pic by 山川哲矢「広いな、幕張! ただし――悪いけど今日は、ここをライヴハウスだと思ってやらしていただきます! 騒ぎ倒せるか!! 今年一番騒ぎまくろうぜ!!」。12月後半とは思えないようなむせ返るような熱気を受けて叫び上げる川上洋平(Vo・G)の言葉に、幕張メッセ満場・2万3千人のオーディエンスから沸き起こる怒濤の大歓声! 10月9日から足掛け3ヵ月にわたって開催されてきた、[Alexandros]の全国ワンマンツアー「TOUR 2015“ご馳走にありつかせて頂きます”」。11月の仙台公演の延期(1月に振替公演開催)はありつつも、いよいよ辿り着いた万感のツアーファイナル。最高のバンドにしか描き出せないロックの絶景が、この日の幕張メッセには確かに広がっていた。
pic by 河本悠貴活動の節目ごとに開催されるスペシャルライヴ「Premium V.I.P. Party」やイベント/フェスなど積極的にライヴ活動を展開してきた[Alexandros]だが、ワンマンツアーの開催としては、バンド改名発表の日本武道館公演を含む「We Don't Learn Anything Tour 2013-2014」(2013年9月〜2014年7月)以来。ということで、開演前からはちきれんばかりの期待感にあふれていた幕張メッセ。京葉線の運転見合わせの影響で開演が30分押しとなったことも、そんな会場のテンションをさらに熱くかき立てていた。
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pic by 河本悠貴そして――「ALXD」の巨大なロゴが輝く舞台に、川上洋平/白井眞輝(G)/磯部寛之(B・Cho)/庄村聡泰(Dr)とサポートキーボード:ROSEが登場、ライヴ冒頭からいきなり“ワタリドリ”炸裂! 磯部&庄村の躍動感あふれるビートと、白井の凛としたギターサウンドが編み上げる途方もないスケールの高揚の風景を、アグレッシヴなハイトーンでぐいぐいと歓喜の果てへリードする川上。舞台前方の花道に進み出て熱唱する川上の姿に、メッセの巨大な空間は開幕早々からクライマックス級のジャンプとシンガロングで満たされていく。
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pic by 河本悠貴年明けの振替公演開催が控えているため、セットリストの全掲載はここでは割愛させていただくが、“Boo!”“ワンテンポ遅れたMonster ain't dead”などメジャー1stアルバム『ALXD』の楽曲群が、すでに揺るぎないロックアンセムとして深く強く共有されていることを、この日のライヴの狂騒感と多幸感は雄弁に物語っていた。そんな『ALXD』曲を軸とした流れに、歴代キラーナンバーの数々がさらなる輝きと熱量を注ぎ込み、会場の熱気と歓喜を刻一刻と高めていく。
pic by 河本悠貴さらに、「このツアーは全箇所、レアな曲をかなり組み込むことができてます」という川上の言葉通り、B面曲/レア曲まで惜しげなく披露。「こんなでかい会場に鳴り響くとは、『この子』も思ってなかっただろうから、この曲も緊張してると思うんで(笑)。みなさん、あたたかく迎えてあげてください!」と川上は曲紹介のMCで話していたが、最新楽曲も初期曲も含めすべての歌と音が、この規模の大空間で鳴り渡ることを最初から必然として運命づけられていたのでは?とすら思わせる名演だった。
pic by 高田梓「後ろ、もうちょっと騒げんじゃねえかな? 前に勝とうぜ!」と後方のオーディエンスを煽り倒し、一拍遅れで押し寄せる大歓声を全身で浴びながら、「……これはね、リハーサルではできないやつです!」と満足げな笑顔を見せる川上。「もっと自由になれますか! 今日だけは人間捨てれますか!(満場の歓声)……ほんとに?(笑)」と呼びかけつつ、「犬になれますか!」と“Dog 3”に流れ込むなど、メンバーと2万3千人の観客との間にでっかいコミュニケーションを生み出していたこの日のステージ。「冒頭、間に合わなかった人いますか?……ちらほらいるな」と川上が“ワタリドリ”を弾き語りで披露してみせたシーンも、バンドとファンの間の肩肘張らない関係性を象徴する名場面だった。
ライヴ中には「しばらくやってなかった伝説のパーティーを、来年開こうと思います!」と、2016年6月に「Premium V.I.P. Party」を大阪城ホールで開催することを発表。「幕張もそうですけど、武道館も、Zeppも、AXも、クアトロ、シェルター……一個一個、うちらはステップを踏んでるなあって」と川上が語る。「我々と同じくらいの世代のバンドがZeppをやってる時に我々がAXで、『ああ、まだかよ』って思ってたけど。それも、まだ自分たちがそこに行くのに本当に相応しいバンドになるために、もっともっとやんなきゃいけないことあるよね、って話した結果だったんです」――ひたむきにロックの高みを目指しながら、あくまで着実に歩み続けてきた[Alexandros]。彼らの足跡を振り返る言葉が、会場の隅々にまで広がっていく。「この幕張も、超満員でやらしていただいてるんですけど、本当に光栄なことだと思っています。ありがとうございます!」。高らかな拍手喝采が巻き起こる。
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pic by 山川哲矢Wアンコールを含め約3時間に及んだ渾身のアクト。“Oblivion”や“Coming Summer”では「ALXD」のロゴが左右に割れ、舞台後方に8人編成のストリングスセクションが登場、清冽なバンドアンサンブルを華麗に彩っていく。“Run Away”で呼び起こしたひときわ大きなジャンプとシンガロングも、“can't explain”の逞しいロックの肉体性も、[Alexandros]の力強さをダイレクトに伝えるものだった。「嬉しいね。幕張のド真ん中におります!」と会場中央に設置されたセンターステージに移動して演奏した雄大なロックバラード“Adventure”が、満場のコール&レスポンスとともに熱気を震わせていった。
pic by 河本悠貴そんなライヴの中でも、特に強烈な爆発力を発揮していたのが、最新シングル曲“Girl A”だった。レーザー光線飛び交う中、インダストリアル&ラウドな音の質感と川上の絶唱、ロックのその先へと疾駆する魂の加速度が、割れんばかりのシンガロングと渾然一体となって、巨大な祝祭感を噴き上がらせていく――彼らの「最進化形」の強度と訴求力を証明する決定的瞬間だった。そして、「今日いい日すぎて、スペシャルなプレゼントを用意してきました!」と披露したのは、タイトルも歌詞も構成も決まっていないという新曲。晴れやかな7拍子の楽曲を、ストリングスセクションと共に壮麗に響かせてみせたその姿からは、さらに前へ先へとロックを探求する冒険心が濃密に滲んでいた。
すべての音が止んだ後、オフマイクで「愛してるぜ幕張!」と声の限りに叫び上げる川上に、さらなる歓声が降り注いでいった。[Alexandros]史上最大規模のワンマンライヴだが、終わった瞬間に「もっと大きな場所で彼らの音を聴きたい!」と思わせる、堂々のロックアクトだった。そして、[Alexandros]は1月の振替公演に先駆けて12月29日、「COUNTDOWN JAPAN 15/16」にEARTH STAGEのヘッドライナーとして登場!(高橋智樹)