ART-SCHOOL@新木場STUDIO COAST

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「時間っていうのは残酷で、どんどん過ぎ去っていくんだけども。だからこそ愛おしいんじゃないかって思ってるんですよね」。開演早々、全身痺れるような轟音とともに楽曲を畳み掛けた木下理樹(Vo・G)が、満場のオーディエンスに静かに語りかける。「今まで演奏した曲も、もう過去になってるはずなんですよ。でも、大切なのは、『この時間を共有できた』っていう気持ちなんで。これだけのお客さんが集まってくれて、同じ気持ちを、少しの間でも共有できたらと思って、全力でやりますので」とひと言ひと言じっくり想いをこめて伝える木下の姿に、万感の拍手喝采が広がる――《ART-SCHOOLは、新たな環境で活動を行うことを考えており、その準備期間として、2015年2月13日(金)新木場STUDIO COASTでのライヴをもちまして活動休止致します。リリースやライヴなど、表立っての活動はできませんが前向きな決断なので、しばらくの間待っていていただけると嬉しいです》という木下理樹のメッセージがオフィシャルサイトで発表されたのが、COUNTDOWN JAPAN 14/15出演を翌日に控えた昨年12月30日のことだった。あれから1ヵ月半、「ART-SCHOOL」とだけ題されたこの日のワンマンライヴは、活動休止という局面につきものの悲壮感や感傷に囚われることなく、15年の道程の中で作り上げたART-SCHOOLという世界を、ステージとフロアが一体になってひとつひとつ花開かせていくような、どこまでもポジティヴなヴァイブに満ちたものだった。

ART-SCHOOL@新木場STUDIO COAST
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轟々と渦巻く木下理樹&戸高賢史(G)のフィードバック・ノイズに、中尾憲太郎(B/Crypt City etc., ex.NUMBER GIRL)&藤田勇(Dr/MO'SOME TONEBENDER)というオルタナ・ドリームチーム的な豪腕サポート陣のリズムが加わり、“BABY ACID BABY”のソリッドで揺るぎないロックンロールへと流れ込んでいく。さらに、戸高のカッティングが冴え渡る“real love / slow dawn”の疾走感、クラウド・サーファーまで出現した最新アルバム『YOU』からの楽曲“Promised Land”のタイトな爆発力へ……と息つく間もなく次々と楽曲を連射していく4人。触れると壊れそうな儚い真実と愛情を、獰猛なまでにダイナミックでエッジィなロック・アンサンブルと、めくるめく麗しのメロディ越しに追い求め続けてきたART-SCHOOL。孤独の闇に轟音の闇を塗り重ねて光を描くような、背徳的で真摯な木下理樹のクリエイティヴィティが、1曲また1曲とSTUDIO COASTの空間に解き放たれ、炸裂していく。

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“夜の子供たち”“BOY MEETS GIRL”“サッドマシーン”まで一気に駆け抜けたところで、ゲスト・ヴォーカルにUCARY & THE VALENTINEを招き入れ、“YOU”“Water”をひときわカラフルに響かせていく。最新アルバム『YOU』の楽曲はもちろん、初期からの代表曲“DIVA”“ロリータ キルズ ミー”をはじめ歴代アンセムを惜しげもなく披露、会場の高揚感とテンションは刻一刻と高まっていく一方だ。「このライヴはDVDにしようと思っていて。みなさんも写っている可能性が高いです」と告げる木下。「じゃあ、ちょっとしっとりした曲を……しっとりしてんのかな?」という言葉を挟んで、前作アルバム『BABY ACID BABY』(2012年)からの“Chicago, Pills, Memories”へ。スペイシーなアンサンブルの奥底にスマパン的な凄味を湛えたサウンドスケープの余韻に、“Poolside”の凛としたメロディが重なり、“LOST IN THE AIR”の雄大な音風景が立ち昇る。もうひとりのゲスト=環ROYを呼び込んで披露したのはもちろん、彼のラップをフィーチャーした“革命家は夢を観る”。さらに、“その指で”の爽快なミドル・ファンクのビートが、中尾&藤田のリズムによってよりくっきりとした色彩感をもって鳴り渡っていく。

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「伝えたいことはたくさんあるんですけども……必ず戻ってくるっていうことは間違いなく言えます。それまで待っていてくれたら嬉しいです。待っていてくれますか?」と呼びかける木下に応えて、惜しみない歓声と拍手が一面に湧き起こっていたし、続けて語った戸高の「いろんな人に『やめないでください』って言われたんですけど……大丈夫です、僕ちゃんと戻ってきますんで」という言葉にも、ほっとしたような笑いと安堵がフロアに広がっていた。1stアルバム『REQUIEM FOR INNOCENCE』(2002年)の“アイリス”、オルタナ・ポップ的な躍動感と軋みに満ちた“BLACK SUNSHINE”の後、「いろんなスタッフや、いろんなことが助けてくれて、この場に立ってるわけで。で、一番はお客さんですよ、やっぱり」「もう残り少ないですけど、魂こめて演奏しますので。みなさん、ついてきてください」という木下の言葉を挟んで、霹靂の如き威力と目映さで高らかなクラップを巻き起こした“MISS WORLD”からライヴは一気にクライマックスへ。美しき孤独が強靭な剛性とともに轟く“車輪の下”。ひときわ凄絶に響いた“UNDER MY SKIN”……どこを切っても決定的瞬間のような、スリリングな悦楽の時間。“FADE TO BLACK”の熱唱と爆音が会場を真っ白に染めて、本編終了。

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アンコールではアコギを構えた木下が再びUCARY & THE VALENTINEを呼び入れて“Hate Songs”“フローズン ガール”を披露。ここで戸高が再び語る。「ART-SCHOOLでライヴしてる時だけは、自分の魂を解放することができるというか。本当に、このバンドには感謝してるんで。恩返しをしたいなと思ってます。僕にできるのはギター弾くことぐらいなんで、気合い入れて弾きます」――そんな想いをそのまま結晶させたような“スカーレット”のアグレッシヴなコード・ストロークがフロアを震わせ、“あと10秒で”では圧巻のクラップと熱狂を生み出して終了……かと思いきや、さらなるアンコールを求めて鳴り止まない手拍子に応えて三たび4人がステージへ登場。「いったん活動休止をするっていう選択をしたのは自分なんですけど。それは……自分で自分の人生を選びたかったっていうのが強くて」と木下。「自分は今、失敗しても誰かの責任にはできないし、本当に今、自分の人生を生きているんだと実感しております。結成15年目に差し掛かるんですけども、支えてくれた人たちすべてに感謝します。これからも、見守っていてください。ありがとうございます」と決然と語る木下の言葉が、切実に胸に迫る。

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この日のラスト・ナンバーは、2ndアルバム『LOVE/HATE』(2003年)からの“しとやかな獣”。《光は、光は此処には降らないさ/裸足で、裸足のままでいい/裸足で歩きたいさ》……心の奥底の退廃感をも照射するハード・バラードが、珠玉のアクトの終わりを鮮やかに彩っていた。「結構な期間、休むと思うんで……待っててね」と本編MCでも木下は言っていたが、すべての演奏を終え、手を取り合って一礼する4人に降り注いだ熱い拍手と歓声は、ART-SCHOOLの「これから」への期待感そのものだった。(高橋智樹)


■セットリスト

01.BABY ACID BABY
02.real love / slow dawn
03.Promised Land
04.夜の子供たち
05.BOY MEETS GIRL
06.サッドマシーン
07.YOU (w/ UCARY & THE VALENTINE)
08.Water (w/ UCARY & THE VALENTINE)
09.乾いた花
10.DIVA
11.ロリータ キルズ ミー
12.Chicago, Pills, Memories
13.Poolside
14.LOST IN THE AIR
15.革命家は夢を観る (w/環ROY)
16.その指で
17.アイリス
18.BLACK SUNSHINE
19.MISS WORLD
20.車輪の下
21.UNDER MY SKIN
22.FADE TO BLACK

(Encore 1)
23.Hate Songs (w/ UCARY & THE VALENTINE)
24.フローズン ガール (w/ UCARY & THE VALENTINE)
25.スカーレット
26.あと10秒で

(Encore 2)
27.しとやかな獣
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