今年もMrs. GREEN APPLEが6月10日、11日の2日間、『CEREMONY』を開催した。『CEREMONY』は、「フェスでも対バンイベントでも授賞式でもない」と大森元貴(Vo・G)がステージで語ったように、どんな音楽イベントとも違う、ミセスならではの音楽、ファッション、カルチャーを融合したエンタテインメントショーである。今年は2日間で、計13組のアーティストが登場。まずは1日目、6月10日の模様をレポートする。
文=杉浦美恵 撮影=田中聖太郎写真事務所(ライブ)、OGATA(フォトコール)
昨年よりさらに豪華に華やかに、Kアリーナ横浜の横幅いっぱいに広がった、スケールの大きなステージ。それを彩る何千本もの生花の芳香が会場中に広がっていた。ステージ前には複数の円卓が並び、この日の出演者たちが自由に出入りし、歓談する姿を我々オーディエンスも眺めることができる。そのうしろにはアスリートやタレントなど、錚々たるゲストがこの日のショーを観るために訪れていて、さらにその横にはVIP席のチケットをゲットしたオーディエンスが並ぶ。VIP席の観客にはドレスコードが設けられていて、セミフォーマルの華やかなスタイリングで、観客たちも『CEREMONY』の世界観を作り上げる一員となる。多くの出演者がオーディエンスの目の前を歩き、円卓へと向かう。そのたびに歓声や拍手が沸き起こり、アーティストたちも手を振ったり笑顔を見せたり、まるでレッドカーペットのアピアランスのようでもあり、ミート&グリート的な親密さもある。
まずステージにミセスの3人が現れ、この日の開幕を宣言。「僕らはこのイベントを『ボーダレス』という言葉で説明します」と大森が語る。互いのカルチャーに触れ、新しい「好き」に出会い、音楽の楽しみを再提示するのがこの『CEREMONY』開催のテーマであることが告げられ、いよいよショーのスタート。今回、総合MCとして登場したのは、昨年に引き続き、ラジオDJ・ナレーターのサッシャと、昨年はゲスト席でこのイベントを楽しんでいたという中条あやみ。
ふたりに呼び込まれる形で、最初のプレゼンターが登場。『CEREMONY』は、各アーティストのパフォーマンスの前に、各界から招かれたゲスト(あるいは出番を控えたアーティスト)が、プレゼンターとして音楽に対する想いを語るという構成になっている。こうしたスピーチを聞けるのも、このイベントの楽しみのひとつ。
最初のプレゼンターとして呼び込まれたのは、この日の出演者のひとりであるAI。「互いを讃えあう場」であるこの『CEREMONY』に出演できた感謝を告げつつ、「世界が、国同士が褒め称えあえたらどんなに素晴らしいか」と、最高にピースフルな言葉を投げかけてくれた。この想いに会場中が共鳴し、温かな拍手が巻き起こる。オーディエンスである我々も、そのプレゼンテーションにより『CEREMONY』を開催する意義をしっかりと受け取った。
最初のライブはs**t kingz。4人のパフォーマンスが初っ端から会場中を魅了。“MORECHAU”のキレキレのダンスが視覚的に音楽のグルーヴをブーストする。さらに「本日0時にリリースしたばかりの新曲を」と、“slow burn”を披露。力強いビートを背にクールなダンスが冴え渡る。そして、「三浦大知とSKY-HIとともに、『愛』をテーマに作った曲」と紹介し、“愛が呆れ果てるまで”。ピースな空気の中、ステージ前の円卓では、アーティストたちも立ち上がって踊り出す。その様子を見てシッキンのメンバーたちもステージを降り、その輪に加わる。ラストはミセスのメンバーとハイタッチをして、彼らは駆け抜けるようにステージをあとにした。最高のオープニングだった。
続いてプレゼンターとして登場したのはなんと俳優の竜星涼。竜星は「僕にとって音楽は切り離せないもの。喜怒哀楽、すべての感情が息づいている」と語って、観客もその想いへの共感を大きな拍手に込めた。
そして登場したアーティストはシンガーソングライターのasmi。とびきりアッパーなポップロックソング“ドキメキダイアリー”がオーディエンスの心を掴む。ミセスの面々も初っ端から立ち上がって盛り上がっている。そんな様子を見られるイベントなんて、そうそうない。またもや「音楽」の素晴らしさを感じる場面だ。asmiは、2022年にミセスの楽曲“ブルーアンビエンス(feat. asmi)”で共演して以来、「4年越しにこの特別なステージに呼んでいただけた。こんな贅沢なこと、感謝の気持ちでいっぱいです」と、この日の気持ちを言葉にすると、最後は「今日リリースしたばかりの曲を」と、最新曲 “東京タワー”を披露。深く胸に沁みる歌声にグッと引き込まれた。
セットチェンジの合間には、ゲストに話を聞くコーナーも。サッシャが卓球選手の張本智和にマイクを向けると、張本は、ミセスの“StaRt”が大好きで、試合前にもよく聴いていたと話していた。その後も、元女子競泳日本代表にして金メダリストの大橋悠依や、南海キャンディーズの山里亮太が音楽を語る場面もあり、ゲストたちを身近に感じられた。
そうしているうちに、続くプレゼンターとしてTOMORROW X TOGETHERのTAEHYUNが登場。「音楽には不思議な力がある」と語り、「『CEREMONY』が掲げる理念は僕らが感じているものと共通するものがある」と、このイベントへの共鳴の気持ちを告げた。ジャンルやスタイルを超えた理解とリスペクトが、この短い言葉の中にもしっかり感じられる。
続くアーティストは超ときめき♡宣伝部。大きな声援が彼女たちを出迎える。“最上級にかわいいの!”、“トゥモロー最強説!!”と、代表曲を続けて披露。そのポジティブさはまさに音楽とダンスの力。初見のオーディエンスも巻き込んでのコール&レスポンスも楽しい。“超最強”になだれこむと、ステージから円卓のほうへとメンバーが降りていき、AIやORANGE RANGE、ミセスにも「超かわいい!」のコールを要求。会場すべてを味方につけてのパフォーマンスは心底楽しかった。
続いてのプレゼンターはまたもサプライズ、ドランクドラゴンの塚地武雅! ミセスの藤澤涼架(Key)とドラマ『リブート』で共演した仲であり、塚地自身はアイドルグループの推し活に熱心なことでも知られる。その現場活動も含め、「僕自身もボーダレスに活動をしている」と、このイベントのテーマに重ねて語る話術はさすがだった。
そこからのNEXT ARTISTはORANGE RANGE。いやもう、1曲目の“上海ハニー”の強さたるや。冒頭のラップで心を掴むと、会場中が腕を左右に大きく振り、あっという間に一体感を作り上げる。さらには全員でのカチャーシーから「イーヤーサーサー」のコールまで。音楽が心を繋げるということを文字通り体現するステージ。“イケナイ太陽”では円卓も大盛り上がり。すごい景色だった。ラストの新曲“1000%”も大盛況。
興奮も冷めやらぬ中、スケートボード選手の吉沢恋がプレゼンターとして登場。競技の前、練習中など、音楽の力を味方につけていることを語り、このあとに控えるイタリア・ローマでの大会への意気込みも語った。会場の拍手がエールのように響く。
その温かい空気の中、次にステージに登場したのはAI。素晴らしい歌声を披露してくれた。“Not So Different”ではダンサーたちとともに、《花束を/銃の代わりに/音楽を/憎しむより/一緒に歌を》という、今の時代にとても大切なメッセージを届け、会場中から大拍手が送られる。間違いなく、ここに集まった全員の気持ちがひとつになった瞬間だった。“ハピネス”の中に“Story”の1フレーズも交えながら、音楽の素晴らしさを伝える。そしてとびきりソウルフルな“アルデバラン”での見事なハーモニー。ラストのロングトーンに、ステージ前で聴き入っていた大森も思わずスタンディングオベーション。藤澤も「やばいです。泣いちゃった。AIさんのやさしさが伝わってくる」と感極まっていた。
その熱い気持ちに溢れた会場を、スタイリッシュなサウンドに乗せたダンスと歌で盛り上げたのがTOMORROW X TOGETHER。“Stick With You”に大歓声が起こる。続いてUKハウスのクールな楽曲“I'll See You There Tomorrow”。ビートに没入しながら、キレのいいダンスパフォーマンスと歌に、s**t kingzの面々も大盛り上がり。そして、ミセスの大森が楽曲提供した“Force”ではメンバーがステージを降りて、会場中をひとつにしていく。音楽への強い想いのこもる、素晴らしいパフォーマンスだった。
この日はすべてのアーティストが、「音楽」が人の心を動かし、ジャンルを超えて心を通わせ合うことができるものだということを、それぞれのパフォーマンスで体現してみせた。
ラストを飾るプレゼンターは、スノーボード選手でハーフパイプの金メダリスト、戸塚優斗。自分の限界に挑戦する中で、常に「音楽はなくてはならないもの」と語り、「ミセスの曲にはいつも勇気をもらっている」と語った。会場に訪れたすべての人が、その言葉に心を重ねただろう。いよいよMrs. GREEN APPLEの登場。
大きな拍手と歓声の中バンドはスタンバイ。シンセサウンドと若井滉斗(G)の繰り出すギターリフが高らかに鳴り響き、“ANTENNA”でライブスタート。ハンドクラップの音がとても強く、誇らしげに会場中に響き渡る。「オイ! オイ!」のコールも、いつもよりも力強い気がするのは気のせいだろうか。もちろん円卓で観ているアーティストたちも、ハンドクラップで楽曲に参加。この日のオーディエンスは、「観る」「聴く」というよりも、「参加」しているという感覚のほうが強かったと思う。“コロンブス”のポップなリズムに心が弾む。大森の歌声もとても伸びやかで、音楽の力をまっすぐに感じることができた。さらに大森がアコギを抱えての“風と町”。歌い始めると同時に、会場から「待っていた」と言わんばかりの温かい拍手が沸き起こる。この日はこうした、いつものライブにはないタイミングでの拍手や歓声があって、予定調和ではない、感じたままのリアクションが随所にあったのもとてもよかった。
そんな温かな気持ちから一転、人間の感情の深淵を覗き見るような、“天国”を披露したのには驚いた。『CEREMONY』という祭典、祝祭の場では、おそらく“天国”は演奏しないだろうなと思っていたから。しかもラストは音源と同じく、ピアノの音が唐突にカットアウトする、「救いのない」ほうのエンディング。けれど、ボーダレスというテーマを思えば、こうしたダークサイドも包み隠さず表現すること、その闇から目を逸らさずにいられることも、また「音楽の力」なのだと思えた。赦しを乞いながら欺瞞の中に生きる人間の性を表現するかのような、鬼気迫る大森の歌唱。やはり何度もこの歌には心を揺さぶられてしまう。
その暗闇を描くのが音楽のひとつの力だとすれば、それをふっと、ひっくり返してくれるのも間違いなく音楽の力。ラストは“GOOD DAY”でとびきりのポジティブを届けてくれた。「ラララ」のシンガロングが会場を明るく照らすように響き渡って、今日という日を祝福するように、最後は大きな拍手が沸き起こる。大森も「愛してるよ!」と叫びステージをあとにする。そして鳴り止まない拍手の中で再び登場した3人は、最後の挨拶をする。
大森が「お互いに讃えあうって、きれいごとに聞こえるかもしれませんが、きれいごとを一生懸命やりたいなと思って、昨年『CEREMONY』を始めました。2回目にしてこんなに愛に包まれた場所にしてくださり、本当にありがとうございます」と、この日、Kアリーナに訪れたすべての人への感謝を言葉にする。「すごく刺激になったし、楽しかったです。語弊があるかもしれないけど、みんなほんとにフラットで、讃えあって、順位をつけたりすることより、遥かに心が満ちて、遥かに悔しい思いをしました」。その「悔しさ」とは、アーティストたちそれぞれが持つ個性や才能に触れて感じたものだろうし、もちろん、ほかのアーティストもミセスに、そして大森にそれを感じたことだろう。『CEREMONY』に観客として「参加」した我々も、音楽にはまだ底知れぬパワーがあることを実感したし、この大切なテーマを伝えるショーを企画し開催したミセスのエンタテインメント魂に、とびきりの賛辞を贈りたい。(杉浦美恵)
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