【特集】ヘヴィ&ダンサブルなサウンド、生々しい感情とファンタジックな世界観を行き来する歌。1st EP『ム』を携えた東京公演でFUJIBASEが見せた、アーティストとしての本質と新たな進化

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叙情性とエキゾチズムを放つメロディ、ヘヴィロック経由のサウンドを先鋭的なダンスミュージックと融合させた音像、幅広い音域と豊かな表現力を併せ持ったボーカル、そして、身体と感情を同時に昂らせるステージング。FUJIBASEとは何者で、どんな音楽をやろうとしているのか? この日のライブで彼は、その答えを明確に示してみせた。

J-WAVEがレコメンドする注目のニューアーティストたちのショーケースライブ「81 Beginnings GIG Vol.2」にFUJIBASEが出演した。この日の東京は台風に見舞われたが、夕方には雨も少しずつ収まり、会場には感度の高い音楽ファンが集結。「まもなくFUJIBASEのライブが始まります。もう少し前にお詰めください。あと、もう少しだけ前へ。みなさま、準備はよろしいでしょうか」というロボットボイス、壮大にしてミステリアスなSEとともにFUJIBASEとバンドメンバーが登場。

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しなやかな四つ打ちに導かれたのは“Disposable”。リリースされたばかりの1st EP『ム』の1曲目に収められたダンサブルなナンバーだ。囁くような繊細な歌声、爆発的なシャウトを行き来するボーカリゼーションがとにかく強烈。長身のFUJIBASEがステージ前方のモニターに上がり、「東京、よろしく!」と煽りながら観客をグッと引き寄せていく。さらに1stシングル“smoke and mirrors”へ。洗練されたコード感と多彩なビートメイキング、憂いに満ちたメロディラインが重なるこの曲は、まさにFUJIBASEの原点。生バンドを率いたライブでは楽曲全体のダイナミズムが増幅され、ロックミュージックとしての機能が高められていた。この曲の歌詞の主人公は、恋愛依存の果てに怒りや復讐心を抱いてしまう女性。狂気にも似た感情を描いたリリックと快楽的なサウンドのコントラストも鮮烈だ。

「台風の中、来てくれてありがとう。東京でライブをやるのは半年以上ぶりかな。新EPの曲も交ぜてやっていくので。最後までよろしくお願いします」という言葉の通り、このあとはEP『ム』と既存の楽曲を織り交ぜたステージが続いた。

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まずはEP収録曲“Wither”。淡々としたメロディから始まり、曲が進むにつれて徐々にテンションを上げていくこの曲は、FUJIBASEのボーカル表現の巧みさをじっくりと体感できるナンバーだ。サウンドの軸になっているのは、彼のルーツのひとつである90'sのオルタナティブロック。ビートを合わせる場面ではメンバー同士が視線を交わし、声をかけ合う。FUJIBASEはソロプロジェクトであり、作詞・作曲から編曲、トラックメイクまでを自身で手がけているのだが、ライブにおいてはバンドとしての生々しさが前面に押し出されていた。

続く“talking to myself”はインディーポップの手触りを感じさせるミディアムチューン。ストイックにルート音を刻むベース、抑制を効かせたドラム、空間系のエフェクターをかけたギターが溶け合い、日本語と英語を交えた歌がゆっくりと広がっていく。歌詞のテーマは孤独。誰も自分の音楽や声を聴いていない、ただ自分に語りかけているだけなんだという内省的なリリックを観客の一人ひとりに手渡すように歌うFUJIBASE。延々と続く自分自身とのダイアローグの末にたどり着いた真摯な表現を目の当たりにして、強く心を揺さぶられてしまった。

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“Star”も寂寥感を帯びたエモーションを映し出す楽曲。音数を抑え、シンプルに研ぎ澄まされたアレンジとともに描かれるのは、寂しさ、切なさを色濃く滲ませるメロディラインだ。歌詞の中で浮かび上がってくるのは、月明かりに照らし出される、君の手を引いて歩く僕の姿。ふたりの関係性は明示されていないのだが、だからこそこの曲はリスナーの想像力を刺激し、まるで映画のワンシーンのような映像を呼び起こす。ライブにおける没入感も抜群。観客はステージを凝視し、FUJIBASEが紡ぎ出す言葉とメロディを全身で受け取っていた。

ライブの最初のピークを生み出したのは“NEON TOKYO”だった。昨年4月にリリースされたこの曲は、FUJIBASEの名前が早耳の音楽ファンに広がるきっかけとなった楽曲。煌びやかなエレクトロ、強靭なロックミュージックのテイストがひとつになったサウンドは、リリースから1年を経てさらにビルドアップされ、オーディエンスの強い反応を引き出していた。

《暗がりの中見えない世界ずっと探した気がした》というサビのフレーズがもたらすインパクトも心に残った。常に他者からの評価に晒され、強いストレスを抱えながら生きざるを得ないすべての人たちに向かって、“NEON TOKYO”という架空の場所を提供し、ポジティブな逃避へと導きたい──。この楽曲に込められた願いはやはり、ライブという場所でこそ実現するのだ。

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「このまま最後まで飛ばしていこうと思います。いける人、どれくらいいますか?!」という煽りに導かれたのは、EP『ム』の中でも最も強い高揚感をたたえた“evaporation”だった。トライバルな雰囲気を感じさせるビートが観客の本能を呼び覚まし、客席はダンスフロアへと変貌。鋭利なギターフレーズとエレクトロニカ系のビートが互いを高め合う演奏も最高だ。続く“COPY and PASTE”ではダークな雰囲気をまとったトラックの中で怒りや憤りを感じさせるボーカルが炸裂。シャウトを交えた歌声に煽られるようにハンドクラップが自然発生し、会場全体のテンションが一気に上がっていく。

楽曲をシームレスにつなぐ構成からも、彼の明確な意図が感じられた。この日は45分のセットで12曲を演奏。MCはほとんどなく、楽曲を連ねていくステージからは、とにかく曲を浴びまくってほしいという意思を感じ取ることができた。

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スカコア的なギターの裏打ち、しなやかなヘヴィネスと称すべきリズムセクションが共存する“Cinderella”からライブは後半へ。パーカッシブに打ち鳴らされるドラム、ずっしりとした手触りのベースが観客の身体をさらに揺らしまくった。

そして、色彩豊かなシンセのリフと軽快なギターカッティング、ポップに振り切ったメロディラインが響き合う“Game Over”を挟み、アンセムのひとつである“Freedom”へ。シーケンスでコーラスを流し、「このメロディ、サビで出てくるので。踊るだけじゃなくて、一緒に歌ってください」と語りかけるFUJIBASE。架空の民族音楽と形容したくなるエキゾチックな音像、トライバルハウスの潮流を感じさせるビートによってフロアの高揚は一気にピークへと達した。歌詞に描かれているのは、自由という名の束縛、そして自分たちはどこにだって行けるというメッセージだ。それを象徴しているのが《Let’s keep dancing like we might just get there》というライン。あの場所にたどり着けるように、踊り続けよう──“Freedom”がもたらす圧倒的な解放感は、「ここではないどこかへ」という切実な願いによって増幅されている。FUJIBASEの生の声を浴びながら、そのことを改めて体感することができた。

「最後に、自分が今いちばん歌いたい曲をみんなに歌います」という言葉とともに届けられたのは“yosuga”。ドラマ『嘘が嘘で嘘は嘘だ』の主題歌としても話題を集めたバラードナンバーだ。心の拠り所を守るためにやむを得ず使ってしまう嘘をテーマにした歌詞を、壮大なスケール感と繊細な表現を重ねながら響かせるFUJIBASE。人間の本質を射抜くようなソングライティング、美しさと激しさを内包したサウンド、深遠なモチーフを的確に描き出すボーカル力を含め、“yosuga”は間違いなく、彼の新たな到達点と言える楽曲だと思う。

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大きな歓声と拍手が鳴り響く中、ステージをあとにしたFUJIBASE。筆者が彼のライブを観たのはちょうど1年ぶりだったのだが、そのパフォーマンスは驚くほど向上していた。ヘヴィロック、オルタナ、エレクトロ、EDMなどを自在に取り込んだ音楽性、リアルな感情とファンタジックな想像力を重ね合わせた歌詞、繊細なファルセットと爆発的なシャウトを行き来するボーカルなど、自らの音楽スタイルを余すことなく体現したFUJIBASEはここから、さらなる飛躍を果たすことになるはず。アーティストとしての進化の過程をたくさんの音楽ファンと一緒に体験したい。この日のライブを観て、その思いはさらに強くなった。(森朋之)


●セットリスト
FUJIBASE
「81 Beginnings GIG Vol.2」
2026.6.27  GRIT at Shibuya

01. Disposable
02. smoke and mirrors
03. Wither
04. talking to myself
05. Star
06. NEON TOKYO
07. evaporation
08. COPY and PASTE
09. Cinderella
10. Game Over
11. Freedom
12. yosuga

●リリース情報

1st EP『ム』

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