WEAVER@渋谷公会堂

「お待たせしましたWEAVERです! 渋谷、会いたかったよ! 今日・10月21日、オリオン座流星群が降るらしいです。でも、僕たちはそれよりも素敵な景色をみんなに届けていきたいと思います!」という杉本雄治(Piano・Vo)の言葉に、満場の渋谷公会堂にあふれる割れんばかりの大歓声! 9月から全9公演にわたって開催されてきた、「WEAVER “ID” TOUR 2014 『Leading Ship』」のツアー・ファイナル、東京・渋谷公会堂。今年6月に発売されたWEAVER自身初のベスト・アルバム『ID』のリリース・ツアー&半年間のロンドン留学後初となるツアーの最終日であり、2009年の配信シングル“白朝夢”でのデビューから5周年の記念日を飾るアニバーサリー・ライヴとなったこの日のステージは、自らの音楽探究心に忠実に邁進するWEAVERの現在地と、オーディエンスとの熱い信頼関係とを最高の形で実証するような名演だった。

WEAVER@渋谷公会堂
ステージを覆う紗幕にオープニング映像が映し出され、スペイシーなサウンドが響く舞台で紗幕越しに照らし出されたのは、グランドピアノの上に腰掛けて歌う杉本の姿。美しいメロディが印象的な新曲でスタートを切った後、幕が上がったところで“66番目の汽車に乗って”へ! 杉本がスタンディング・スタイルで奏でるピアノと目映いばかりのヴォーカリゼーション、奥野翔太(B・Cho)/河邉徹(Dr・Cho)の高性能なリズムが渾然一体となって、弾むような高揚感でもって渋谷公会堂を一気に歓喜の彼方へと導き、さらに“Hard to say I love you ~言い出せなくて~”“Shall we dance”とベスト盤『ID』収録曲で熱烈なクラップの嵐を生み出していく。
杉本 「頭から飛ばしまくりの本日ですけど……」
奥野 「飛ばしてます、いろんな意味で。歌詞とか(笑)」
杉本 「歌詞を飛ばしたっていうか……気持ちよくて、(“66番目の汽車に乗って”の)前奏を2回やってしまいました(笑)」
そんなメンバーの会話からも、この日のアクトへの前のめりな意気込みが伝わってくる。

WEAVER@渋谷公会堂
「ロンドンで僕たちが吸収してきたいろんな音楽の在り方を」ということで演奏したのは、“新世界”とコールドプレイの“Viva La Vida”とのマッシュアップ。そこから3人のピアノ連弾に流れ込んで、YMO“RYDEEN”や『アナ雪』の“Let It Go”まで盛り込んでみせたり、音楽的なポテンシャルの高さを存分にアピールしていく。さらに、ループ・サンプラーに通したピアノ・フレーズと豊潤なシンセ・サウンドをフィーチャーして、まったく新しいアレンジで展開した“BLUE”、奥野:アコースティック・ギター、河邉:パーカッションのアンプラグド編成で奏でた“Whistling in the dark”……ポップの結晶の如き楽曲と旋律と、確かな素養に裏打ちされた杉本/奥野/河邉の卓越したピアノ・ロックのアンサンブルが相俟って、無上の多幸感を描き出していく。そんな中で、デビュー5周年にちなんで「ライヴのベスト・メモリーは?」という奥野のお題に答えた河邉が「デビュー前に自分たちでライヴハウスに電話してO-Crestに出演したり、新宿MARZ、デビューしてからクアトロとか……」と東京のライヴハウスの名前を挙げたのに対して奥野が「あなた忘れてるけど、一回あなたの名前でライヴ(『WEAVER Special Live 2013~河邉徹、四半世紀誕生祭~』/2013年6月・NHKホール)してるでしょ?」と突っ込んで爆笑が巻き起こったり、晴れやかな高揚感の中でライヴは1曲また1曲と進んでいく。

WEAVER@渋谷公会堂
メンバーのロンドン留学中、今年5月にシングルとしてリリースされた“こっちを向いてよ”の、ひときわ高純度に研ぎ澄まされたメロディとアンサンブルを響かせた後、「自分たちが日本にいない間に曲がリリースされるっていうのは初めてだったから、『日本におったら、もっともっとみんなに自分の音楽を届けられるんじゃないかな?』ってもどかしさを感じてました。向こうに行ってる間は、最初は英語も全然できなくて、スタジオを予約するのもめちゃめちゃ緊張したし、電話も何言ってるか聞こえへんし」とロンドン留学時の苦労を語っていた杉本。「『WEAVERはもう遠くに行ったんだなあ』って感じた人も多いと思うし、『WEAVER何がしたいかわからん』って離れてしまった人も、もしかしたらいるかもしれん。でもやっぱり、帰ってきた時、そこに待っていてくれるみんなに、もっとこれまで以上に幸せになってもらえる音楽を届けられたらなあ、っていう想いで、ずっと向こうで音楽を作ってました。今日、みんなと一緒に共有する瞬間を夢見て作った曲があるので……」という言葉とともに披露したのは、この日2曲目となる新曲。凛としたサウンドとタイトなビートの上で、英語詞&日本語詞が伸びやかに広がる、意欲的なナンバーが、会場をクラップで包んでいく。

WEAVER@渋谷公会堂
“夢じゃないこの世界”からライヴ本編は一気にクライマックスへ! 高らかな♪ウォーオオオー のコール&レスポンスから突入した“Free will”から“Shine”“トキドキセカイ”と『ID』からの曲を連射して客席を熱く揺らしていく3人。「デビューする前なんて、神戸のライヴハウスでしかライヴをしてなくて。今みたいにこんなたくさんの街に行って、自分たちの音楽を待ってくれてる人がいるなんて、ほんまに考えられなくて……」と本編の最後に再び杉本が語る。「WEAVERの音楽は、3人だけじゃ絶対に作れへんのよ。ここにいるみんなだったり、全国で待ってくれてるみんなのおかげで、僕たちはこうやって曲を作ってるんだなあって、心から感じてます。だから、みんなが辛い時、悩んでる時、悲しい想いがあった時は、ライヴに来て僕たちに全部ぶつけてくれたら、それをプラスの力に変えていきたいなと思うんで。どうかこれからも、WEAVERについてきてください。よろしくお願いします!」。拍手喝采が降り注ぐ中、『ID』に未発表の新曲として収められた“Hope~果てしない旅路へ~”が決然と響いて……終了。

WEAVER@渋谷公会堂
鳴り止まない手拍子に導かれて、Tシャツ姿で再度オン・ステージした3人、圧巻のシンガロングの輪を生み出した名曲“僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから~”に続けて、この日3曲目となる新曲へ。時に奥野が太鼓で勇壮にリズムを刻んだり、杉本がハンドマイクでステージ前面へ歩み寄ったり、「ピアノ・トリオ」という枠に囚われない自由なクリエイティヴィティに満ちた楽曲が、最高の一夜の終幕を鮮やかに彩り、3人が深々と一礼して終了――のはずが、ステージ頭上からゆっくりと現れたのは、中央に染め抜かれたツアー・ロゴの周りにびっしりと来場者の寄せ書きが書かれた巨大な垂れ幕。そこへ流れる“Happy Birthday To You”に合わせて会場一丸の大合唱! 2000人以上オーディエンスが♪Happy Birthday, Dear WEAVER~ と歌い上げた瞬間、メンバーの涙腺決壊。「今回、ロンドンから帰ってきてからのツアーで。僕らのことを待っててくれてるのかな?っていう不安とかも、正直ありました。やっぱり自分たちの中でも、5周年っていうことで、デビューした時にイメージしてたところには、まだまだ達してないなあって思うこともあって。けどね、今日、僕たちが思い描いてたものよりも、もっとええもん見せてもらいました!」と、何度も声を詰まらせながら感謝の想いを伝える杉本に、惜しみない拍手と歓声が湧き起こっていく。「……よっしゃ、もう1曲やるか!」と杉本。最後の最後にひときわ濃密な多幸感とともに広がったのは、彼らのメジャー・デビュー曲となった配信シングル曲“白朝夢”だった。

ステージを去る間際に、今回のツアー・ファイナル公演の模様がWOWOWで12月にオンエアされること、2015年春には全国22ヵ所・23公演のライヴハウス・ツアーが開催されること、さらに時期は未定ながら新たにシングルのリリースを予定していることを発表したWEAVER。「日本中の人に知ってもらえるようないい曲、みんなに口ずさんでもらえるような音楽を作っていきたいと思います。今はたくさん音楽があふれてて、なかなかそういう時代でもないのかな?って思ったりするんですけど。でも、僕らは諦めずにそこを目指していきたいなと思うので」と杉本は5周年の「その先」の飛躍へ向けた決意を語っていた。WEAVERの進歩はまだまだこれからが本番だ!と確かに感じさせてくれるアクトだった。(高橋智樹)


■セットリスト

01.新曲1
02.66番目の汽車に乗って
03.Hard to say I love you ~言い出せなくて~
04.ティンカーベル
05.Shall we dance
06.新世界(Mashup ver.)
07.BLUE
08.Whistling in the dark(Acoustic ver.)
09.キミノトモダチ
10.こっちを向いてよ
11.新曲2
12.夢じゃないこの世界
13.Free will
14.Shine
15.トキドキセカイ
16.Hope~果てしない旅路へ~

(encore)
17.僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから~
18.新曲3
19.白朝夢
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