J-WAVEがレコメンドする注目のニューアーティストたちのショーケースライブ「81 Beginnings GIG Vol.2」にFUJIBASEが出演した。この日の東京は台風に見舞われたが、夕方には雨も少しずつ収まり、会場には感度の高い音楽ファンが集結。「まもなくFUJIBASEのライブが始まります。もう少し前にお詰めください。あと、もう少しだけ前へ。みなさま、準備はよろしいでしょうか」というロボットボイス、壮大にしてミステリアスなSEとともにFUJIBASEとバンドメンバーが登場。
「台風の中、来てくれてありがとう。東京でライブをやるのは半年以上ぶりかな。新EPの曲も交ぜてやっていくので。最後までよろしくお願いします」という言葉の通り、このあとはEP『ム』と既存の楽曲を織り交ぜたステージが続いた。
続く“talking to myself”はインディーポップの手触りを感じさせるミディアムチューン。ストイックにルート音を刻むベース、抑制を効かせたドラム、空間系のエフェクターをかけたギターが溶け合い、日本語と英語を交えた歌がゆっくりと広がっていく。歌詞のテーマは孤独。誰も自分の音楽や声を聴いていない、ただ自分に語りかけているだけなんだという内省的なリリックを観客の一人ひとりに手渡すように歌うFUJIBASE。延々と続く自分自身とのダイアローグの末にたどり着いた真摯な表現を目の当たりにして、強く心を揺さぶられてしまった。
ライブの最初のピークを生み出したのは“NEON TOKYO”だった。昨年4月にリリースされたこの曲は、FUJIBASEの名前が早耳の音楽ファンに広がるきっかけとなった楽曲。煌びやかなエレクトロ、強靭なロックミュージックのテイストがひとつになったサウンドは、リリースから1年を経てさらにビルドアップされ、オーディエンスの強い反応を引き出していた。
《暗がりの中見えない世界ずっと探した気がした》というサビのフレーズがもたらすインパクトも心に残った。常に他者からの評価に晒され、強いストレスを抱えながら生きざるを得ないすべての人たちに向かって、“NEON TOKYO”という架空の場所を提供し、ポジティブな逃避へと導きたい──。この楽曲に込められた願いはやはり、ライブという場所でこそ実現するのだ。
楽曲をシームレスにつなぐ構成からも、彼の明確な意図が感じられた。この日は45分のセットで12曲を演奏。MCはほとんどなく、楽曲を連ねていくステージからは、とにかく曲を浴びまくってほしいという意思を感じ取ることができた。
そして、色彩豊かなシンセのリフと軽快なギターカッティング、ポップに振り切ったメロディラインが響き合う“Game Over”を挟み、アンセムのひとつである“Freedom”へ。シーケンスでコーラスを流し、「このメロディ、サビで出てくるので。踊るだけじゃなくて、一緒に歌ってください」と語りかけるFUJIBASE。架空の民族音楽と形容したくなるエキゾチックな音像、トライバルハウスの潮流を感じさせるビートによってフロアの高揚は一気にピークへと達した。歌詞に描かれているのは、自由という名の束縛、そして自分たちはどこにだって行けるというメッセージだ。それを象徴しているのが《Let’s keep dancing like we might just get there》というライン。あの場所にたどり着けるように、踊り続けよう──“Freedom”がもたらす圧倒的な解放感は、「ここではないどこかへ」という切実な願いによって増幅されている。FUJIBASEの生の声を浴びながら、そのことを改めて体感することができた。
「最後に、自分が今いちばん歌いたい曲をみんなに歌います」という言葉とともに届けられたのは“yosuga”。ドラマ『嘘が嘘で嘘は嘘だ』の主題歌としても話題を集めたバラードナンバーだ。心の拠り所を守るためにやむを得ず使ってしまう嘘をテーマにした歌詞を、壮大なスケール感と繊細な表現を重ねながら響かせるFUJIBASE。人間の本質を射抜くようなソングライティング、美しさと激しさを内包したサウンド、深遠なモチーフを的確に描き出すボーカル力を含め、“yosuga”は間違いなく、彼の新たな到達点と言える楽曲だと思う。
●セットリスト
FUJIBASE
「81 Beginnings GIG Vol.2」
2026.6.27 GRIT at Shibuya
01. Disposable
02. smoke and mirrors
03. Wither
04. talking to myself
05. Star
06. NEON TOKYO
07. evaporation
08. COPY and PASTE
09. Cinderella
10. Game Over
11. Freedom
12. yosuga
●リリース情報
1st EP『ム』
01. Disposable
02. Wither
03. Star
04. Cinderella
05. yosuga
06. evaporation
提供:kand production Inc.
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部