有言実行、という言葉だけでは生温い。いや、TAKUYA∞(Vo・Programming)が「381日目に果たされた約束」と語っていたとおり、今回の横浜アリーナ公演「KING'S PARADE」は、確かに前回2013年末の武道館「KING'S PARADE」で交わされた約束であった(そのときのレポートがこちら→http://ro69.jp/live/detail/94805)。男同士の約束が果たされたという事実だけでも、素晴らしい。ただ、UVERworldが体現しているものとは「音楽にすべてを託す復讐」なのだ。人生に立ちはだかってきた、すべての困難や障害への復讐。その復讐を達成するためなら、どんな労力も厭わない。UVERworldはそういうバンドである。『Ø CHOIR』ツアーのファイナルにして12000人の、通算7回目の男祭り。凄まじいライヴだった。
ステージを覆う幕には現在時刻を刻むデジタル時計が映し出され、10秒前からの雄々しいカウントダウンから18時ジャスト、幕が切って落とされる。上半身裸の真太郎(Dr)が早速の暴れ太鼓を繰り出し、TAKUYA∞が鳴り響かせるのはあの“7th Trigger”の口笛フレーズだ。その刹那、大歓声と同時に花火が打ちあがる。無数のレーザーが迸り、エクストリームなバンド・サウンドを押し返すようなシンガロングを巻き起こして、いきなり最高潮じゃないかと舌を巻くようなライヴが始まった。「オイ分かったろ男! 全員でかかってこいよ。お前ら、声帯ビロビロになるまで声聴かせろよ!?」「2015年1月10日、男祭り。二度はねえぞ? 本気でムリして生きようぜ!」と、熱唱の合間にも全力の煽り文句を注ぎまくるTAKUYA∞である。
激流メロに巻き込むシングル曲“Fight For Liberty”から、UVERworldの存在理由で抉りまくる“ENOUGH-1”にかけて、いよいよ『Ø CHOIR』のカードも切られてゆく。その合間には「男同士の本気の話するんだろ!?」といった言葉と共に、楽曲のテーマへとそのまま連なるようなTAKUYA∞の昂った口上も差し込まれていった。UVERworldのライヴは、音楽的には極めて多彩なエッセンスを盛り込んだハイブリッドなロックを鳴らしているけれども、実は「歌」のライヴである。TAKUYA∞の口上が楽曲に火をつけ、決して平坦で歌いやすいようなメロディではないにも関わらず、オーディエンスは全力でそれに食らいついてガンガン歌いこなしてゆく。歌いたい気持ちにさせられる。「UVERworldが、横浜アリーナで男祭りなんて出来っこない。そうほざいて、掌返した奴らに告ぐ。俺たちが、“NO.1”」。拳を振り翳して人差し指を掲げる、今こそが復讐の瞬間だと全身で示すTAKUYA∞が、また次の盛大なシンガロングを導いてしまうのである。
この2日後に横浜市の成人式を控えた横浜アリーナを、ぜひにと貸し出してくれたのは、UVERworldが大好きな担当氏なのだそうだ。信人(B)がエレクトリックとアップライトのベース2本を駆使する“REVERSI”に続いては、《そしてあれを言ったのは誰だ?/『一人減らしてデビューさせろ』》のフレーズがギラリと光る“誰が言った”。そして痛快な裸の王様たちのパレードに歌われる、影絵アニメーションと火柱の中での“バーベル~皇帝の新しい服 ver.~”と、胸を焦がすナンバーが次々に披露されてゆく。「どれだけ女運が無くて、男運が最強だと思ってるんだよ。見りゃ分かるだろう!? まあ、男に惚れられない男は、ダセえからさ」。そして濃密な友愛のアンセム“23ワード”を繰り出し、エレクトロニック・サウンドで浮上する貪欲なダンス・ロック・チューン“LIMITLESS”で2本マイクを使い分けオーディエンスを沸騰させるのだった。
「女の子たち座ってるところ(幸運な女性ファン100名が、階上のボックスシートから見守っていた)、シートがフカフカでしょ? 普段は、レコード会社の人とか、いろんなとこのお偉いさんがふんぞり返ってて、今日はそこ、入れさせねえよって。俺たちは、誰にも媚びねえバンドになりたいと思ってる」「昔は、UVERworldはたくさんの女の子たちが聴くバンドだったんだよ。女の子たちにここまで連れて来て貰ったんだけど、今は違う。性別も年齢も国籍も、元気あるやつも元気ないやつも、金持ってるやつも金持ってないやつも関係ないからね。何だったら、俺たちもお前らも対等だよ」。そう告げて披露される“7日目の決意”は、すべての人に等しく、非情に降り積もる「時間」を、音楽の力でどうにか分かち合おうとする優しさに満ちていた。
そして、ファンキーなインスト曲“Massive”で克哉(G)と彰(G・Programming)が対照的なギター・プレイを繰り出しつつ見せ場を作ると、メンバーが寄ってたかってスティックを振るう“Wizard CLUB”の悶絶グルーヴ以降は怒濤のアンセム曲連打だ。“IMPACT”を導く“零HERE~SE~”や、“CORE PRIDE”では、ここぞとばかりに吹き鳴らされる誠果(Sax・Manipulator)のサックスの旋律もぽっかりと浮かび上がる。雄々しいシンガロングを浴びながら疲れも見せず加熱し続けるUVERworldは、まるで永久機関のようだ。TAKUYA∞は「100人の女の子もありがとうな! 100人がいなかったら、こんなに熱くなれねえんだよ。男って、そういう生き物だよなあ!」と告げながら、アリーナの外にいる女性ファンや、衣装やアクセサリーを作ってくれる仲間たちのことに触れて「ここに来れなかった人のためにも、一緒に歌ってくれますか?」と“Ø choir”へと向かう。弛まぬ反骨精神の先で掴んだその温かな肯定性は、今のUVERworldとファンにとっての凱歌に他ならなかった。
「音楽でひとつになる。俺、そんなの嘘だと思ってたよ。でも、UVERworldが教えてくれた。何百回もライヴやって、まだ片手で数えられるほどだけど、音楽でひとつになる瞬間をお前らが教えてくれたんだ。見せてくれよ!」と辿り着いた最終ナンバーは、“MONDO PIECE”だ。会場全域の男性オーディエンスが肩を組んで揺れ、TAKUYA∞はサビの歌詞を彼らに丸投げしてしまう。美しい光景だ。「またやろうぜ! 俺、絶対やるからな! 東京ドームでやるからな!」と伝えられた新しい約束を胸に、誰もが日々の戦いへと戻ってゆくのだろう。なお、この日のライヴの模様は4月に、WOWOWでの放送が予定されている。詳細情報を楽しみにしていて欲しい。(小池宏和)
■セットリスト
01.7th Trigger
02.ace of ace
03.Fight For Liberty
04.ENOUGH-1
05.NO.1
06.KINJITO
07.REVERSI
08.誰が言った
09.バーベル~皇帝の新しい服 ver.~
10.6つの風
11.23ワード
12.LIMITLESS
13.7日目の決意
14.Massive
15.Wizard CLUB
16.Don’t Think.Feel
17.零HERE~SE~
18.IMPACT
19.CORE PRIDE
20.ナノ・セカンド
21.Ø choir
22.MONDO PIECE
UVERworld@横浜アリーナ
2015.01.10