この日も、開演前からステージ前の円卓は華やかな空気に包まれ、出演アーティストやゲストの面々が、我々一般オーディエンスと同じくショーの始まりを楽しみにしているのがわかる。まず前夜と同じくステージにミセスの3人が登壇。大森元貴(Vo・G)が「昨日は最高の日になりました。めちゃくちゃ楽しかった」と、いまだ興奮冷めやらぬ様子で客席に語りかける。さらに「アーティスト、表現者というのは、孤独なものだと思います」と自身の想いを語り、「でも、今日くらいはどうか闘争心や競争心ではなく、互いのカルチャーに触れて」、純粋に音楽を楽しみたいという『CEREMONY』のテーマともいえる本音を口にした。そして「すべてのアーティストに、音楽に、敬意を! それでは第3回『CEREMONY』、開幕いたします!」という開幕宣言。ちなみに、大森がこの日を「第2回の2日目」ではなく、シンプルに「第3回」と告げたのには明確な意思が感じ取れた。なぜかといえば、登場するアーティストやプレゼンターによって、その場に生まれるエネルギーやパワーの質はまるで違うものになっていたからだ。ゆえに、昨日の続きの今日ではなく、独立した「第3回」なのだ(しかしもちろんそこには、揺るぎなく通底するテーマがある)。
ショーのMCを務めるのは「第2回」に引き続き、サッシャと中条あやみ。そのふたりに呼び込まれる形で最初のプレゼンターが登壇する。この日トップのプレゼンターは、なんとMrs. GREEN APPLEから藤澤涼架(Key)。「みなさん素敵なお召し物でお越しいただき、ありがとうございます」と、まずは来場者全員に謝辞を述べると、「集まってくれたアーティストのみなさんが巻き起こす空気感は毎回全然違って、毎回『音楽やっててよかったな』って思える一日になります」。そして「みなさんも、初めて聴くサウンドだったり、音楽スタイルもあると思うけれど、『あれ? 自然とダンスミュージックで踊っちゃった』とか、『ロックサウンドに手を挙げちゃったよ!』とか、そういう新しい自分に出会うかもしれません。どうしていいかわからなくなったら、ステージの前にいる僕を見て。誰よりも今日一日を楽しむつもりで来てるから、きっとめちゃくちゃ踊ってると思う(笑)」と笑いを誘い、「みなさんもぜひ、リラックスして思う存分楽しんでください」とオーディエンスの心を温めた。
そんな空気の中で登場した最初のアーティストは、上白石萌音。この盛大なショーのトップバッターとして登場することは、少なからずプレッシャーもあったはず。けれど、彼女は“なんでもないや”のアカペラの歌い出しを堂々と、そしてとても美しく響き渡らせた。大きな拍手が自然と沸き起こる。やわらかなバンドサウンドが寄り添うように鳴り響き、歌声はさらに深く、やさしく。“懐かしい未来”では、「一緒に歌ってください」と促し、シンガロングは次第に大きくなっていく。ラストは大森元貴のソロ曲である“メメント・モリ”のカバー。上白石は、同曲のリリックビデオから派生して生まれた大森作の絵本の朗読劇に出演したことを振り返り、「私にとって『メメント・モリ』との出会いは宝物。感謝と敬意を込めて歌います」と、想いのこもる歌唱を披露。ミセスの3人も含めスタンディングオベーションが巻き起こる中、笑顔でステージをあとにした。
続いては、この日の出演者であるTWSからJIHOONがプレゼンターとして登壇し、TWSにとっての「音楽とは」という信念を語る。「僕たちにとって音楽は単なる歌ではありません。音楽を通じて、私たちは同じ感情を分かち合い、同じ瞬間を共にすることができます。それこそが音楽の持ついちばん大きな力だと信じています」と語り、「これからも音楽を通じて、言葉や文化の壁を超えて、思いを届けるアーティストになります」と、その決意を熱く口にした。そして登場したのはネクライトーキー。過去にも「Mrs. TAIBAN LIVE 2023」でミセスと対バンをしたことがあり、音楽性こそ違えども互いに刺激を与え合う間柄だといえる。この日、いきなり速いカウントで始まった“北上のススメ”から一気に会場中の心を掴んでいく。さらに、独特のアタック感のあるサウンドが耳を惹く“オシャレ大作戦”の絶妙に捻くれたポップセンスで会場を沸かせると、最後は「まだリリースされてない曲」と紹介しての“余計なこと”。もっさ(Vo・G)のエモーショナルの極みのような歌声に会場中が聴き入った。短いながらに、しっかりとバンドの個性を刻みつけたパフォーマンス。素晴らしかった。
この日のプレゼンター陣も豪華。続いては女子レスリングでオリンピック3連覇を成し遂げた吉田沙保里の登壇。「3歳から引退するまで33年間、レスリング選手として歩んできました。振り返れば、金メダルを取るまでには、たくさんの音楽に勇気をもらいました」と、人生のすぐそばに常に音楽があったことを言葉にし、「引退した今は、自己流でギターを弾いて歌ったりしています」とも語った。レジェンドにとっても「音楽」はなくてはならないもの。その想いにはこの会場にいる人すべてが共感を寄せたことだろう。続いて登場したのが、シンガーソングライターのサカグチアミ。バンドメンバーとともに“好-じょし-”でライブスタート。その歌声とサウンドにすぐさま会場中が引き込まれていく。サカグチは、以前は坂口有望という漢字表記で活動していた。そして「その名前を昨年、新たなフェーズに進むためにカタカナに変えた──その覚悟と決意を持って作った曲を」と “名前”を歌う。その深く切実な想いのこもる歌声にはさらに引き込まれた。そもそも14歳でギター弾き語りで活動を始め、ミセスのカバーをSNSに投稿していたのを大森が見つけたというのが両者の関係性の始まり。2018年にはMrs. GREEN APPLEの“Log(feat.坂口有望)”で共演を果たした。その歴史を振り返るような語りのあと、「まだ音源にはなっていない新曲を」と、最後に“裸”をアコギの弾き語りで披露。その歌声に最前で観ていたアーティストたちも大きな拍手を送った。
続いてのプレゼンターは先ほどライブを終えたばかりの上白石萌音。俳優、そしてシンガーとして活躍する上白石は、「今日はジャンルにとらわれずに讃えあう、この空気に励まされています」と語り、自身が出演したドラマ『銀河の一票』から「それはきれいごとじゃないよ。きれいなことだよ」というセリフを引きながら、この『CEREMONY』のコンセプトに深く共鳴していることを改めて告げた。そんなプレゼンテーションのあとに登場したのは、まさに異ジャンル、異スタイルのアーティストといえるFRUITS ZIPPER。“はちゃめちゃわちゃライフ!”のコミカルでキュートな歌とダンスに、客席にもたくさんの笑顔がこぼれる。「NEW KAWAII」をコンセプトに活動するふるっぱーの、どこまでもポジティブなパフォーマンスはまさにピースフル。ポップな“ぱわーオブらぶ”でオーディエンスも楽しく体を揺らす。そしてラストはふるっぱーといえば、な“わたしの一番かわいいところ”。歌いながら、メンバーがステージを降り円卓そばにあるミニステージへと移動すると、7人全員の輪の中に藤澤が招き入れられ、突然息の合ったダンスで魅せた。最後には「パワー!」のポーズまでバッチリ(?)決める。これにはハッピーな笑い声と大歓声が沸き起こった。ふるっぱーのメンバーがステージ横へと去っていくなか、なぜか藤澤まで一緒にハケようとして若井滉斗(G)に止められる──という、なんともミセスらしい最高に楽しい一幕も。
ショーは後半に突入。セットチェンジで運び込まれるアンプなどから、次がいよいよマキシマム ザ ホルモンのターンであることを会場中が察知する。そのざわつく空気の中、プレゼンターとして登場したのは、なんと落語家、立川志らく。実は志らくは父親がギタリスト、母親が長唄三味線の師匠と、音楽との縁も深い。「ふたりの娘がミセスの大ファン」であることから自身もミセスの音楽を聴くようになり、ファンになったという。ミセスの音楽に「心地よさ」を感じる理由として「ミセスの楽曲には昭和の音楽の風が吹いている」という志らく師匠ならではの分析も興味深かった。それにしてもさすがの流暢なトーク。こんな時間を楽しめるのも『CEREMONY』ならではだ。さて、マキシマム ザ ホルモンである。ミセスとホルモン、音楽性のまるで違う両者。JAM'S(ミセスのファンの呼称)と腹ペコ(ホルモンのファンの呼称)とが、この『CEREMONY』の場で、どのようにひとつになるのか。あるいは反目し合うのか。結果は言わずもがな。1曲目の“シミ”から、JAM'Sも腹ペコもまさにボーダレス。ヘヴィでエキセントリックなサウンドには、フォーマルなスタイリングでVIP席にいるJAM'Sたちもヘドバンのリアクション! この光景こそ『CEREMONY』。さらにナヲ(ドラムと女声と姉)が「食わず嫌いとかなしに、今日はミセスからの試食の会。ボーダレスを喰らう覚悟はできてますか!」と焚き付けると予想以上の大歓声。「三度の飯より」「飯が好き!」のコール&レスポンスもバッチリ決まり、鉄板曲“maximum the hormone Ⅱ〜これからの麺カタコッテリの話をしよう〜”へ。超絶ソリッドでハードなビートに会場中が拳を突き上げた。そして「恋のおまじない」のレクチャーからの“恋のメガラバ(CEREMONY edit)”。ミセスの面々も、他のアーティストたちも思わずヘドバン! なんて素敵な光景だろう。
続いてのプレゼンターは、元競泳日本代表の入江陵介。以前に大森と対談したことがあるという入江は、「その人柄、音楽への想い、メンバーへの想いに触れて、本当にまっすぐな人だと感じ」「ますますミセスのファンになった」と語った。そして「アスリートとして、音楽はいちばんの味方でした。だからこそ、音楽に関わるすべての皆さんに感謝の気持ちを忘れずに、これからも音楽を愛していきたい」と、熱のこもったトークに大きな拍手が起こった。音楽への純粋な愛とリスペクトの気持ちが会場中に浸透する中で登場したのはTWS。昨年夏に日本デビューを果たしたグローバルで活躍する6人組ボーイグループ。日本でのデビュー曲“はじめまして”の歌とダンスが会場の空気を明るく爽やかに塗り替える。そしてスタイリッシュなEDMのビートに乗せて、“You, You”ではキレのよいダンスを披露。ラストは「会場のみなさんも一緒に」と、振付のレクチャーをして、とびきりバウンシーでアッパーなダンスチューン“OVERDRIVE”。6人の爽やかな歌声とダンスがオーディエンスにも伝播して、とても気持ちよく会場を揺らした。
2日間にわたって開催された『CEREMONY』。そのラストのプレゼンターは、MCを務めた中条あやみだ。「私にとって音楽は、人生という映画の壮大なオーケストラです。私はこの仕事を始めて15年。30歳という節目を迎えようとしています」と、手紙にしたためてきた想いを読み上げていく。「きっと、一人ひとりのセレモニーに、いつも音楽があり、これからもいろいろな音楽が人生とともにあるはず。そんな最高のオーケストラに、私も今日出会えました」と、今回の『CEREMONY』で触れたたくさんの音楽に、改めて感謝の気持ちを述べた。MCの大役を務め上げたあとだけに、その言葉には万感の想いが滲んでいた。
いよいよ「第3回」の『CEREMONY』も終わりに近づく。もちろん最後を締めくくるのはMrs. GREEN APPLEだ。“ANTENNA”のギターリフに会場中の熱い想いのこもったハンドクラップが重なる。大森の歌声は前夜にも増して力強く、間奏では会場中を指差しながらオーディエンスを見つめる。藤澤も若井も時折笑顔を見せ、ステージ前の円卓は早くもオールスタンディング。大森の「愛してるよ!」も早々に飛び出した。ドラムソロが繋いで、「行こうぜ!」の合図で前日は演奏しなかった“クスシキ”へ。赤と緑のビビッドなライトが、緻密でフリーキーなサウンドを後押しする。アウトロの「ユイユイ」のシンガロングは、この日は「結い」を強く感じさせた。この会場で同じ時間を共有しているすべての人の気持ちが音楽で結ばれている。
その温かな空気が“風と町”へと繋がる。イントロが鳴るだけで、会場中から安心感とも喜びとも驚きとも形容し難い、ホットな歓声があがる。この柔らかで温かな歌声は、音楽が時代を超えて人々の想いや営みを繋いできたことを表現する。これも「結い」だ。そして “天国”での大森の歌唱は、いつにも増してシアトリカルなニュアンスを感じさせた。楽曲そのもののテーマを示すというより、音楽でならどこまでも人間の心の奥深くを表現できるという、その可能性の提示というか、それこそ音楽表現のボーダーを突破する試みとしての“天国”というか。それでもやはり大森の歌唱も、藤澤のピアノも、美しさの中に無情を感じさせ、何度聴いても食らうものがある。だから一層、ラストの“GOOD DAY”が心を明るく照らす。気づけば円卓のアーティストたちも立ち上がって《LaLaLa…》のシンガロング。少年時代からマキシマム ザ ホルモンのファンだったという若井は、その面前でどこか誇らしげに、とても楽しそうにギターを奏でていたのも感動的だった。音楽が世代を繋ぎ、ジャンルを超えてまた音楽で繋がる。そんな有機的な音楽の在り方を感じるエンディングだった。「感無量です」。すべてのアクトが終わり、最後の挨拶で大森はそう口にした。「やっぱり音楽って最高だと、心の底から感じることができました」。とてもシンプルな感想でありながら、これほど心から出た言葉もないだろう。大森の、藤澤の、若井の、3人の表情にその感慨が溢れていた。「また来年の『CEREMONY』で会いましょう!」と告げたあとは、オフマイクで「以上、Mrs. GREEN APPLEでした!」と声を揃えた3人。次回「第4回」がすでにとても楽しみで仕方がない。Mrs. GREEN APPLE presents 『CEREMONY』6月10日公演のレポートはこちら