cero@Zepp Tokyo

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全国17ヵ所をまわるceroとして過去最長のワンマンツアー「"Obscure Ride" Release Tour」ファイナル。高城晶平(Vo・G・flute)はMCで「ツアー最後の砦が、今日のZepp Tokyo。もちろん初めて(ここに)立つんですが、 個人的な思い出をいうと、ナンバーガールの解散ライヴ(2002年11月28日)ですね。チケットが取れず、ダンボールに『チケットあまりませんか?」と書いて、会場の外に立って。たまたま譲ってもらい見ることができた」と思い出のエピソードを話し「ナンバーガールの解散ライヴの場所で、ついにceroもライヴをやることになりました!」と感慨深げに呼びかけた。3作目『Obscure Ride』を引っさげての東京帰還。チケットは早々にソールドアウトし、呼吸もままならぬほど熱気あふれる会場に、新たなceroサウンドを渇望する人たちが詰めかけた。開演前から、すでに彼らはオーディエンスに祝福されていたのかもしれない。

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フロントに高城、橋本翼(G)、荒内佑(Key)のメンバー3人、後方にサポートの厚海義朗(B)、光永渉(Dr)、あだち麗三郎(Sax・Percussion)、MC.sirafu(Trumpet・Steelpan・Key)、コーラスのSmooth Ace(岡村玄、重住ひろこ)という気心知れた6人が、ジャケットイメージと同じ、薄あかりと濃い影の交錯するステージに登場すると『Obscure Ride』のオープニング曲“C.E.R.O”でスタート。 これまで「Contemporary Exotica Rock Orchestra」=ceroと名乗っていた 彼らが、新たに「Contemporary Eclectic Replica Orchestra」と自身を再解釈したこの曲は、ヒップホップ、ネオソウル、ジャズ、ダブなどブラック系ミュージックに接近し、その要素の折衷(Eclectic)とデフォルメ(Replica)から、新たなビートとメロディの創作を試みる『Obscure Ride』の方法論を予告するもの。演奏はその後、アフロビートと複雑な曲展開をもつ“マイ・ロスト・シティー”、“マウンテン・マウンテン”、新作の“Elephant Ghost”に通底する連続性や、“exotic penguin night”と“Summer Soul”や“ticktack”に共通のゆるやかなグルーヴの親和性など、前2作と新作のリンクや対照関係、またそれゆえ明らかになる差異や批評性をも示す組み合わせで、進行していった。

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橋本作曲の“DRIFTIN’”、“Orphans”の甘くメロウなソウルから、“Roji”、“夜去”の、夜の深みと大人の色気が増していくジャジーでディープな展開に、ゆったり心地よく体を揺らした後、“Contemporary Tokyo Cruise”の懐かしさを誘うボーカルメロディが流れ出すと、この夜のハイライトといえる終盤戦に突入。サビのコーラス=「いかないで、光よ……巻き戻しして」の大合唱となったフロアに、回転するミラーボールの光が多幸感と寂寥感をない交ぜにして降り注ぐ。“Narcolepsy Driver”ではサイケな音像を背景に、あだちがサックス、MC.sirafuがスティールパン、高城がノイズたっぷりのエレキギターで、それぞれソロを取り、バンドの音楽性と演奏力の高さを見せつけた。ブラック路線を宣言した重要曲“Yellow Magus”では、ツアーのためアフロヘアにしたという厚海のランニングベースが軽快にダンスを誘い、フィラデルフィアソウル風の“FALLIN’”では、哀愁漂うメロディの円環が時間感覚を麻痺させ、過去と未来の幻影のなかへわれわれを連れ出していく。本編終了後、ダブルアンコールに応えた新曲“街の報せ”(『Obscure Ride』タワレコ購入特典)まで、2時間を越す圧巻の演奏。これまでエキゾチックな物語性を現実に対置させてきたceroだが、ブラックミュージックをテコに、都市の人々の夢や記憶、孤独や懐かしさを曲のなかに明滅させる新たな手法を手にした、そんな鮮烈な印象の残るライヴだった。(岸田智)

●セットリスト

01.C.E.R.O
02.マイ・ロスト・シティー
03.Summer Soul
04.ticktack
05.Elephant Ghost
06.exotic penguin night
07.マウンテン・マウンテン
08.DRIFTIN’
09.Orphans
10.Roji
11.夜去
12.大停電の夜に
13.Contemporary Tokyo Cruise
14.Narcolepsy Driver
15.Wayang Park Banquet
16.Yellow Magus
17.FALLIN’

(encore1)
18. さん!
19. あとがきにかえて

(encore2)
20. 街の報せ
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