UNISON SQUARE GARDEN@新木場STUDIO COAST

「今日である意味『Catcher In The Spy』っていう作品は完結っていう形になるんですけど……改めて、『Catcher In The Spy』って最高のロック・アルバムだなと思うんですよ」と感慨深げに語りかける斎藤宏介(Vo・G)の言葉を称えるように、満場のフロアから熱い拍手喝采が湧き起こる。8月にリリースした最新アルバム『Catcher In The Spy』を携えて、9月13日から約3ヵ月にわたって日本各地をサーキットしてきた全国ツアー「UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2014 『Catcher In The Spy』」。11月28日・29日:東京・中野サンプラザ2DAYSのファイナル公演&12月10日:香川・高松MONSTER公演(10月13日の振替公演)も含め自身最長のツアーを終えたUNISON SQUARE GARDENによるツアー追加公演であり、文字通り『Catcher In The Spy』の集大成と言うべきグランド・フィナーレとなるこの日のライヴはまさに、これまでのアルバム&ツアーとは桁違いにその輝度と強度を増したユニゾンの、ロック・バンドとしての揺るぎないアイデンティティを証明するものだった。

アルバム『Catcher In The Spy』の最終曲“黄昏インザスパイ”の決然とした空気感から、「ようこそ!」という斎藤の言葉をきっかけに流れ込んだ“サイレンインザスパイ”のハイパー&アグレッシヴなロックンロールへと雪崩れ込むと、STUDIO COASTはあっという間に見渡す限りブレーキ壊れた熱狂空間と塗り替わっていく。あらゆるリミッターから解き放たれたかのような田淵智也(B)&鈴木貴雄(Dr)のダイナミックなリズムが、“流れ星を撃ち落せ”“メカトル時空探検隊”といった『Catcher In The Spy』の楽曲はもちろんのこと“オリオンをなぞる”“箱庭ロック・ショー”など歴代ユニゾン・アンセムに途方もない躍動感を注ぎ込んで、面白いくらいにSTUDIO COASTをがっつり揺さぶっていく。そして、斎藤の歌とギター。ユニゾンのロックとポップを鮮烈に体現している彼の佇まいは、この日はかつてないほどにロックンロール・スター的な存在感を帯びていたし、カラフルなハイトーン・ヴォイスは同時にびりびりと胸震わすような衝動と闘争心に満ちて響いてくる。

“シャンデリア・ワルツ”でむせ返るような熱気を呼び起こした後、ハード・ロックが赤黒く渦巻く“蒙昧termination”から流れ込んだ“WINDOW開ける”の、息を呑むのも忘れるほどの珠玉のヘヴィネス。そこから一転して“シューゲイザースピーカー”で満場のクラップを巻き起こしてみせる……「今日も最後まで、自由にやりましょう!」という斎藤の言葉通り、この日のユニゾンは一貫して溌剌とした自由度に満ちていたし、誰にも止められないほどの獰猛でスリリングな冒険精神に満ちていた。「『Catcher In The Spy』は僕らが、自分たちの思う『自分たちのやりたいこと』をバーンとやったらできたアルバムだったんですよ」とこの日のMCで語っていた斎藤。「J-POPの在り方に対するユニゾンからの渾身の回答」と言うべき前作アルバム『CIDER ROAD』を経て、彼らは「自分たちのロックを最大限に開放する」という道を選んだ。その結果、彼らの内なるロックンロールが激しく荒れ狂えば荒れ狂うほど、そのサウンドとメロディが極彩色の輝きを放つ――というユニゾンの奇跡のサイクルがこの上なくリアルに際立つアルバムになったし、その充実感と自信が彼らのライヴに格段にパワフルな高揚感を与えていた。

中盤のMCでは、「ファイナルから2週間ライヴがなかったんですよ。ずーっとUNISON SQUARE GARDENのことだけを考えて活動してきた3ヵ月間だったから、集中力の持っていきどころがわかんなくなっちゃって、この2週間の間に。で、それぞれ過ごしたわけですけど……」と、3人それぞれの「この2週間の過ごし方」を披露していた斎藤。それによると――
鈴木貴雄:初めて他のバンドのサポート・ドラマーを担当。そのうち1本のライヴがマレーシアであったため、人生二度目の海外を経験。その際、マレーシアでパスポートを置き忘れて、危うく日本に帰り損ねかける。
田淵智也:やることがなく、あるお昼に急に思い立って、浜松までトンカツを食べに行く。トンカツは美味しかったが、交通費を含めると、ランチに2万5千円。
斎藤宏介:「俺は俺でやることがなくて。ただ、自分でストイックだなと思うのは……ほんっとに、ずーっと、モンハンをやってた。プレイ時間が100時間を超えました(笑)」。三者三様の気合いの高め方(?)のエピソードが、爆笑とともにフロアの温度をじりじりと高めていく。

この日、斎藤は繰り返し、ロック・アルバムとしての『Catcher In The Spy』の手応えについて語っていた。「ぶっちゃけ、自分のことだけ考えて、自分の楽しみのために作ったアルバムが、スタッフさんから、みなさんから『カッコいい』って言ってもらえる――っていう自信になった作品だし、自覚を持った作品なんです。だから、ライヴをやっていく中でも、僕らはステージの上で好き放題やれる、自分の楽しみのためにね。で、それを観に来た人が、また同じように好き勝手やって楽しんで、終わったらお互い家に帰る……ただそれだけなんだなって」と静かに話す斎藤の言葉に、汗まみれのオーディエンスがじっと聞き入っている。「ただ、それって全然不親切なことじゃなくて。俺らは、みなさんひとりひとりに違った楽しみ方があっていいと思ってます。それを見つけてもらうことのほうが、俺らにとってはよっぽど大事だし。だから、俺はステージの上で音楽を最高に楽しむ。自分たちの想いは全部、楽曲に詰め込む。そうやって作ってきたツアーでした。本当に純粋な気持ちで作ったロック・アルバムです。『Catcher In The Spy』、今後ともよろしくお願いします!」……満場の拍手と歓声の中、ピアノ・トラックの晴れやかなイントロとともに突入した“harmonized finale”から一気にクライマックスへ! 変幻自在な鈴木の爆裂ドラム・ソロを挟んで、ロックンロールとポスト・パンクとダンス・ロックが入り乱れる“天国と地獄”、さらに“カラクリカルカレ”から“桜のあと(all quartets lead to the?)”で一面に鳴り渡るシンガロング! 「東京、楽しかったです! またね!」(斎藤)と“crazy birthday”で熱いコール&レスポンスを呼び起こし、「おしまい…………はこの曲!」とさらに“場違いハミングバード”でフロア激震の狂騒感を描き出して……本編終了。

鳴り止まない手拍子に応えて、再び舞台に登場した3人。「中野サンプラザ2DAYSが売り切れてしまって、今日(の追加公演)があるんですけど……」と斎藤。「売り切れるっていうのはめでたいことでもあるんですけど、裏を返せば『来れないやつがいる』っていうことで。ちゃんといちばん後ろの人まで見えるぐらいのキャパで、『ロック・バンドってこんなにカッコいいんだぜ』っていうのを引き続き見せていきたいと思ってるんで。いろいろ試行錯誤して、これからもやっていこうと思ってますんで。よかったらまた遊びましょう!」……そんなメッセージとともに、情熱完全燃焼必至の“instant EGOIST”“徹頭徹尾夜な夜なドライブ”“23:25”連射で高らかな歌声と濃密な多幸感を生み出していったユニゾン。「来年のバンド結成記念日=7月24日には初の日本武道館ワンマン・ライヴ『UNISON SQUARE GARDEN LIVE SPECIAL “fun time 724”』の開催が決定したこと」「この日のライヴで収録が行われた映像(当初は収録の予定はなかったが「こんだけいいツアーをやってるのを映像に残さないのはもったいない」というスタッフの提案によって収録が決まったらしい)が何らかの作品として世に出るであろうこと」への期待感以上に、3人が響かせる歌とサウンドそのものが何より、見果てぬロックの希望と期待感にあふれている――ということを、この日のステージを体感した誰もが強烈に感じたに違いない。そんな一夜だった。そして、UNISON SQUARE GARDENは「COUNTDOWN JAPAN 14/15」の3日目、12月30日・GALAXY STAGEに出演!(高橋智樹)

■セットリスト

01.黄昏インザスパイ
02.サイレンインザスパイ
03.オリオンをなぞる
04.流れ星を撃ち落せ
05.箱庭ロック・ショー
06.to the CIDER ROAD
07.君が大人になってしまう前に
08.メカトル時空探検隊
09.何かが変わりそう
10.シャンデリア・ワルツ
11.蒙昧termination
12.WINDOW開ける
13.シューゲイザースピーカー
14.harmonized finale
[ドラムソロ〜セッション]
15.天国と地獄
16.カラクリカルカレ
17.桜のあと(all quartets lead to the?)
18.crazy birthday
19.場違いハミングバード

(encore)
20.instant EGOIST
21.徹頭徹尾夜な夜なドライブ
22.23:25
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