2005年に結成。2010年に川島海荷(うみにー)、佐武宇綺(うっきー)、村田寛奈(ひろろ)、吉井香奈恵(かんちゃん)、西脇彩華(ちゃあぽん)と現行メンバー5人が揃い、「いつかこの5人で武道館に立ちたい」という想いを胸に走り続けて来た9nine。結成「9」周年のアニヴァーサリーを迎えている今年、念願の「9nine Dream Live in 武道館」開催を果たした。ところが、いざ蓋を開けてみると、この初の武道館ワンマンは(昂る思いを気丈に堪える場面もあったが)「5人で武道館に立つ」ということよりも、「5人が目一杯伸び伸びと、武道館というステージを楽しみ尽くす」ヴァイブに満たされる内容だったのだ。その事実に驚き、また喜びを増幅させられるステージだった。
月光に照らされて浮かび上がる遊園地のアニメーションを背景に、黒・白・グレーのモノトーンに赤を加えてやや大人びた、それぞれデザインの異なる衣装を纏ってステージに姿を見せた5人。“With You / With Me”のコーラス・パートから歌い出したところで、うみにーが「皆さんこんばんは! 今日はみんなで最高のライヴを作り上げていきましょう!!」とMCの第一声も投げ掛ける。今まで踊っていた一段高い場所から降りて来ると、広いステージを最大限に使った立ち位置で歌い踊り、“out of the blue”までを歌い切った瞬間にかんちゃんは、はち切れんばかりの笑顔を覗かせる。そして、ワイルドなイメージの振りで披露される“Evolution No.9”は、スクリーンに浮かび上がるシルエットとダンスをシンクロさせつつ、まるで9nineが無限に増殖するような演出が加えられていた。“THE MAGI9AL FES.”から“#girls”にかけては、トロッコに乗ってアリーナ後方に移動し、更にそこで立つサブステージが階上客席の目線までせり上がって来る。武道館全域を掌握してやろうとするアイデアもバッチリだ。
メインステージに戻ると、あらためてのうみにーによる挨拶から、5人が思い思いに武道館ライヴへの意気込みを語ってゆく。「普段のライヴは、あまり人を呼びたくないんですけど、今日は、友達の少ない私のケータイのアドレス帳から絞り出して(笑)。親戚にも来てもらったし(佐武)」。「今日が近づくにつれて、武道館を悔い無く楽しむ、って言ってて。最後まで皆さんに楽しんで欲しいし、私も楽しんで帰る!(村田)」。そしてちゃあぽんは、涙を押し止めるように笑顔を見せて「今日は皆さんについて貰ってるし、私の周りには4人の仲間がいるので。Perfumeさんに教えてもらった栄養ドリンクを飲んで、最後まで頑張りたいと思います! 今日、武道館は私たちのものです!!」と告げる。それぞれの言葉にも、武道館という舞台と堂々渡り合うための、志の高さが漲るようだ。
鮮やかなダンスやハーモニー・ワークを届けることなどもはや大前提で、切ないメロが広がる“Forget-U-not”、火柱が吹き上がる中での“LOVE VAMPIRE”、オーディエンスも振り付けに巻き込む“(Luv=)0or H8?”、そして一冊のアルバムを5人で受け渡し、眺めながら披露される“ATASHI≒WATASHI”(スクリーンには、それぞれの幼少時まで遡る写真が)と、武道館に辿り着くまでのストーリー性が描き出されるものの、5人のパフォーマンスはただただ頼もしいばかりだ。自身の写真を背に「小さい頃から、写真に撮られるのが大キライでした! 今も大キライです!」と歯に衣着せないちゃあぽんに笑わされたりしていると、今度は歴代のジャケット・アートワークを遡る映像演出の中で、現メンバーが揃う以前の9nineナンバーである“白い華”をうみにー、うっきー、ちゃあぽんの3人で歌い、そこにかんちゃん、ひろろが加わる形でビート・ポップ風の“sky”が武道館に足跡を刻む。そして、過去のライヴ映像がフラッシュバックするバラード“ヒカリノカゲ”。9周年の9nineとしてもきっちり落とし前を付けるような、「昔の曲も9nineの曲じゃん!って、話し合ったよね。そこは一番、気持ち的に」という一幕であった。
汗で前髪がびしょ濡れのうっきーに触れて、「辻固め」と呼ばれる前髪のセット方法を語るうみにー。9nineへ参加した当初の、慣れないCMやMV撮影仕事の大変さを振り返るかんちゃんとひろろ。宿泊先ではいつもひろろと同室のうっきーは、毎度毎度ひろろに起こして貰っているということで「姉やんしっかりしろ!」とツッコミを浴びつつも「これからも末永く、ひろろにお世話になります!」と言ってのける大物ぶりだ。ひとしきりガールズ・トークに華を咲かせると、そこからメンバーそれぞれの愛称コールを交えて再燃する“Cross Over”へ。瞬く間に衣装チェンジをこなしてのダンス・パフォーマンスは、ひろろが一際小さな体躯でダイナミックに踊りまくり、かんちゃんとちゃあぽんは文字の描かれた箱の小道具を用いて、背景アニメーションとシンクロさせる9nineらしいパフォーマンスも披露する。5人が全身を振り子のように揺らしながら歌う新作曲“ALGORITHM+LOVE”の後には一転、スタンド・マイクでじっくりと歌声を届ける“モノクロ”と、9nineが9nineのまま進化する姿をあの手この手で見せつけてゆくのだった。
武道館のリハーサル映像(ザ・フーのTシャツを着ているうっきーや、ROCK IN JAPAN FESTIVALのTシャツを着ているひろろを観るのも楽しい)を経て、“NeXT to FUTURE”や“9uestions”も届けると、「みんなで本番前に、武道館でぶどうパンを食べた」という話題も振り撒きつつ、ちゃあぽんが会場全域のウェーヴを求める。「会場の特性上、アリーナはすぐ終わってしまうと思うんよ。1階・2階席の人を思いやりつつ、ゆっくりと……」と念入りにリードして見事成功させるのだが、ここでうっきーのヘッドセット・マイクが汗に濡れて不調を来してしまう。突然のハプニングにもメンバーは堂々としたもので、ここぞとばかりにうっきーの逸話(“Evolution No.9”のMV撮影時に、「ここはスローモーションになるんで~」という説明を受けて、自らゆっくりと身体を動かす演技を披露したことなど)や自身の失敗談で間を繋いでしまう。うっきーが復帰したところで披露されるのが再出発に相応しい“Re:”という、出来過ぎな一幕だった。そして本編は“少女トラベラー”が最大級の合いの手を巻き起こし、一面のタオル回しを敢行する“困惑コンフューズ”でフィナーレを迎えると、笑顔のうっきーを中心に5人が挨拶する。
アンコールに応えると、ここで披露される自己紹介ナンバー“9nine o'clock”から“Party9”にかけてまたもやサブステージに移動し、華やかなダンスを繰り広げながら歌う。その合間にも、「サインボール、3つしか投げさせて貰えなかった……」と何かやり足りなそうに言葉を漏らすひろろ。そんな貪欲さが“colorful”の絶対的な肯定性の煌めきを支え、ここで告知されるのは年末の東名阪ツアー、そして神奈川県民ホールでのカウントダウンライヴである(詳細はこちらのニュース記事を→http://ro69.jp/news/detail/108385)。12月に最年少のひろろが18歳の誕生日を迎えるので、深夜ライヴも解禁、というアイデアだそうだ。しかし、未成年ファンのために、昼公演も行うとのこと。そしてかんちゃんがオーディエンスとの記念撮影を行い、その場でツイッターにアップするという荒技も見せると、ここでメンバーそれぞれの挨拶である。
「こんなに汗をかいたのは皆さんのおかげです! これでゴールだとはおもっておりません、スタートです!(佐武)」「本当に楽しかったー! 平日に集まってくれた皆さんのおかげです!(村田)」「実感があるようで無いです。でも、悔しいこととかもあったけど、やってきて良かった。(川島)」「ほんまに、夢って叶うんやって。辛いこととかもあるけど、かなはこれからも、ずっとポジティヴにやっていきたいと思います!(吉井)」「武道館に、立っています。9年前からいろんな9nineを見てきて、諦めそうになったときも支えてくれた家族に、まずは感謝を。もっと素敵な景色を、皆さんに見せられるように頑張ります(西脇)」。
溢れ出る感慨はもちろんある。しかし、時には「初の武道館」という大舞台を忘れさせてしまうほど、頼もしいパフォーマンスで人々をエンターテインし、鍛え上げられた技と持ち寄ったアイデアをフル稼働させて自らも楽しむ、そんな5人の姿があった。未来に向けての約束のように“つづくつづく…”を披露して一度ステージから去った9nineは、ダブルアンコールに応えると、更に天高く昇ってゆく綺羅星のように“SHINING☆STAR”も届け、最後には「声をね、出し切りましょう」といううみにーの一言を合図に、オフマイクで「今日は本当に!」「ありがとうございましたーっ!!」と武道館の隅々にまで感謝の思いを投げ掛けるのだった。(小池宏和)
■セットリスト
01.With You / With Me
02.out of the blue
03.Evolution No.9
04.THE MAGI9AL FES.
05.#girls
06.Forget-U-not
07.LOVE VAMPIRE
08.(Luv=)0or H8?
09.ATASHI≒WATASHI
10.白い華
11.sky
12.ヒカリノカゲ
13.Cross Over
14.流星のくちづけ
15.ALGORITHM+LOVE
16.モノクロ
17.NeXT to FUTURE
18.9uestions
19.Re:
20.少女トラベラー
21.困惑コンフューズ
(encore 1)
22.9nine o’clock
23.Party9
24.colorful
25.つづくつづく…
(encore 2)
26.SHINING☆STAR
9nine@日本武道館
2014.08.21