SPECIAL OTHERS@豊洲PIT

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昨年10月に発売された最新6thアルバム『WINDOW』のリリースツアーであり、SPECIAL OTHERS自身にとってはメジャーデビュー10周年の記念ツアーでもある「SPECIAL OTHERS QUTIMA Ver.20 ~10th Anniversary~『WINDOW』Release Tour 2015-2016」もいよいよセミファイナル。スタンディング形式のライヴハウスとしては最大級の会場であるここ東京・豊洲PITを、その緻密でダイナミックなサウンドと濃密な祝祭感で満たしてみせた、珠玉のアクトだった。

SPECIAL OTHERS@豊洲PIT
2部構成の本編で各セットの幕開けを飾った“Marimba Session”“Celesta Session”をはじめ、“WINDOW”“neon”など最新作『WINDOW』の楽曲を軸にライヴを展開してみせた宮原"TOYIN"良太(Dr)/又吉"SEGUN"優也(B)/柳下"DAYO"武史(G)/芹澤"REMI"優真(Key)の4人。“Marimba Session”で芹澤&宮原が連弾するマリンバの澄んだ音色に続き、しなやかな5拍子を刻む“I'LL BE BACK”のアンサンブルが目映い高揚の頂へと昇り詰め、“WINDOW”のリフとグルーヴが会場狭しと躍動する――といった「1st SET」のライヴ運びが、これまでのスペアザワールドよりも格段に自由闊達な音世界への扉を開け放っていく。

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インスト主体のジャムバンドというスタイルながら、“Wait for The Sun”では高らかなシンガロングとクラップを呼び起こすなど、メッセージ性や意味性を越えた次元での音楽の生命力越しにオーディエンスと響き合い高まり合っていく……というSPECIAL OTHERSの表現が、この日のライヴではより開放的に、かつ力強く結晶していた。単に「心地好く音楽を鳴らす」という段階を遥かに超越し、己の音像とビートをスリリングに進化させると同時に「さらなる心地好さのために鳴るべきではない音とリズム」を削ぎ落とした結果として、彼らはここに辿り着いたに違いない――と思わせるに十分すぎる包容力に満ちたサウンドスケープが、そこには確かに広がっていた。

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“neon”で1st SETを締め括り、「2nd SETも楽しみにしててください!」と宮原が呼びかけるまでMCもなし。演奏と演奏の合間の息抜きにセッションを繰り広げるという、まさに全身でその音世界を浴びまくる時間だった。“Celesta Session”から流れ込んだ2nd SETも『WINDOW』モード全開! “SPE TRAIN”の加速感が、エレピ/ギター/ベースのユニゾンが、フロアの熱気をなおも煽りまくっていく。そして、ジャズとスカとポップスが手に手をとって踊り回るような“Good Luck”の豊潤な多幸感に、会場のヴァイブはさらに熱く濃く高まる。

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終盤には芹澤のエレピのイントロから“AIMS”へ突入! 大歓声が巻き起こり、観客が思い思いに踊り回り、晴れやかなクラップを響かせたところで、「どうもありがとうございます! ジュリアナ東京!」とイケイケDJ風に語りかける宮原に、「あれだね、『フーッ!』ってちゃんと言えた人は、だいたい年齢がわかりますね(笑)」と芹澤が続ける。さらに「バッチグーじゃない?」「ナウくない?」「ぶっとびー!」と口々にバブル時代のキーワードを連射したところで、「……そんな90年代の幼少期を乗り越えて、我々はこの豊洲PITまで来たわけですよ!」と芹澤。熱い拍手喝采が沸き起こる。「ツアーも残すところわずかでございます。寂しいです! これからも、楽しいことをいっぱい続けるんで。ぜひとも応援してください、ジュリアナ東京ーっ!」という宮原のコールとともに披露した本編最後の楽曲は、『WINDOW』のオープニングナンバー“LIGHT”。エレピのアルペジオが美しく広がり、6+5=11拍子のパートの先に鮮烈に輝く音風景を描き出していく……『WINDOW』に焼き込んだ自身の進化と充実感を、どこまでも伸びやかなアンサンブルとして提示してみせた、至上のステージだった。

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アンコールで再び舞台に登場した4人、又吉の「美容師の“カッティングハイ”のせいで髪を切られすぎた」という話をきっかけに幾重にも脱線を繰り返すリラックスぶりに、ついには芹澤が「笑笑でみんなでメシ食ってんじゃないんだよ!(笑)」とツッコミを入れる一幕も。「いろいろと驚きが待ってるんで。みなさんが楽しいと思うようなことを、たくさん用意してるんで」と告げる宮原。「10周年ということで、僕たち走りますので! カンパーイ!」と物販のビアグラス&ノンアルコールビールで乾杯する柳下。爽快な熱演の最後を飾ったのは“BEN”だった。芹澤のオルガンサウンドとファンキーなビートが絡み合い、丹念に編み上げられたフレーズとリズムが真っ白にスパークするようなエネルギーを放って――終了。4人で手を取り合って一礼する姿に、ひときわ大きな拍手喝采が降り注いでいった。「卓越」とか「円熟」といった言葉では到底言い表せない、音楽の理想郷のような一夜だった。(高橋智樹)

●セットリスト

[1st SET]
01.Marimba Session
02.I'LL BE BACK
03.WINDOW
04.Wait for The Sun
05.neon

[2nd SET]
01.Celesta Session
02.SPE TRAIN
03.Good Luck
04.AIMS
05.LIGHT

(encore)
06.BEN
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