MAN WITH A MISSION@さいたまスーパーアリーナ

MAN WITH A MISSION@さいたまスーパーアリーナ
MAN WITH A MISSION@さいたまスーパーアリーナ
ロックの夢が、眼前にどかんと描き出されてしまうステージだった。10/22の名古屋で幕を開け、神戸、仙台、松山と繰り広げられて来た、MAN WITH A MISSION史上最大規模のワンマン・ツアー「PLAY WHAT U WANT TOUR」。公演タイトルが示すように、ファンサイトで演奏して欲しい楽曲の投票を募り、それが反映されたセット・リストで巡るツアーでもある。今回レポートするのは、12/20のさいたまスーパーアリーナ公演だ。今後、郡山 HIPSHOT JAPANでの追加公演(12/26)が残されているためセット・リストの掲載は控えるが、演奏曲表記など少々のネタバレにはご注意を。

会場内に足を踏み入れたときに、最初の驚きがあった。階上の座席が埋め尽くされているのは言わずもがな、スタンディング・エリアの最後方まで、盛況なライヴハウスの如くみっちりとオーディエンスがひしめきあい、開演を今か今かと待ち構えているのである。史上最大規模の会場でこれか、とゾクゾクさせられてしまう光景だった。更に、今回のステージの模様は、全国33か所の映画館でライブ・ビューイング(これもバンド史上初)が行われている。意外な人物が登場し、公演中の禁止事項を伝えるムービーが映し出されると、いよいよMWAMのメンバー+E.D.Vedderの5匹と1人が大歓声を浴びて登場だ。

MAN WITH A MISSION@さいたまスーパーアリーナ
MAN WITH A MISSION@さいたまスーパーアリーナ
ファン投票が反映されるセット・リストということは、自ずと人気曲が並ぶ形になるわけで、序盤から終盤までどこがクライマックスなんだか分からないほどのグレイテスト・ヒッツ・ライヴになる。ステージ背景と左右には大型のパネル・スクリーンが複数設置され、CGアニメーションやステージの様子が映し出されていた。ときに激しい火柱が吹き上がるといった演出も用いられてはいたが、特筆すべきなのは驚くほど正攻法の、ロック・パフォーマンスとなっていたことだった。この規模のライヴでパンキッシュなロール感を真っ向から叩き付け、そのまま加速してゆく。生々しいバンド・アンサンブルと同期トラックのバランスがすこぶる良く、それがアリーナ後方までしっかり届けられるという、演奏/音響コントロールの素晴らしさが際立っていた。「PLAY WHAT U WANT」。それは何よりも、大勢のファンが理想的な形でロック体験を味わうための機会なのだ。

「さいたまスーパーアリーナニ、ヨウコソイラッシャイマシター! 私ガ最後ニココニ来タノハ、DREAMS COME TRUE、ドリカムノライヴデシタ。マサカ、我々ガコノステージニ立ツコトガ出来ルトハ。皆サンノオカゲデス! デスガ今日ハ、ソンナ感傷ニ浸ルツモリハ毛ホドモゴザイマセン! 我々ハ毛ダラケデスガ、皆サン一人一人ト遊ブタメニヤッテ来マシタ。言イタイコトハヒトツデス! カカッテ来イヤーッ!!」と、ジャン・ケン・ジョニー(G・Vo・Raps)はアリーナの隅々まで行き渡らせるようなトーンで煽り文句を投げ掛ける。そして作品の物語性の中から改めて表現衝動を引き出すようにギターを奏で、熱を帯びた歌声を上げるのだった。

MAN WITH A MISSION@さいたまスーパーアリーナ
MAN WITH A MISSION@さいたまスーパーアリーナ
まさにアリーナ・ロックど真ん中のスケール感で披露され、トーキョー・タナカ(Vo)が放つ《絵空事のような夢が 僕らを動かして行くんだ》というフレーズが熱狂のスペクタクルに浮かび上がる“フォーカスライト”。或いは、パンク性を思う存分振り撒く楽曲連打の中、音楽を身体一杯に受け入れながらプリミティヴな、不屈の表現意欲を呼び起こしつつ「過去最大ノ人数ノ前デヤラセテ貰ッテマス。全員、見エテルカラナ。イエスイエス。サッキ俺ノコト、シャクレッテ言ッタ奴モ覚エテルカラナ」といったMCに繋ぐ“1997”。音楽に勝ち負けはない、ということを前提にして書くが、音楽で飯を食うという抜き差しならない日々の戦いに勝ち続け、ファンとの親密な関係性を保ったまま、巨大なロックの夢を体現してゆくMWAMは、とても不思議なバンドだ。

その不思議さが、一繫ぎの物語としてするするっと解けていったのは、ミスター・ビッグの“Green-Tinted Sixties Mind”が披露されたときだった。ジャン・ケンのオリジナル・ラップから、タナカの力強いコーラス・パートとリレーされるカヴァー。昨年の横浜アリーナでも披露されていたが、大きな会場にとてもよく映えるナンバーである。洋楽ロックの名曲だからということではない。この曲そのものが、いわば手の届かない過ぎ去った時代のロックへの、強い憧れや、夢想を描くナンバーである。オオカミの頭を持つ究極生命体にはどうだか分からないが、ある世代のロック少年たちにとって、みっちみちに埋まったさいたまスーパーアリーナ(本家“~Sixties Mind”のリリース当時にはまだ存在しなかったが)ほどの会場でこの曲をカヴァーするということは、まさに夢のまた夢でしかなかった。それが、遠い海の向こう、遠い時代の向こうへの憧れではなく、20年以上に渡り共有され守り抜かれて来た最も身近なロマンとして演奏されてしまうことの凄さ。MWAMがカヴァーする“~Sixties Mind”の巨大なスケール感は、共有し守り抜いて来たロマンのスケール感なのである。

MAN WITH A MISSION@さいたまスーパーアリーナ
ジャン・ケンは、「自分タチガ、バンドヲ始メタ頃ノコトヲ思イ出シテイマシタ。夢ヲ見ルノハ、タダダカラネ」と語っていた。「夢ヲ見ルノハ、タダダカラネ」という言葉ほど、MAN WITH A MISSIONのバンド・ライフを端的に説明する言葉はないだろう。そして、この日発表された2015年2月11日リリースのニュー・シングル『Seven Deadly Sins』(表題曲はアニメ『七つの大罪』オープニングテーマ曲)に収録される、新曲“Falling”が素晴らしかった。コンセプチュアルな物語を通して新たなロック文法を摑み取ったMWAMが、その語り部としての雄弁さをもって再び現実に向かうような、ミディアム・テンポの力強いナンバー。DJサンタモニカ(DJs・Sampling)はここで、コンガを叩きグルーヴに生き生きとしたヴァイブを添えていた。

お馴染み、ジャン・ケン×飼育好男によるユーモラスなミッション動画もあったけれど、追加公演が残されているため内容には触れずにおきたい。活動5周年に向けてのアクションも告知され(詳細はこちらのニュース記事を→http://ro69.jp/news/detail/115637)、ジャン・ケンは最後に「今年モ一杯、遊ンデクレテアリガトウー!!」と告げて大団円へと向かっていった。ファンに愛された必殺のロック・チューン群、その根底で共有されるロマンを全身で体感する、見事なステージであった。(小池宏和)
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