「ファイナルということで、こんなにいっぱい集まってくれて、本当にありがとうございます!」という松尾レミ(Vo・G)の言葉通り、ソールドアウトとなった東京・LIQUIDROOMのフロアは後方までぎっしり満員。今年1月にリリースされたミニアルバム『ワイルド・サイドを行け』のリリースツアーとして行われた東名阪2マンツアー「“ワイルド・サイドを行け”ツアー」、avengers in sci-fiをゲストに迎えての名古屋(4/2)・大阪(4/3)公演に続き、plentyとの対バンの形で行われたこの日のツアーファイナルは、古き良きロックのヴァイブを全身に吸い込んで「今」のマインド越しにパワフルに響かせるGLIM SPANKYという音楽のマジックをどこまでも鮮烈に体現するものだった。
先攻はplenty。冒頭から“スローモーションピクチャー”で冷徹なマシンビートとともにミステリアスな歌世界を繰り広げ、同期トラックのホーンサウンドと絡み合いながら“体温”ではメロディアスにメランコリアを編み上げていく。“シャララ”“さよならより、優しいことば”といった最新3rdフルアルバム『いのちのかたち』収録曲も盛り込みつつ、およそ3ピースのロックバンドが描き得る謎と魔法の極致を鳴らすようなアンサンブルを繰り広げていく。
今年1~2月のワンマンツアー「いのちのかたち」を挟んで、RADWIMPS対バンツアー「RADWIMPSの胎盤」への参加(昨年11月:大阪・Zepp Namba)、MAN WITH A MISSIONツアーへのゲスト出演(今年3月:静岡・浜松窓枠)と異種格闘技戦的な対バンに挑んできた彼ら。「今日はGLIM SPANKYさん、呼んでいただいてありがとうございます。楽しんでまいります!」という江沼郁弥(Vo・G)の呼びかけからも、この日の化学変化的な対バンを全身で謳歌していることが窺える。
“待ち合わせの途中”や“枠”、“最近どうなの?”など比較的初期の曲を多く盛り込んだステージを締め括ったのは、1stフルアルバム『plenty』のロックバラード“蒼き日々”。江沼のハイトーンヴォーカルが新田紀彰(B)&中村一太(Dr)のタイトなリズムと一丸となって、満場のフロアを震わせていった。
そしてGLIM SPANKY。リズムセクション=栗原大(B)・かどしゅんたろう(Dr)に加えてgomes(Key)を擁したサポート陣とともにオンステージした松尾レミ&亀本寛貴(G)、いきなり“ワイルド・サイドを行け”から“褒めろよ”“リアル鬼ごっこ”とアッパーなロックナンバーを連射! 熱いクラップがフロア一面に沸き返っていく。自らもギターをかき鳴らしながら、圧倒的なヴァイタリティに満ちたハスキーヴォイスを高らかに響かせていく松尾。切れ味鋭いリフワークも、粘っこくブルージーなギターソロも弾き倒しながら、ロックンロールの野性と躍動感を会場狭しとあふれ返らせていく亀本。ありとあらゆる音楽の手法や技法が出揃った2016年という時代に、ロックの王道という名のワイルド・サイドを迷いなくひた走るようなGLIM SPANKYの存在感は、それ自体が途方もなく痛快なものだ。
ミドルテンポのハードブルース“ダミーロックとブルース”から『ワイルド・サイドを行け』からの“夜明けのフォーク”、さらに“BOYS&GIRLS”へ流れ込んで《ヘイボーイ ヘイガール》のシンガロングを呼び起こしていく。続けて披露したのは、5月リリースの配信シングル『話をしよう/時代のヒーロー』から“時代のヒーロー”。ビートルズ“Get Back”にも通じる自然体なドライヴ感とともに《夢見る馬鹿で居よう 雲を掴みにいこう》と突き上げる熱唱に、会場の熱気は刻一刻と高まっていく。“NEXT ONE”“太陽を目指せ”と再び『ワイルド・サイドを行け』の楽曲を畳み掛けたところで、本編は残すところあと1曲。口々に終わりを惜しむ声が巻き起こったのに応えて、「いいね! こういう、好き勝手言えるライヴはさ(笑)。GLIM SPANKYのライヴは基本的には、好き勝手に楽しんでくれ!っていう」(松尾)、「みんな、飲んでないの? ああ、(満員で)狭いからな。次はもっと、酒飲めるくらいのスペースで……」(亀本)とオーディエンスに語りかけるMCが、ステージとフロアの距離をぐっと近づけていく。
本編のラストを飾ったのは、ふたりがデビュー前からずっと演奏している“大人になったら”。「お客さんがひとりふたり、ゼロ人の頃……下北沢で夜、始発待ちをしてるわけです、電車を逃して。安い居酒屋に行くとか、ずっとシモキタの街を歩き続けるとかね(笑)。そういうことをやってると、いろいろ思うこともあって……『でも、私は音楽をやりたいなあ』と思って」と、曲にこめた想いを語る松尾。「いつまでも私は輝いた瞳に子供の心を持ち続けた人間になりたいなと思って。たぶんみんなもそうだと思う。だから、みんなの曲にしてもらえたら嬉しいなと思います」……そんな言葉とともに、ひときわエモーショナルに歌い上げられた《この世の全ては/大人になったら解るのかい》のフレーズが、強く深く胸の奥底を揺さぶっていった。
アンコールでは「人生で初めてやります(笑)」という松尾のコールから、TVアニメ『境界のRINNE』第2シーズンED曲としてオンエア中の新曲“話をしよう”をライヴ初披露。亀本のスライドギター&松尾のアコギをフィーチャーしたサウンドの中、《声無き声に勇気を》というメッセージをカラッと歌い放つ歌声が、突き抜けるような開放感とともに広がっていく。ラストは“Gypsy”でロックンロールを華麗に咲き誇らせて大団円!
「今年、何回かワンマンライヴをやる予定なんだけど……」と明かしつつ、7月9日には東京キネマ倶楽部でコンセプトワンマンライヴ「Velvet Theater 2016」を開催することを発表していたGLIM SPANKY。その蒼くタフなロックの輪はまだまだ大きくなるに違いない、いやなってほしい!と心から思わせてくれる、充実のステージだった。(高橋智樹)
●セットリスト
plenty
01.スローモーションピクチャー
02.体温
03.シャララ
04.待ち合わせの途中
05.さよならより、優しいことば
06.枠
07.最近どうなの?
08.蒼き日々
GLIM SPANKY
01.ワイルド・サイドを行け
02.褒めろよ
03.リアル鬼ごっこ
04.ダミーロックとブルース
05.夜明けのフォーク
06.BOYS&GIRLS
07.時代のヒーロー
08.NEXT ONE
09.太陽を目指せ
10.大人になったら
En1.話をしよう
En2.Gypsy