オープニングから度肝を抜かれた。SEのスタートと同時に巨大な横断幕で覆われていたステージが露わになり、後方のステージがせり上がると、ドラムセットと共にTomoya(Dr)が登場。続いてステージ両翼の花道の先端からToru(G)とRyota(B)、ステージ中央からTakaがそれぞれせり上がってくると、「行くぞ!」の合図から“アンサイズニア”でスタート。観客エリアに伸びる花道に飛び出したTakaが「お前らの気合いをもっとみせてくれよ!」と煽り立てる中、観客一丸のオイコールが轟々と吹き荒れる。さらに“Deeper Deeper”“Nothing Helps”の連打でヘッドバンキングの波を出現させた後、Tomoyaの勇壮なドラミングから幕を開けたのは“Let's take it someday”。「もう分かっているよな? このタイミングでこの曲をやる意味が!」というTakaの扇動からオーディエンス全員しゃがんでの一斉ジャンプが豪快に決まり――と、冒頭4曲で早くもクライマックスのような歓喜を生み出してスタジアムを完全制圧してしまった4人であった。
そして。「この新曲で俺たちと一緒に会場に穴を開けようぜ!」とスタートした“Mighty Long Fall”がすごかった。心にうごめく赤黒い感情を音にしたような、ヘヴィでシリアスなサウンド。無数の火柱と共にスリリングに噴き上がる轟音は、スタジアム全体が巨大な心臓となってドクドクと脈打っているような、壮絶な風景を描き出していた。そんな戦慄のパフォーマンスを終えて、客席から沸き起こったのは地鳴りのような大歓声。アッパーに弾ける楽曲ではなく、エモーショナルなバラードでもなく、重たいビートと鬼気迫る絶唱がトグロを巻くこの曲でオーディエンスの心に火を点けてしまったところに、彼らの確かな進化を感じる。6thアルバム『人生×僕=』リリース以降の国内外でのライヴ行脚を経て、格段にスケールアップしたONE OK ROCKサウンドの最新型をまざまざと見せつける、迫真のパフォーマンスだった。
“Mighty Long Fall”の重たいグルーヴを“Living Dolls”の眩いメロディで塗り替えた後、Takaはこう語りかけた。今やロック・バンドとしての輝かしい栄光を手にし、誰もが憧れるスター街道を突き進んでいるONE OK ROCK。しかし孤高の存在として現実離れした夢を見せるわけではなく、同じ夢を追い続ける仲間として、聴き手の心を突き動かす原動力であろうとする強靭な意志が、その言葉から透けて見えていた。そして冒頭に記したMCを続けると、オーディエンスが掲げるケータイの光が場内に溢れる中で“Be the light”を披露。己の成功に甘んじることなく、ただひたすらにラウドなサウンドを鳴らすことでシーンの先頭に立ったONE OK ROCKだからこそ放てる「未来は自分の手で変えていける」というメッセージが、スピリチュアルなサウンドと相まって優しく、リアルにオーディエンスひとりひとりの心に沁みわたっていった。
その後は、花道の先端に設けられた特設ステージに移動してのアコースティック・セットへ。ヴァネッサ・カールトンの“A Thousand Miles”のカヴァー、1stアルバム『ゼイタクビョウ』収録曲の“欲望に満ちた青年団”で柔らかなハンドクラップを誘い、オーディエンスと親密なコミュニケーションを結んでいく。さらにTakaとToruのふたりで前日封切したばかりの映画『るろうに剣心 伝説の最期編』の主題歌“Heartache”を披露してメイン・ステージに戻ると、再びバンド・セットで“Decision”をプレイ。地平の彼方へ届くような雄大なサウンドで壮大な景色を広げたところで、鉄壁のアンセム“Re:make”投下! 「今日は声が枯れるまで行くからな!」というTakaの絶叫と共にオイコール巻き起こる場内のヴォルテージは“恋ノアイボウ心ノクピド”“NO SCARED”の連打でうなぎ上りに上昇し、本編ラストの“完全感覚Dreamer”で頂点へ! エッジ感の塊のような轟音と、ステージを降りてアリーナエリアをダッシュするTakaの絶唱がこれでもかと吹き荒れて、夜空をブチ抜くような巨大な歓喜が弾ける壮絶なラストを迎えた。
この後、ONE OK ROCKは10月末から年末にかけてアメリカ/南米/ヨーロッパへと及ぶ海外ツアーを実施。世界中のオーディエンスの想いを受け止めて、更なる進化を遂げて日本に帰ってくるであろう彼らの次なる一歩が、今から楽しみで仕方ない。(齋藤美穂)