手に手に稲穂を持ち、笑顔で会場へと入っていく人たち。入口には満員御礼の貼り紙。事情を知らない人が見たら、今日はいったい何の興業が? と疑問に思ったことだろう。「レキシツアー IKEMAX THEATER」東京公演の会場として両国国技館が発表されたとき、いまレキシ以上に国技館でのライヴが似合うアーティストもいないだろうと思った。そして実際、その予想を上回るほどのハマりっぷりだった。ツアータイトルからもわかるように、今回のライヴは「映画」がテーマ。随所に映画のテーマソングやヒット曲を織り交ぜ、自由自在に進行していく。まさにライヴ自体が「娯楽大作」。
客電が消え、上から降りてきたスクリーンでは、「IKEMAX THEATER」のオープニング映像が映し出される。「IKE.T.」「イケタニック」「池街diary」そして「NO MORE 稲穂泥棒」まで、レキシのメンバーたちがヒット映画を予告風ダイジェストでなんともゆるく味わい深く再現。のっけから会場は大爆笑。いったい今日はどんなライヴを魅せてくれるのか。
中央に設置された正方形のステージには、さらに一段高い土俵のような円形ステージがあり、観客は四方をとり囲むように、360度全方向から視線を注ぐ形。「さあ、Shakeしていくよー!」と”姫君Shake!”からライヴはスタート。国技館にミラーボール。2階席までシンガロングで初っぱなからクライマックス級の盛り上がり。曲途中では「さっそくだけど映画ぶっこんでくよー!」と、「プリティ・ウーマン」のテーマをはさむ。続いて「来年の大河は『真田丸』。その主題歌に…たぶん選ばれる」とあり得ない嘘をつき、”真田記念日”へ。「もっと真田ちょうだい!」と客席からのレスポンスを促すと、「野菜にドレッシングかけて食べるやつは?」「サラダー!」「海とか川の中を泳ぐ生き物は?」「サカナー!」、そして「さだだー!」「尼だー!」など、愉快な脱線をしながら今回も客席参加型のエンターテイメントを繰り広げていく。
それにしても、全方向に観客がいるため、池ちゃんの動きもたぶんいつもの4倍。どの方向にも平等に顔が向くよう、くるくるとまわりながら歌う、しゃべる。全員が楽しめるようにという優しさなのだと思うと、本当にこの人のエンターテイナーぶりには恐れ入る。それだけではない。このスペシャルな会場では、基本的にバンドメンバーは土俵ステージを取り囲むように、中央にいる池ちゃんを見ながらの演奏。そのせいか、これほどの大会場なのに、メンバーたちのジャムセッションを見ているような親密感があって、いつにも増して濃密なグルーヴ感を生み出していた。”ペリーダンシング””salt & stone”、さらに”SHIKIBU”では、会場の床が揺れる揺れる。
そして、今回の目玉のひとつがアンコールで上映(?)された、スペシャル映像「ミッション稲ポッシブル」である。なぜかR2-D2、C-3PO、キル・ビル(のユマ・サーマン)など、ハリウッド映画の人気キャラに脈絡なく扮したメンバーたちが、このツアーのために名(迷)演技を披露。このグダグダ感を逆手にとった物語には、サプライズな出演者もあり、最後まで笑いどころが満載! お腹痛い(笑)。『ボディガード』のホイットニー・ヒューストンに扮した池ちゃんをはじめ、メンバー全員がその映像での扮装に着替えてのアンコールは、もちろん”狩りから稲作へ”。会場中で稲穂が揺れて、ライヴは大団円。
終わってみれば、3時間弱のステージなのにリクエスト曲含め演奏曲はわずか14曲。しかし合間に『フラッシュダンス』『ゴッドファーザー』『ゴーストバスターズ』『スタンド・バイ・ミー』『戦場のメリークリスマス』……数えきれないほどのメジャーな映画音楽を散りばめながら、たっぷりと極上のダンスミュージックで踊らせてくれた。1万人の観客、誰ひとりとして置いていかれることのない最高のエンターテイメント。今宵、両国国技館はレキシの聖地となった。(杉浦美恵)
●セットリスト
01.姫君Shake!
02.真田記念日
03.キャッチミー岡っ引きさん
04.ペリーダンシング
05.salt & stone
06.SHIKIBU
07.憲法セブンティーン
08.リクエスト曲(takeda’、アケチノキモチ、妹子なぅ、LOVE弁慶)
09.年貢 for you
10.きらきら武士
(encore)
11.狩りから稲作へ