トップを飾るのは03年にロンドンで結成された4人組バンド、ブリゲード。ちなみにベーシストは日本人。ブリティッシュ・アンセムズの歴代出演陣の中で異彩を放つヘヴィかつエモーショナルなサウンド。多少アウェイともいえる雰囲気もあるのだが、メロディアスでキャッチーさも備えた“聴かせる”力のある楽曲揃いというところが強み。
続けて登場のVOLA&THE ORIENTAL MACHINEは、一筋縄ではいかないスリリングなビートで場内の緊張感を一気に高めた。そして英リヴァプール出身の4人組ギター・バンド、ザ・トルバドールズが登場。グッド・メロディが詰まったデビュー・アルバム『ザ・トルバードールズ』を9月に発表した彼ら。今夏サマーソニックに出演しており、前回の来日からインターバルは長くないものの、アルバム発売を通して、楽曲の浸透度が一気に高まっているよう。手拍子などフロアが一体となって彼らのステージを盛り上げていこうとする場面も多々あり。様々なバンドのファンが集うイベントという場だけに、“ギミ・ラヴ”などタイムレスに人を魅了していく良質な楽曲のもつ底力が発揮され、徐々に場内が彼らのパフォーマンスに引き込まれていく様が手に取るように伝わってきた。
ライトスピード・チャンピオンは、ドラム、ベース、バイオリンのサポート・メンバーとともに登場。冒頭“ギャラクシー”のイントロが流れた瞬間から歓声が。思えば、ライトスピード・チャンピオンことデヴ・ハインズはテスト・アイシクルズのメンバーとして06年1月に開催された第1回ブリティッシュ・アンセムズに出演している。当時のエキセントリックなダンス・サウンドから一転、甘美なメロディと繊細なデヴの歌声が場内を包んでいく。約3年後にこういう形で同イベントのステージを踏むことになるとは全く予想できるはずもなく、ブリティッシュ・アンセムズに歴史あり、というか、継続型のイベントはこういう積み重ねが面白いな、とあらためて感じた次第。内省的なメロディ、狂おしいほどの哀切を湛えたバイオリンの音色、力強いリズムを刻むドラムの女の子のはかない歌声とデヴとのコーラスの美しさは、いつまでも浸っていたいと思わせるものだった。
セルフィッシュ・カントのパフォーマンスには、とにかく度肝を抜かれてしまったという人は少なくないだろう。モデルばりに均整のとれたしなやかな肢体のボーカリスト=マシュー。彼のダンスと言っても過言ではないほどの激烈なステージ・アクションは観るものを圧倒する。ステージが進むにつれ、白シャツの胸ははだけ、ジレを客席に向け挑発的に振り回してみたり、ピタピタのスリム・パンツはローライズすぎて、時折あの毛が見え隠れするなど、何かとフロアの視線は彼に釘付けになるばかりだった。彼のパフォーマンスは、このバンドのサウンドがもつスケール感と不穏さを増幅させていく。好みは分かれるところだろうが、一度は是非ライブを観ておきたいバンドである。
今回の日本勢ラストとなるBASE BALL BEARは、海外アーティスト勢が多いイベントに初めて出て外国っぽいケータリングが新鮮だったこと、バンドの前身は中学生のときに結成したオアシスのカバー・バンドであること、などMCでは初々しさをみせながらも、確かな演奏力と、場数をこなしてきた者にしか醸せない堂々としたステージ運びで、オーディエンスの心を掴み取っていっていた。
ロンドン出身の3人組、ビッグ・ストライズのサウンドもブリティッシュ・アンセムズのこれまでの出演陣のイメージからすると毛色が違うものだ。ブルース感のあるレイドバックしたサウンドは、G.ラブ&スペシャル・ソースなどにたとえられることも。これが英国産ならではなのかもしれないが、ブルース・フィーリングは残したまま、ジャジーなアレンジなども相まって、ほどよく土臭さが漂白されており、いい意味でさらっと聴かせてくれる間口の広いものになっている。密室感もあるサウンドは大地や海というより、そんな大地に思いを馳せる都会人が集う酒場やカフェにしっくりとくる。温かいウッドベースの音色が心地好い。個人的に「もうちょっとパンチが欲しいな」と思っていた辺りで、偶然にもホーン・セクションがステージに登場、サウンド味わいをさらに深めていた。
そしてラストを飾るのは、90年デビュー/気付けば何とキャリア18年になるベテラン5人組、ザ・シャーラタンズ。場内もこの日一番の混雑ぶり。ティムの重量感ある黒髪キノコヘア(某バナナマン?)にはちょっとびっくりしたけど、くしゃくしゃの笑顔がかわいらしい。1曲目に披露された、最新アルバムのタイトル曲“ユー・クロス・マイ・パス”で、ティムの歌声としか言いようのない、気だるさと甘さが同居した伸びやかな歌声が響き渡り、場内はひときわ大きな歓声。そして2曲目に初期の大ヒット曲“ウィアード”が。弾けるしかない、といった感じの場内。ここから以降は“ヴァニティ”や“ユー・アー・ソー・プリティ”など最近の曲と、“ゼン”“ワン・トゥ・アナザー”などおなじみのヒット曲をバランス良く配した全17曲のセットリスト。近年ダウンロード先行でアルバムを発表するなど、新しいシステムを積極的に取り入れるなど先進的な活動をみせている彼らだが、そうした表面だけでなく、ベテランながら、バンドのスキル面でのブラッシュ・アップを日々怠っていないことが一目で分かる貫禄のパフォーマンス。とにかく各メンバーがプレイヤーとして脂がのってきていて、フロアで踊っている側もノスタルジーじゃなくて、今ここで生み出されているグルーヴに思わず身体を揺らさずにはいられないという感じ。シャーラタンズの今回の来日で、東京公演は今夜だけ、ということもあってコアなファンも多数詰め掛けており、フロアの熱気とステージからアーティストが放つ熱量ががっぷりと噛み合った爽快なライブとなった。(森田美喜子)