cero@EX THEATER ROPPONGI

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その表現世界に踏み入る前と後では、景色の見え方が決定的に違っている。今回のライヴ終演後も、果たしてそのとおりだった。ceroが東京・EX THEATER ROPPONGIで、2日間に渡り繰り広げたショウ「Wayang Paradise」。その2日目の模様をレポートしたい。場内の客電が落ちると、紗幕の向こうにはメンバーの姿が透かし見えている。と、ここで紗幕をプロジェクターとして美しい影絵パフォーマンス(川村亘平斎によるもの)が始まり、優美なイントロダクションを奏でるのは座席エリアの最前列に姿を見せた6人編成のバンド=biobiopatataだ。

意表を突かれるようなオープニングに気を取られるのも束の間、ステージの紗幕が開くと同時に力強くグルーヴィな、そして豊穣なバンド・アンサンブルが立ち上がる。ステージ上のメンバーは、高城晶平(Vocal・Guitar・Flute) 、荒内佑(Keyboard・Sampler・Base)、橋本翼(Guitar・Clarinetguitar・Clarinet)のceroメンバーと、MC.sirafu、あだち麗三郎、光永渉、厚海義朗、古川麦からなる特殊サポーター(リズム・セクション+ホーン兼パーカッション)の計8名だ。高城が甘くソウルフルなヴォーカルで歌うのは、約1年前にリリースされたシングル曲“Yellow Magus”。このシングル以降、ceroはファンキーなソウル・ミュージックの要素を強く感じさせていたけれども、光永×厚海による濃厚なのに一音一音がソリッドなボトムが凄まじい。アルバム『My Lost City』に収められていた“マウンテン・マウンテン”も、荒内の弾けるようなピアノと高城のフルートが絡む序盤から、沸々と高揚してファンキーなアレンジで披露されてしまう。

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超現実的でありながら人間の生々しい息遣いを伝える、そんなcero節ど真ん中の“Summer Soul”をフィニッシュすると、高城は「なんかライヴっていうのが夢みたいで、フワフワしてるんですけど、それが2日続けてっていうのが、現実離れしているっていうか。まあ、今年はこれでほとんど終わりなんで」と語りつつ、公演タイトル「Wayang Paradise」について「インドネシアで影絵のことをワヤン・クリ(Wayang Kulit)って言うんですね。なので、Wayang Paradiseは影の楽園です。次はそんな影の曲、やってみましょうか」と、アフロ・ジャズ風のスリリングなコンビネーションで駆け抜ける“Elephant Ghost”に繋いでゆく。未音源化のナンバー連打だが、ceroの音楽の魔力は強まるばかりだ。影絵と共に現実を撃ち抜くような熱っぽいポエトリー・リーディングが挿入されると、間を置かずbiobiopatataの6人がステージ上に加わり、コズミック・サイケなCGアニメーションを背景に“我が名はスカラベ”を披露してしまう。個々の高い演奏スキルがギュッと一本になり、音の広がりというよりも強度を増してゆくさまが圧巻だ。

『WORLD RECORD』及び『My Lost City』という2作のアルバムで、ceroはもうひとつの世界を創造した。人の力が及ばぬ災害にさらされ、それでも生活感と躍動感に満ちた歌=人の想像力が生み出しうるものがせめぎあう、そんな架空の東京を舞台に、ビッグ・バンド編成の“大洪水時代”“船上パーティー”“マイ・ロスト・シティー”“Contemporary Tokyo Cruise”が立て続けに披露されていった。ディープなダブの演奏も、ダンスを渇望する切迫感も、ceroらしい鮮やかなハーモニーも盛り込まれ、フィクションと現実の境目が激しく揺さぶられてゆく。「大人数でやると楽しいねえ(高城)」「元には戻れないねえ(荒内)」「そんなことないよ。バリエーションだよ(高城)」と言葉を交わしつつ、ここで主にサックスを担当していたあだちがドラムスにスイッチ、そしてカクバリズム所属前から親交があったという関口将史と田島華乃が新たにストリングスを受け持つという編成で、エクスペリメンタルなイントロから“roof”へと向かっていった。芸大出身という話題が出たときに、高城が放った「大学がどこだっていいんだよ。どんな人生を生きて来ても、それを音楽にぶつけるだけだよ」という一言は、とても印象深い。

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リズム・セクションが元に戻ると、ceroでは久々にプレイされるという“Bird Call”へ。日本語ロック/ポップの思索がクラシック・ソウルのスタンダード感を掴まえてしまうナンバーだ。“outdoors”を挟み、“cloud nine”では翻弄される運命を目一杯謳歌するように、ルー・リード“ワイルド・サイドを歩け”から引用されたあのコーラスが立ち上がり、オーディエンスのクラップを誘う。そして詩情をじっくりと語り聞かせる“あののか”が、明滅するフラッシュライトの中で橋本の青白く燃え上がるようなギター・プレイを交えながら披露されると、この12/17にリリースされた最新シングル『Orphans/夜去』の2曲を続けてプレイしてゆく。どちらも、『Yellow Magus』以降のceroのソウル・フレイヴァー、そして「もうひとつの世界」に馳せる思いを美しい短編小説のように編み上げた、素晴らしいナンバーだ。「すげえ年の瀬感あったな」「NHKホールみたいだった。紅白みたいな」「いろいろ達成しちゃった感ある」といったふうに、小沢健二がブログでceroを話題にしていたことも引き合いにして満足げに語る3人だったが、どう考えても『Orphans/夜去』の先にはceroの未来が拓けているとしか思えない。本編ラストを飾るのは、高城の掛け声から始まる“さん!”だ。賑々しく楽しいのに、それだけではない複雑に入り組んだ、人間の感情の彩りを伝えてくれる。ceroはそういうバンドである。

アンコールに応えると、高城は呼び込むバンドのメンバーを間違えたりもしていたが、“マクベス”を披露して「やりたいことを、サウンド面でもヴィジュアル面でも具現化してくれた」とパフォーマー達に感謝の思いを伝える。そしてフィリー・ソウルかサルソウル・オーケストラか、という豊穣なアレンジで“小旅行”と“(I found it) Back Beard”を叩き付け、シンガロングも攫いながら「あけましておめでとうございます!」と、年の瀬を越えたフライング挨拶を投げ掛ける。さらには、ダブル・アンコールに応えると「新年一発目!」と“あとがきにかえて”も披露し、その想像力と確かなクリエイティヴィティをもって豊かな心象と豊かな表情を呼び覚ます、そんなステージは幕を閉じた。2015年にはニュー・アルバムも届けられるそうだ。今回のステージではすでに新年気分に到達してしまった感のあるceroだが、彼らはこの12/28に、COUNTDOWN JAPAN 14/15のステージ(ASTRO ARENA・14:25〜)にも登場する。楽しみにしていて欲しい。(小池宏和)

■セットリスト

01.Yellow Magus
02.マウンテン・マウンテン
03.Summer Soul
04.Elephant Ghost
05.我が名はスカラベ
06.大洪水時代
07.船上パーティー
08.マイ・ロスト・シティー
09.Contemporary Tokyo Cruise
10.roof
11.Bird Call
12.outdoors
13.cloud nine
14.あののか
15.Orphans
16.夜去
17.さん!

(encore)
18.マクベス
19.小旅行
20.(I found it) Back Beard

(encore 2)
21.あとがきにかえて
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