「ありがたいことに、お客さんたくさん入って頂いているので、具合悪くなったりした人いたら、すーぐあたしに言ってね!」と、頼もしいフロントウーマンとしての役割を引き受けるHARUNA(Vo・G)。おっとりマイペースなようで、ときに超キュートなガーリーボイス砲として“今夜はピザパーティー”あたりで大活躍するTOMOMI(B・Vo)。細身の体躯からは想像もつかない鋭くパワフルなビートでSCANDALグルーヴの屋台骨を担い、“LOVE”では驚くほど鮮やかなレゲエ/ダブのフィルインも差し込んで観る者を釘付けにするRINA(Dr・Vo)。そして、作曲から衣装に至るまでエキセントリックな芸術家肌を発揮しまくり、鮮烈なギターソロや“ヘブンな気分”でのディープな音響コントロールまでを決めまくるMAMI(G・Vo)。バンドを10年続けるというのはそれだけでも大変なことだが、魅力的な個性が互いを補完しあうSCANDALのパフォーマンスに触れると、それだけでもバンドとしての佇まいの美しさに胸が熱くなるのだ。
MCの場面では、「休みの日には基本的にフランス語を習いに行っています」というRINA(9月からは新たにヨーロッパツアーが予定されている)を手始めに、この日の前日にHARUNA、MAMIは、TOMOMIの運転で身体のメンテナンス(リラクゼーションサロン)に出かけたことも、それぞれ笑い混じりのエピソードとして楽しげに語られる。演奏中にTOMOMIはHARUNAのピックを勝手に投げるもののステージのほぼ真下に落ちてしまったりして、HARUNAが歌いながら吹き出してしまうというご愛嬌の一幕もあった。それも引っくるめて、4人が率先して楽しもうとするヴァイブが、会場全域に伝播してゆくのである。
あらためて、8/21の野外アニバーサリー企画「SCANDAL 10th ANNIVERSARY FESTIVAL『2006-2016』」(@大阪・泉大津フェニックス)について告知するHARUNAは、「ずいぶん長いことバンドをやってきたなあ、と思うんですけど、これからの方がもっと長いと思って、自分たちを信じてやっていきたいと思います」と語っていた。自然体のまま4人の存在感そのものを鳴らし、世界を股にかけて活躍してゆくSCANDALは、今後ますます見逃せないバンドになってゆくだろう。なんとも幸福なロック体験の中で、それを実感する一夜だった。(小池宏和)