SEKAI NO OWARI@富士急ハイランド?

「最終日に……最終日になっちゃった。明日、できないことになっちゃったんですけど。今日もこの雨の中、『もう無理かもしれない』ってずっと言っていて。ステージに出る時に、みんないなかったらどうしよう?と思って……本当に嬉しかったです。雨の中来てくれて、本当にありがとうございました!」。本編終盤、激しい雨音の中、目を潤ませながら満場のオーディエンスに語りかけるSaoriの言葉に、熱い拍手が湧き上がっていく――昨年10月の「炎と森のカーニバル」に続いてここ富士急ハイランド?を舞台に開催された、SEKAI NO OWARIプロデュースによる野外ライヴイベント「TOKYO FANTASY」。10月4日(土)・5日(日)・6日(月)の3日間にわたっての実施が予定されていたが、台風18号の上陸により「3日目=6日の開催中止」が決定されたのが2日目=10月5日の開演直前のこと。その10月5日も、開演から終演まで終始強い雨が降り注ぐ最悪の気象条件の中での開催となった。それでも、いやだからこそ、SEKAI NO OWARIが描き出すファンタジーがより壮大で強靭なものとして雨の夜空に浮かび上がる、唯一無二の音楽体験だった。

「炎と森のカーニバル」同様、富士急行「富士急ハイランド」駅から「富士急ハイランド」を通り抜けたその先にある「コニファーフォレスト」で一大ワンダーランドを繰り広げる「TOKYO FANTASY」。開演16:20に対して、開場時間は12:00。場外のオフィシャルグッズ売り場には富士急ハイランド駐車場まで長蛇の列が生まれていたし、入場証代わりのスターライトリング(時計の形のリストバンド)を受け取って進み行った先のサブエリアには、謎解きゲーム「DJ LOVEからの謎2」ブースや仮装コンテストの記念撮影ブース、オリジナルフードやカクテル(「Fight Music」「深い森」「ドラゴンナイト」など曲名にちなんだもの、ノンアルコールもあり)などの販売コーナーなどが展開され、早い時間から多くの参加者で賑わいを見せていた。残念ながらほとんどレインコート越しではあったが、この日のために思い思いに趣向を凝らしたであろう魔法使いや戦士などの仮装/メイク/ペインティングなどからも、この特別な空間を全身で楽しみ切ろうとする意欲が伝わってくる。

そこからステージエリアに入ると、舞台上には去年よりもさらにヴォリュームアップされた巨大樹が。さらに、ステージ両サイドには山小屋のようなセットが組まれ(下手側の小屋は2階建て)、来るべきアクトへの期待感をいやが上にも煽っていく。雨除けのテントがステージ狭しと組まれている中、スタッフが慌ただしく機材の防水措置に駆け回り、開演に備えている。そして――開演予定時間=16:20ををやや過ぎた頃、その下手の小屋2階にNakajin、Saori、DJ LOVE……によく似た天狗面の3人衆が登場。Nakajin風の天狗が「高尾山から来たけどさ。天狗やってるとだいたいのことは大丈夫だけど、さすがに今日の雨はこたえるね」と言えば、DJ LOVE風の天狗が「羽根びしょびしょだからね」と応える。
Nakajin天狗「今日はOWL CITYさんも観れるっていうことでね。OWL CITYさんとセカオワは仲良いみたいだから、共演できてすごく喜んでたよね。一緒に焼き鳥とか食べた仲らしいから」
Saori天狗「納豆も食べたって言ってたね」
Nakajin天狗「そして、Fukaseさんも、もしかしたらOWL CITYさんのステージに参加するかも、なんて噂も聞いたんだけど……」
そんな天狗たちの前説(?)に会場のテンションが高まったところで、「TOKYO FANTASY」2日目いよいよ開演!

<OWL CITY>

全日ゲスト・アクトとして登場するのは、アメリカが誇るエレクトロ・ポップの旗手的シンガーソングライター=アダム・ヤングのソロ・プロジェクト、OWL CITY。すでにアナウンスされている通り、SEKAI NO OWARIを迎えてのOWL CITYの新曲“TOKYO feat. SEKAI NO OWARI”&OWL CITYプロデュースによるSEKAI NO OWARI新曲“Mr.Heartache”といったWコラボを通してセカオワと交流を深めているアダム。1曲目の“Meteor Shower”の雄大なバンド・オーケストレーションと透徹したメロディで、雨の風景を文字通り音の銀河へと塗り替えてみせる。今年7月に開催されたASIAN KUNG-FU GENERATION主催「NANO-MUGEN FES. 2014」以来の来日アクトとなるOWL CITY、全世界で1200万枚セールスを記録した出世作的シングル曲“Fireflies”の精緻な電子音の音像や、カーリー・レイ・ジェプセンとのコラボでお馴染みの“Good Time”のアッパーな高揚感はもちろんのこと、“Dementia”“Shooting Star”“Deer In the Headlights”といったポップ感に満ちた楽曲群から、最新EP『Ultraviolet』収録のスロウ・ナンバー“Beautiful Times”のシンセ・ストリングスが描く凛としたサウンドスケープまで、世界を魅了するOWL CITYの名場面集的なセットを惜しげもなく響かせていく。

音源でのハイブリッドな質感とは裏腹に、ギター/キーボード/ベース/ドラムのダイナミックなバンド・サウンド越しにあふれんばかりのヴァイタリティと肉体性をその楽曲に重ね合わせてみせたアダム。中盤、「僕の友達をスペシャル・ゲストに呼びたいんだ。Fukase!」というアダムのコールとともにFukaseが登場、2人ヴォーカル体制で“TOKYO feat. SEKAI NO OWARI”の弾むような旋律をアグレッシヴに歌い上げる姿が、雨の会場をでっかい歓喜で包んでいった。ラストを飾った“Gold”の荘厳なまでに美しい音世界は、「稀代のポップ・クリエイター」の域に留まらないアダムの才気を雄弁に物語っていた。2015年5月に開催が決定した3年ぶりの単独ジャパン・ツアーへ胸躍らせるには十分すぎる、珠玉のアクトだった。

<SEKAI NO OWARI>

すっかり陽が落ち、雨とともに冷気が忍び寄ってきた中、17:37、高らかに鳴り響く鐘の音。ステージ両サイドのヴィジョンには時を刻む時計の針が映し出される。やがて、その針が急速に回り始め、場内は一気にファンタジックな異世界へと引きずり込まれる。カラスが不穏に鳴き、モンスターたちの行進する先にあるのは、「Fukase」「Nakajin」「Saori」「DJ LOVE」の墓標……といったオープニングのアニメーション映像が流れ、ステージ上空に花火が炸裂、ヴィジョンの時計は今度はものすごい勢いで逆回りを始める。そして、鐘の音がリズムを刻み、この瞬間を待ち焦がれたオーディエンスの大歓声が鳴り渡る中、ステージ前面のウォータースクリーンに「WELCOME」の文字が浮かび、舞台に炎が揺らめき――ステージ袖の小屋にずらり勢揃いしたミイラのオーケストラとともに流れ込んだ1曲目は“炎と森のカーニバル”! 勇壮に太鼓を打ち鳴らすNakajin。一面にスターライトリングが輝く満場の会場を見渡して、早くも感極まった面持ちのSaori。機材を雨から守るために天井低くセッティングされたテントの奥からも、その朗らかなヴァイブが伝わってくるDJ LOVE。「待たせたな!」と声の限りに叫び上げて、雨も寒さも跳ね返すくらいの熱気を呼び起こしたFukase。セットやコスチュームではなく、他でもないSEKAI NO OWARIの音楽こそが最大のファンタジーであり奇跡である――ということを、何よりもリアルに体感した瞬間だった。そんな会場の多幸感は、深瀬がギターを構えての“世界平和”、さらに“虹色の戦争”へ、と曲が進むごとに刻一刻と高まっていく。

「僕、今日(雨に濡れて)壊していいマイクは2本だけらしいので」と言っていたFukaseはしかし、すでに序盤の“虹色の戦争”の時には勢いよく防水用のテントを飛び出して、終始マイクどころか全身ずぶ濡れで熱唱していたし、Nakajinもギターが水浸しになるのも構わず雨の中でギターをかき鳴らしていた。「歌える?」と歌メロを託すFukaseのコールに応えて、場内一丸の歌声が響き渡る。「いいね!」と満足げなFukaseの言葉に、さらに歓声が湧き起こる。“RPG”のカップリング曲“アースチャイルド”や初期曲“白昼の夢”なども織り交ぜながら、至上の音楽空間を構築していく4人。「みなさん、今日は来てくれて、残ってくれて、本当にありがとうございます! 嬉しいです」と語りかけるNakajinに続けて「具合が悪くなったら、その時はリタイアして! これが最後じゃないから」とFukase自ら呼びかけるくらいに天候のコンディションは厳しいものだったが、それでもセカオワのステージを観るために多数の参加者がこの場所に集まっていたし、その熱意に応えようとするメンバーの情熱が、この日のアクトの随所に滲んでいた。そして、ファンタジックな音像と背中合わせにヘヴィなテーマに迫るSEKAI NO OWARIのエンタテインメントの本質が、そんなハードな環境でよりいっそうの訴求力をもって身体と心を揺さぶってきた。

「墓場から蘇ったゾンビ4人」という物語に添ったSaori/Fukase/Nakajinのアニメーション映像が流れ、「ひとり忘れてないかい?」というヴィジョン内のFukaseゾンビの言葉を受けて、舞台上にはソンビ仕様のDJ LOVEがミイラダンサーとともに現れ、雨の中で華麗なダンスをキメてみせる。“yume”からは全員白のコスチュームにチェンジして登場、続く“Death Disco”のミステリアスな照明&レーザー光線を貫いて響くFukaseの絶唱が会場をびりびりと震わせていく。「ここで、ニュースには出てたんですけど、新曲をやります! カモン、アダム!」とFukaseがOWL CITYことアダム・ヤングを呼び込んで披露するのはもちろん“Mr.Heartache”。マッシヴなビートと目映いくらいのシンセ・サウンドが、セカオワ・ファンタジーにさらにパワフルな躍動感を与えていく。「僕、OWL CITYがデビューの時から好きだったんで。こうやって一緒にステージに立てるのはめっちゃ嬉しいんですよ。本当に興奮してます!」と語るNakajinに、熱い拍手が沸き上がる。Nakajinがリード・ヴォーカルをとる“炎の戦士”から、1stシングル曲“幻の命”の静謐な風景へ。そして、ミイラのストリングスとともに、観客のシンガロングが高らかに響いた“スターライトパレード”の祝祭感は、ミイラオーケストラのブラス/ストリングス/打楽器フルバンドとともに“RPG”での満場のクラップ&大合唱へと導かれていく。本編を締め括ったのは“深い森”。4人が演奏する舞台と巨大樹に、《END OF THE WORLD》など英語詞のフレーズが何かの黙示録のように白く映し出されて――終了。

アンコールを求める“スターライトパレード”の歌声が会場に広がる中、「1914年12月25日、ドイツ軍とイギリス軍が“きよしこの夜”の歌声でひとつになり、死者を弔い杯を合わせた」というエピソードを紹介するナレーションが流れ、再びステージに登場した4人がアンコール1曲目に響かせたのは、そんな「百万年に一度」の奇跡を歌った10月15日リリースの新曲“Dragon Night”。ニッキー・ロメロのプロデュースによるセカオワ流EDMアンサンブルがひときわ鮮烈に響き、アコーディオンを構えたSaoriも雨の中に飛び出して、スターライトリングとレーザー光線きらめく会場をさらに高揚させていく。雨の中、オーディエンスの頭上にタオルが渦を巻いた“Fight Music”ではDJ LOVEのバズーカ砲が炸裂! 正真正銘ラストの“インスタントラジオ”では、「最後のソロはNakajinに任せたから!」というFukaseの言葉に導かれて激烈ギター・ソロを弾きまくるNakajin。雨の夜空に銀テープのキャノン砲が舞い踊り、花火が高々と打ち上がる。すべての音が止み、4人揃って一礼した後、舞台の袖から袖まで歩み寄って参加者に感謝の想いを伝えるFukase/Nakajin/Saori/DJ LOVEに応えて、惜しみない拍手と歓声が巻き起こっていった。

01.炎と森のカーニバル
02.世界平和
03.虹色の戦争
04.アースチャイルド
05.白昼の夢
06.Love the warz
07.スノーマジックファンタジー
08.yume
09.Death Disco
10.Mr.Heartache(w/ OWL CITY)
11.炎の戦士
12.幻の命
13.スターライトパレード
14.RPG
15.深い森

(encore)
16.Dragon Night
17.Fight Music
18.インスタントラジオ

3日目中止は残念だったが、揺るぎない意志とエンタテイナー精神に貫かれた、SEKAI NO OWARIにしか生み出せない音楽と磁場が、この場所には確かに存在していた。Fukaseは前述の通り「これが最後じゃないから」と言っていたし、Saoriも「幻の3日目は、またいつかやろう」とTwitterに記していた。「その日」が訪れることを、今はただ心待ちにしている。(高橋智樹)
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