオと原のベキベキとしたベース音がデッドヒートを繰り広げた“I love you Wasted Junks & Greens”、イントロから勇猛果敢なオイコールが響きわたった“free fall”、木暮栄一(Dr)の清冽かつ攻撃性抜群のドラミングが炸裂した“coral reef”とノンストップで畳み掛けると、フロアの熱気はどんどんヒートアップ。改めてWRONG SCALEとオーディエンスへの感謝を伝える荒井のMCを経て、本編ラストはバンアパきってのダンス・ナンバー“Eric.W”を投下! ひときわ自由度を増した原のダンス・パフォーマンスも冴えわたる、目くるめくダンス空間を生み出して4人はステージを去った。

the band apart×WRONG SCALE@新木場STUDIO COAST
アンコールでは速水氏を加えた5人編成で“夜の向こうへ”を煌びやかに届け、巨大なミラーボールの閃光が輝く場内を今一度ディスコティックに染め上げて大団円。最後はWRONG SCALEをステージに招いての記念撮影を行い、原の音頭による盛大な一本締めを以って2時間半に及ぶイベントは幕となった。自身のレコ発ツアーでありながら、その意味合いも霞むほどにWRONG SCALEへの惜しみない賛辞と祝福が全編にわたって満ち溢れた一夜。the band apartらしい、愛に溢れたイベントだった。(齋藤美穂)

■セットリスト

<WRONG SCALE>
01.trace of grief
02.calling
03.The day rain changes to the rainbow
04.End of pain
05.Always want to be loved
06.melt down
07.G.F.S
08.Things as they are - date 3.12 -
09.p.s moved out

<the band apart>
01.誰も知らないカーニバル
02.higher
03.photograph
04.The Base
05.ノード
06.クレメンタイン
07.Flower Tone
08.来世BOX
09.環状の赤
10.Taipei
11.Rays of Gravity
12.I love you Wasted Junks & Greens
13.free fall
14.coral reef
15.Eric.W

(emcore)

16.夜の向こうへ
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