all pics by 浜野カズシ「俺たちはお前らと他人だから、お前らの助けが欲しい時に助けらんないかもしんないし、地震があっても力になってやれないかもしんねえけど……みんないろんな想いがあって生きてて、それでも『ライヴハウスに来たら俺たちはひとつだ』って、俺は胸を張って言えるんだ」。むせ返るような熱気に満ちたZepp Tokyo満場のオーディエンスに呼びかけるKj(Vo・G)。さらに続けて「それは夏フェスでもそうだし、野外でも屋内でもそう。でかい/ちっちゃいは関係ない。みんないろいろあるだろう。そんなのはみんな一緒だ。でも、ライヴハウスではみんな仲間だ!」と語る言葉に応えて、雄叫びの如き大歓声が湧き起こっていく――。
初の日本武道館公演を含む「Dragon Ash Tour THE SHOW MUST GO ON」以来約2年ぶりとなる、Dragon Ashのワンマンツアー「Dragon Ash Tour 2016“The Lives”」。新作リリースとは無関係な形で、ライヴハウスを中心とした全8会場という比較的コンパクトな編成で行われているツアーであると同時に、現編成で最小キャパシティとなる石巻BLUE RESISTANCE(4/24)、今年5月を最後に閉館が決定しているZepp Fukuoka(5/4)など、ライヴハウスという空間そのものへの愛情が高純度で凝縮されたツアーでもある。そんなツアーの初日:Zepp Tokyoに集まったファンは当然、そんなバンドの意志に応えるべく、開演前から全身に期待と高揚感をみなぎらせていたのだが、この日のDragon Ashが巻き起こした魂の爆風の如きサウンドと絶唱は、そんなフロア一面の情熱ごと新次元へ導くような強度と包容力に満ちていた。
ツアーはまだ始まったばかりなので、ここではセットリストの全掲載は割愛させていただくが、“Run to the Sun”“The Live feat.KenKen”などもはや完全に血肉化された最新アルバム『THE FACES』の楽曲群と同じくらい“House of Velocity”“Revive”など『HARVEST』(2003年)の楽曲がフィーチャーされていたり、“Snowscape”(2002年シングル『Life goes on』のカップリング)や“Invitation”(1997年の1stシングル『Rainy Day And Day』のカップリング。2ndフルアルバム『Buzz Songs』にも収録)の楽曲が盛り込まれていたり――といった具合に、1stディケイド・オブ・Dragon Ashの楽曲を数多く聴くことのできたアクトだった。
“House of Velocity”でBOTS(DJ)のスクラッチと鉄壁のサポートプレイヤー=KenKen(B)のベースサウンドが妖しく絡み合ったり、今やフェスでもワンマンでも怒濤の祝祭キラーナンバーとして鳴り渡っている“Fantasista”の桜井誠(Dr)・HIROKI(G)・KenKenのミクスチャーロック・アンサンブルがひときわ硬質な手触りと迫力に満ちていたり……若き日の衝動を「今」の強靭に鍛え上がったロックの肉体で轟かせていく展開に、会場は1曲また1曲と濃密な驚きと感激に包まれ、DRI-V(Dance)&ATSUSHI(Dance)の乱舞がそんな熱気をさらに激しく狂騒の彼方へと駆り立てていく。
そして、「新曲を携えてのツアー」と予告されていた通り、この日のステージでは未発表の新曲が2曲披露された。「ゴリゴリの新曲やらしてください!」というKjの言葉とともに、重轟音の疾走感から会場一面のヘドバンの嵐を巻き起こした“Head bang”。キッズとの連帯感を掲げた冒頭のMCからそのままソリッドなサウンドスケープへと流れ込み、コーラスパートでは初披露とは思えないほどの歌声を呼び起こしていた“circle”。バンドの最高傑作『THE FACES』から2年を経て、Dragon Ashが途方もない突破力に満ちたロックの塊を作り上げていることが明快に伝わってきて、思わず胸躍らずにいられなかった。
全編にわたって汗だくのキッズを「飛び跳ねろぃ!」とハイジャンプに誘い、割れんばかりのシンガロングを「聴こえねえぞ!」と煽り、次々に舞台を目指すクラウドサーファーと熱く拳を合わせていたKj。「募金箱を置いとくから。みんな知り合いとかもいるだろうし、ちょっとでも力になりてえなと思って」と、九州地方の地震災害への募金を呼びかけ、「九州がファイナルだからさ、そこで直接渡せるから。俺たち音楽好きのちょっとの力が、全部回って大きくなってさ、誰かひとりでも笑わせられたら最高じゃん?」と語っていたKjの姿は、ロックを通じた「連帯」の在り方を誰よりもリアルに体現していた。「Dragon Ash Tour 2016 "The Lives"」、次回公演は4/22:福島・いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場にて!(高橋智樹)