ザ・ストライプス @ 渋谷クラブクアトロ

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セカンド・アルバム『リトル・ヴィクトリーズ』リリース直後に行われた、ザ・ストライプスの一夜限りのプレミア来日公演である。ロッキング・オンでももちろんインタヴューした彼ら(羽鳥のブログ参照)だけれど、どうやら今回の来日では日本テレビの番組で密着企画が入っているようで、オープニングの前説でタレントのマギーが登場、彼女に呼び込まれてバンドが登場した。

相変わらずのサングラス姿のロス、ちょっと男っぽくなったジョシュ、でも基本は1年前からさほど変わっていない4人の姿に大きな歓声があがるも、1曲目“Now She's Gone”でいきなりドライヴする超巨大なグルーヴに「やっぱり違う!激変!」となったファンも多かったのではないか。『リトル・ヴィクトリーズ』で彼らが見せた楽曲のバラエティ&クオリティ的成長は、同時にそれを表現する肉体の成長をも促したものだったことを目の当たりにする興奮だ。続く“What A Shame”は出力&強弱自在なパフォーマンスで、かつての初期衝動一発で直情的なプレイから一転、かつてロックンロールに憧れていた彼らが、今ではロックンロールを乗りこなしているのを強く感じる。

ザ・ストライプス @ 渋谷クラブクアトロ
「昨日リリースされたニュー・アルバムからのナンバーだよ」とジョシュが紹介して“Best Man”、そして出色のプレイだったのが続く“'84”だ。ロスとジョシュがリレーして歌い繋ぐメロディが、サビではユニゾンになってさらにくっきりと浮かび上がってくる。『スナップショット』のナンバーと比較すると、『リトル・ヴィクトリーズ』の新曲はどれも霧が晴れたかのようにクリアな輪郭を持っているのが特徴だ。ロスもギターで参加しての“Cruel Brunette”、そして“I’m The Man”の2曲はそんな『リトル・ヴィクトリーズ』のメロディアスな新局面を象徴するナンバーだ。ロックンロールの純血からスタートしたストライプスのソングライティングが、「ポップ・アルバム」をも作りうるレヴェルに達したことがわかる。

ヒプノティックなガレージからジョシュの渋いギター・ソロへと雪崩れ込む“I Don't Wanna Know ”、エヴァンのドラム回しも圧巻だった“Three Streets”、そして最新シングルの“A Good Night's Sleep And A Cab Fare Home”の中盤3曲は、彼らのプレイヤーとしての熟達を感じさせるパフォーマンスで、特にミッド・テンポの“A Good Night's Sleep And A Cab Fare Home”はインスタント・クラシックとでも呼ぶべき風格だ。

そして、本編最大のピークポイントとなったのが“Scumbag City”だ。『リトル・ヴィクトリーズ』で彼らが到達したソングライティング、メロディとグルーヴとアンサンブルを個別にブラッシュアップした上で合体させるという、スタジオ・ワークの向上なくして成し得なかったその新ソングライティングを象徴するナンバーで、文句なしでストライプスの最新アンセムになっていた。この曲で驚いたのは、ロスに促されてフロアにホッピングが広がっていったこと。アルバム音源を聴いた段階ではまさかこの曲でホッピングやポゴダンスが生まれるとは想像していなかったけれど、やってみるとこれが意外とハマっていて面白かった。

ストロークスの“Someday”のイントロをチャッチャ〜!と軽快にかき鳴らすジョシュは、ギター・ソロにせよ、アンプに足掛けてのブレイクにせよ、ギタリストとしてのパフォーマンスがいちいち様になりつつある。ジョシュやピートに背乗りしながら歌うロスも、ミック・ジャガー的フロントマンの自覚が芽生え始めている。そんな彼らがプレイする“Blue Collar Jane”はもはやヴィンテージ、肩ならしのデモ音源を聴いているような気分になってしまった。無論、そのデモ感もまたストライプスの不変の魅力なのだが。

ザ・ストライプス @ 渋谷クラブクアトロ
事前にもらっていたセットリストではアンコールは予定されていなかったが、鳴り止まぬ手拍子と歓声に押されて再び4人が登場、ラスト・スパートはMC5の“Kick Out the Jams”からのボ・ディドリー“You Can't Judge a Book by the Cover”への必殺カヴァー2連発だ。“You Can't Judge a Book by the Cover”はロスにマイクを向けられたファンによる大合唱になった。改めて、ここ日本の10代の少年少女たちがボ・ディドリーの曲をそらで歌えるきっかけとなったストライプスって、本当にユニークな存在だと思った。

色んな意味で、ストライプスの臨界点を垣間見たライヴだったと言える。彼らが迎えた新局面は、キャパ800人のライヴ・ハウスの許容範囲をいよいよ食み出しつつあるように感じたし、よりスケール・アップした環境での彼らのパフォーマンスを観てみたいと思わせるものだった。11月のスタジオ・コースト公演は、間違いなくストライプスのネクスト・レヴェルを反映した公演になるはずだ。(粉川しの)

1. Now She's Gone
2. What A Shame
3. Best Man
4. '84
5. What The People Don't See
6. Cruel Brunette
7. I’m The Man
8. I Don't Wanna Know
9. Three Streets
10. A Good Night's Sleep And A Cab Fare Home
11. Queen Of The Half Crown
12. Get Into It
13. Mystery Man
14. Hometown Girls
15. Scumbag City
16. Blue Collar Jane
17. Still Gonna Drive You Home
18. I Need To Be Your Only

En1. Kick Out the Jams
En2. You Can't Judge a Book by the Cover
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