キュウソネコカミ@LIQUIDROOM ebisu

キュウソネコカミ@LIQUIDROOM ebisu - all pics by Taku Fujiiall pics by Taku Fujii
キュウソネコカミ初の全国ワンマンツアー「DMCC - REAL ONEMAN TOUR -~DOSA MAWARI CHU CHU~」の東京公演が恵比寿LIQUIDROOMで行われた。6月18日に発売された2nd ミニアルバム『チェンジ ザ ワールド』を引っ提げて全国11ヶ所を廻る今ツアーは、全箇所ソールドアウト! ツアー中盤ということでセットリスト掲載は割愛し、ネタバレも一部楽曲に留めるので安心して読んでいただきたい。とはいえ、彼らが牽引する勢いに関しては全く留まることを知らないようだ。約2時間に渡る公演を、エンジン全開フル回転状態のままノンストップで走り抜けていったキュウソネコカミの5人であったが、そのテンションに一切乗り遅れることなく付いていくオーディエンスの熱量と体力にも同様に驚かされた。この日の会場の光景を一言で表すのなら、「全力」に尽きる。演者も全力なら、聴き手も全力だ。日頃なかなか発散できない毒気付いた感情は、全て俺たちが受け止めてやるからここで吐き切れ!ともいうべく5人の頼もしさを終始感じられたライヴアクトだった。

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ヨコタ シンノスケ(Key・Vo)が「6月18日に出したミニアルバム、聴いてくれましたか? それを聴いてなきゃお話にならないようなセットリストですので…」と呼び掛けると、ヤマサキ セイヤ(Vo・G)が「いや! お話にしていこうじゃないか! 分からなくても適当にノれるような曲ばっかり作っていこうやないかい!」と、アルバムツアーの概念を覆すような豪快な発言で会場を沸かす。そんな本公演は『チェンジ ザ ワールド』からの楽曲はもちろんのこと、“DQNなりたい、40代で死にたい”“サブカル女子”“ファントムヴァイブレーション”に代表されるキュウソネコカミ流ディスに溢れたキラーチューンをしっかり織り込みながら、メジャーデビュー前から一切ブレていないライヴスタイルを貫いていく。

キュウソネコカミ@LIQUIDROOM ebisu
キュウソネコカミ@LIQUIDROOM ebisu
晴れてメジャーデビューを果たしながらも《ファッションミュージック鳴らせないと生き残れない》《俺が何か叫んだ所でキャッチーじゃないと誰も聴かない》(“ビビった”)と歌い続ける。ネガティブに捉えられるようなバンドの本音に限りなく近い歌詞を、ポジティブでハイテンションな高速サウンドに乗せて観客を踊らせる。そういった、言わば冷静と情熱という相反する熱を音楽の中に共存させるのが本当に巧いのがキュウソネコカミだ。誰しもが恐らく一度は思うけれど、体裁やらを気にしてなかなか表立って言えないようなことはあるはずだ。それらをヤマサキがストレートな言葉にして激流の如く捲し立て、ソゴウ タイスケ(Dr)とカワクボ タクロウ(B)が築く自由自在にうねるベースラインの上を泳ぎさらに勢いをつける。そこに乗るユーモアと煌めきを持ったヨコタのシンセサイザーのフレーズと、キレのあるオカザワ カズマ(G)のギターフレーズが、聴く人の中にある遊び心やダンス心を刺激する。そんな音の洪水の中で日頃抱くフラストレーションをここぞとばかりに踊って叫んで発散させる会場の爆発力は、観ているだけでも実に爽快なものだった。

キュウソネコカミ@LIQUIDROOM ebisu
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そして、そういった彼らの音楽性をパフォーマンス化したのが、【社会のしがらみ】という名のもとに集められた怒りエピソード(以前はヤマサキが抱く社会への怒りが書かれていたが、現在は公演数増大に伴うネタ切れということで各地で一般募集をしていた)が書かれた段ボール箱の上に向かってヤマサキがダイブし、箱を潰すというものだ。彼らの十八番とも言えるそのパフォーマンスをするにあたり、段ボールをフロアめがけて投げた途端にファンの手で引きちぎられてしまうという問題への注意喚起として「そういうことをすると、古参のファンに叩かれますよ! キュウソネコカミのライヴの理念は、古参のファンも新規のファンも仲良くもダブルピースで!」と話すヤマサキ。そんなヤマサキの声が響くフロアの壁には【楽しくても おもいやりとマナーを 忘れるな】の文字が書かれたフラッグが掲げてあった。このフラッグの意味説明を踏まえつつ“DQNなりたい、40代で死にたい”を演奏する際に、ヤマサキがラストサビ時に起こるウォール・オブ・デスの危険性を話し、「私はそんなことをやりに来たんじゃない!」という人のために考案されたというハンド・オブ・デス(曲のキメに合わせて頭上で手を合わせたままその場で踊るというノリ方)を伝授。ヨコタがMCの度に、「大丈夫? 周りに怪我してる人は居ない?」と呼び掛けるなど、個々人の楽しみ方を尊重しながら、会場に居る全員が漏れなく楽しめる方法を模索していく彼らの真摯な姿勢が顕著に表れていた。

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そんな彼らが“KMDT25”のなかで「広がるたびに外側の人間が圧迫され、めちゃめちゃ嫌な気分になる従来のサークルには限界を感じている(ヤマサキ)」と言って提示した、曲中の盆踊りのリズムに乗ってバウムクーヘン型にサークルを作っていくという発案には度肝を抜かれた。前々から彼らのライヴを見るたびに、よくぞこんなにも観客を楽しませるライヴをするもんだと思ってはいたが、まさか夏の恵比寿で「ドンドンドン、ドドンがドン!」と歌いながらぐるぐる盆踊りをするTシャツ姿の大集団を見ることになるとは思ってもみなかった。これは今年だけでなくとも、夏を代表するキュウソネコカミの新たなキラーチューンの誕生だと思わず手を叩いた。それからも観客を巻き込んでの大掛かりなパフォーマンスは続き、マンガ『ONE PIECE』のルフィに扮したヤマサキがフロアに敷き詰められた人の上を歩いたり、恒例のカヴァーコーナ―ではKEYTALKの“MABOROSHI SUMMER”をカヴァーしたりと、ロックバンドのライヴパフォーマンス概念を大股で飛び越えていった。 

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日常生活の鬱屈した感情を吐き出せず潰れてしまいそうなとき、彼らの音楽の代名詞ともいえる毒気を持った歌詞とハイスピードなメロディーの波に乗ると、最後には心の毒素が全て抜けきったかのようにへとへとになってしまう。しかし、心の中は明日を生きるためのエネルギーで満ちているはずだ。それはまさに、彼らのバンド名の由来にもなっている、とあるゲームに登場する【キューソネコカミ】というアイテムそのものだ。ピンチ状態になると、攻撃力・回復力が共に最大になる。日常で抱くストレスを言語化して彼らが代わりに吐き出してくれるからこそ、聴く者はそういった新たなエネルギーを蓄えることができるのだろう。今ツアーも、残るは東名阪全4ヶ所のみ。兵庫県西宮市出身の5人のネズミが、日本の音楽シーンという大きな猫に立派な歯形を残していく姿を、これからも応援していきたい。(峯岸利恵)
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