ゲスの極み乙女。@新木場STUDIO COAST

ゲスの極み乙女。@新木場STUDIO COAST - all pics by 橋本塁all pics by 橋本塁
「今日でツアー・ファイナルということで、やっとね。11月から始まって、いつまでライヴやってんだよ!みたいなね。『追加公演決まりました』『またっすか?』って(笑)」という川谷絵音(Vo・G)の言葉に、開演早々からむせ返るような熱気に包まれたSTUDIO COASTのフロアが沸く。「今日は最後という事で……最後になると寂しいですよね」と言う川谷に、「寂しいですよ! 家帰るとひとりだもん」と続ける休日課長(B)。「課長!」と手を振るオーディエンスを見渡して「手振ってるの、だいたい男の人なんだよ」とSっ気たっぷりに突っ込むのは、ほな・いこか(Dr)。1stフルアルバム『魅力がすごいよ』を携えての全国ワンマン・ツアー「ゲスな魅力?」の追加公演としてさらに4都市7公演のツアー「ゲスの極み乙女。ワンマンツアー追加公演『ゲスでいこか vol.3』」を開催――というツアー・スケジュールが何より、ゲスの極み乙女。を巡る状況の日々加速ぶりを如実に物語っているが、その「ゲスでいこか vol.3」のグランド・フィナーレを飾ったこの日のステージが体現していたのは、およそバンドという表現が獲得し得るスリルとポップの極限のバランスそのものだった。

福岡/大阪2公演/名古屋2公演に続いて開催された、東京・新木場STUDIO COAST 2DAYS公演の2日目。いきなりシングル曲“猟奇的なキスを私にして”&アルバム『魅力がすごいよ』のリード曲“デジタルモグラ”の連射で満場のクラップ&ジャンプを巻き起こしてSTUDIO COASTを揺さぶり、ファンキー・バージョンにリアレンジされた“パラレルスペック”でフロアの温度をぐいぐい高めていく。川谷絵音/ちゃんMARI(Key)/休日課長/ほな・いこかの4人それぞれが繰り出すアクロバチックなフレーズの数々。ヒップホップ/プログレ/フュージョンなど多彩なエッセンスを感じさせつつそのどれでもない色彩豊かな楽曲世界。柔らかい歌声にシニカルな毒気もルサンチマンも切なさも忍ばせて切れ味鋭く撃ち放つ川谷のヴォーカル。曲によってはサポート=ササキミオ(Cho)の歌声も加えて生み出すカラフルなコーラス・ワーク……ハイパーに研ぎ澄まされ構築されたアンサンブルが、時にスリリングに渦を巻きながら、一貫して観る者すべてを踊らせ揺さぶる躍動感とヴァイタリティに満ちて響く。ミステリアスなプログレ的パッセージと ♪みんなノーマル の会場一丸大合唱が共存する“ノーマルアタマ”が、圧巻の多幸感を呼び起こしていく。ゲスの極み乙女。ならではのマジカルな名場面だ。

「俺が一方的に話し始めると、みんな『?』が出てくるのがわかるわけ(笑)。ライヴでは楽しそうにしてた人が……」(川谷)と自虐ネタにするほどのMCの長さはこの日も健在。前日公演:2月14日がバレンタインデーということで、“餅ガール”では餅の代わりにチョコを投げたと明かす川谷、「最後、(『餅が』『食いたいわ』のところで)『チョコが』『あげたいわ』って、文章がちょっとおかしかったなって。『チョコを』『あげたいわ』にすればよかったなって」(川谷)、「『食いたいわ』って言おうと思ったんだけど……別に食いたくないしなって(笑)」(いこか)といった話に始まり、もうすぐ誕生日という休日課長に矛先を向けて「俺、課長の家に行ったことないんだよ」(川谷)という話から焦点はなぜかKANA-BOON・古賀隼斗の黒シャツへと移り、あれよあれよと10分近い時間が過ぎていく……というのも、ゲス乙女のワンマンならではの醍醐味(?)だ。

「『魅力がすごいよ』リリース・ツアーの追加公演ツアー」という位置づけではあるものの、『魅力がすごいよ』から披露されたのは11曲中6曲で、メジャー・デビュー作となった3rdミニアルバム『みんなノーマル』&2ndミニアルバム『踊れないなら、ゲスになってしまえよ』から5曲ずつ――といった具合に、「作品」とはまったく異なる「ライヴ」という視点から自分たちの音楽世界全体を俯瞰して再構成したようなこの日のアクト。ちゃんMARIが奏でる目映いピアノの音色と川谷の超絶フレーズが乱反射する“ラスカ”のメランコリックな風景。ハンドマイク・スタイルの川谷のラップ的な歌い回しとジャジーなテイストが妖しく絡み合う“ハツミ”……喉も裂けよとばかりの爆裂テンションや全身震撼ものの音圧とは無縁の、クールでアヴァンギャルドなサウンドスケープが、観る者を刻一刻と濃密な高揚感で包んでいく。

ゲスの極み乙女。@新木場STUDIO COAST
中盤のMCでは「またツアーが5月に……5月31日に、日比谷野外音楽堂でやります! 初の野外ワンマンということで。大阪城野音と、日比谷野音でワンマンをやりますので」と川谷が発表、一面に拍手喝采が広がる。「雨が降らないことをほんとに祈りたいよね。台風とか……」という話から「台風の名前」に話が行きかけたところから一転、「川谷&課長の行きつけのラーメン店の大将が、ちゃんMARIとほな・いこかにだけどんどん料理をサービスする話」へと移り(この日来場していたという大将から「反省してます!」の声が上がった)、さらに「川谷が実は前日、体調不良を圧してのステージだった話」「同じく2月14日にワンマンをやっていたキュウソネコカミとはやたらライヴがカブる」と次々に話題をザッピングしながら、ここでもたっぷり15分。「簡潔にまとめるMCを、日比谷野外音楽堂でやるんで!(笑)」(川谷)という言葉に続いての“キラーボール”から、ライヴは後半戦へと突入していく。

課長と観客の「ドレスを?」「脱げ!」コール&レスポンスから流れ込んだ定番ナンバー“ドレスを脱げ”では、正体不明の男性ダンサーがスーツ姿で登場→後に白の全身タイツにチェンジして再登場→曲途中で何も言わず退場、フロアにどよめきが広がる。「さっきの人どこ行った? 俺、探してくるわ」と袖に引っ込んだ川谷が連れてきたそのダンサーはなんと、さっき話題に上ったばかりのキュウソネコカミ・ヤマサキ セイヤ! 「MC長すぎやで!」「なんぼ話すねん! 講演会か!」とヤマサキに突っ込まれると、「ひとつ言いたいのはね……ドンキホーテは……」とキュウソの“DQNなりたい、40代で死にたい”のフレーズを振り返す川谷。「ドンキホーテは貴様らのたまり場ではないぞ!」のヤマサキのシャウトをきっかけに、ゲス乙女。が“DQNなりたい、40代で死にたい”の演奏を始め、♪ヤンキーこわい〜のシンガロングが巻き起こったところで、再び“ドレスを脱げ”に戻って締めてみせる。至上の演奏の途中にゲストも曲ネタも盛り込みながら、一歩また一歩と熱狂の果てへオーディエンスを導いていく。最高のエンタテインメントだ。

退場するヤマサキとともに「ふたりで反省会しよう」と言ってステージを去った川谷、課長の「みんな、餅は食べたいか!」コールに続いてウサギの着ぐるみ姿で登場して“餅ガール”へ! ほな・いこかのタイトなビートが疾駆する中、オーディエンスの頭上に餅が舞ったところで、「狂騒と書いてポップと読む」的なBLURへのオマージュ“song3”、いこか嬢の「ゲスの4箇条」宣誓がさらなる熱気を呼んだ“ホワイトワルツ”、さらに“スレッドダンス”を畳み掛けて本編終了。アンコールでは「『シングルが4月に出る』っていうことだけしか言ってなかったんですけど、4月22日に出ます! タイトルは『私以外私じゃないの』」という紹介とともに、そのニュー・シングル曲“私以外私じゃないの”を披露。幾重にも展開されるギター/ベース/キーボードの激速フレーズが、極彩色の快楽を次から次へと塗り重ねてくるような、ゲス新次元を明確に感じさせる楽曲だった。最後は「みなさん、ゲスの極み乙女。と一緒に遊びませんか!」の川谷のコールとともに“アソビ”で♪パラリラ、パラリラ の一大シンガロングが吹き荒れ、フロア激震のダンス&ジャンプ空間へと雪崩れ込んで大団円! “私以外私じゃないの”や“パラレルスペック(funky ver.)”など4曲を収録したシングル『私以外私じゃないの』を引っ提げての全国ワンマン・ツアー「私以外ゲスじゃないの」は5月10日・11日の北海道・Zepp Sapporo公演からスタート。2014年のシーンを爽快にかき回してくれたゲスの極み乙女。は、まだまだこれからが面白い!ということをリアルに実証する、珠玉のツアー・ファイナルだった。(高橋智樹)

■セットリスト

01.猟奇的なキスを私にして
02.デジタルモグラ
03.パラレルスペック
04.サカナの心
05.星降る夜に花束を
06.ノーマルアタマ
07.ラスカ
08.サリーマリー
09.ハツミ
10.ユレルカレル
11.キラーボール
12.ドレスを脱げ
13.餅ガール
14.song3
15.ホワイトワルツ
16.スレッドダンス

(encore)
17.私以外私じゃないの(新曲)
18.アソビ
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