ブレインフィーダーからリリースされた大作アルバム『ザ・エピック』(2015)により知名度を高めたカマシのリーダー来日公演は、約1年ぶり。ゆったりとしたデザインのエキゾチックな衣装に身を包み、今春にはカマシを伴って来日していたブランドン・コールマン(Key)、ライアン・ポーター(Tb)、実父リッキー・ワシントン(Fl, Soprano Sax)、女優でもあるジャズ・シンガーのパトリス・ピットマン・キン(Vo)、年明けにリーダー作のリリースを控えたマイルス・モスリー(Ba)、ソウル界の名ドラマーを父に、サンダーキャットを弟に持つロナルド・ブルーナー・ジュニア(Dr)、そしてトニー・オースティンという顔ぶれとともに姿を見せて喝采を浴びる。
父リッキーの、軽やかだが味わい深いソプラノ・サックスが伝う“Leroy and Lanisha”では、マイルスがボウイング奏法を持ち込みくるくると表情を変えるベース・プレイも披露。そして、カマシがライアンのコンポーザーとしての力量を絶賛しながらのナンバー“The Psalmnist”には、都会的に洗練されながらもスリリングなアドリブの主張が込められていった。前線メンバーがステージから履けて、ドラマー2人が競うようにソロを披露する一幕では、演奏の好みで言えばロナルドを推したいものの、まるで機械のように正確無比なプレイで雄弁なシンコペーションを描くトニーの技量には鳥肌が収まらなかった。
そんなカマシのスタイルの極致と思えたのが、今回のステージの最終ナンバーとなった歌モノ“The Rhythm Changes”であった。アルバム音源よりも、さらに華やかでチャーミングな演奏だ。温かみに満ちたブロウを繰り広げるカマシを、父リッキーもニコニコしながら見守っている。そう言えば、『ザ・エピック』収録のスタンダード“Cherokee”に初めて触れたときにも同様の驚きを抱いたが、音楽に触れる幸福の、ひとつの理想と思えるものがそこにはあった。(小池宏和)
01. Askim
02. Leroy and Lanisha
03. The Psalmnist
04. Re Run
05. The Rhythm Changes