【JAPAN最新号】富士の名を背負い、時代の痛覚を刻む23歳の異才・FUJIBASE

【JAPAN最新号】富士の名を背負い、時代の痛覚を刻む23歳の異才・FUJIBASE
異才、という言葉がある。FUJIBASEの音を聴いていると、その言葉がただの賛辞ではなく、もっと切実な響きを帯びて立ち上がってくる。

2003年6月9日生まれの23歳。作詞曲・編曲・歌唱・トラックメイク・ドラム演奏までを自ら担うソロアーティスト・FUJIBASE。その音楽は、ジャンルを越境するというより、既存の枠に収まることを拒む異物として耳に飛び込んでくる。ドラマーとしてのセンスが光るビート、ロックのシグネチャーを宿したメロディ、映画のようなサウンドスケープ。それらが偏執的な編集感覚によって圧縮され、異常な密度で鳴っている。ポップでありながら不穏で、ノれるのに落ち着かない。質感そのものが感情を運んでくる音だ。

6月19日にリリースされた1st EP『ム』は、その異物感が最も鋭く結晶した作品である。“Disposable”では金属を引っ掻くような音が神経を逆撫でし、《Disposable(訳:使い捨てさ)》と歌う声が社会に対する不信感をむき出しにする。“Wither”では硬質なピアノリフの中に立ち上がる枯れていく花のイメージが声を押し殺して生きる人々の姿と重なり、“evaporation”では乾いたクラップに急き立てられながら、愛に対する諦念にも似た祈りが渦巻く。

EPを貫くのは、社会が見ないふりをしてきた痛みを知らせるセンサーであり、鈍麻していく時代に抗うための痛覚だ。英語詞であれ日本語詞であれ、FUJIBASEの言葉は冷め切った怒りの礫のように飛んでくる。しかしその奥には、愛されたい、救われたい、居場所がほしいという、あまりにも儚い願いがある。『ム』というタイトルが意味するという「無」と「夢」──何も信じられないような「無」と、それでも手放せない「夢」。そのあわいでFUJIBASEの音は響いている。異様で、異質で、しかしどこまでもプリミティブなロックとして。


日本一高い山である「富士」と基礎=「ベース」をその名に掲げながら、FUJIBASEは鈍り切った時代の痛覚を蘇らせる。そして、痛みを感じながら夢を見るというロックの壮大な礎を2026年の今に打ち立てるのだ。

文=畑雄介
(『ROCKIN'ON JAPAN』2026年8月号より抜粋)


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