まず驚かされたのは、演奏面の圧倒的な充実だ。歯切れのいいギター・カッティングとドラムス。サポートの2人、特にドラムスのベンジャミン・トンプソンの手数の多いドラミングが最高。打ち込みと生演奏のバランスが素晴らしい。ダンサブルでテンポの速い四つ打ちでぐいぐい観客を乗せていくのは、ちょっと最近の日本の若いバンドに共通するものがあるが、TDCCの演奏はバネが2つも3つも違う感じで、下半身を直撃する抜群のグルーヴが否応なく体を動かす。バンド・サウンドの充実によるグルーヴの旨みが以前のTDCCとは違うところで、サマソニ後に世界各地を旅してまわった成果がはっきり出ている。
最新作『ゲームショウ』のツアーの割にはファーストの『ツーリスト・ヒストリー』からもっとも多く演奏されたのはちょっと驚いたが、ファン・サービスというより、現在バンドの持てる最良のものを出し惜しみなく提供しようとする誠実さの表れとみた。ショウの終盤“I Can Talk”あたりの盛り上がりにはぐっとくるものがあった。
客の入りはやや物足りなかったし、新作のチャート・アクションも前作に比べればもうひとつだ。だがバンドは間違いなく前進・進化している。このツアーで世界中を回り、一回りも二回りも大きくなって僕たちの前に戻ってきてくれるに違いない。(小野島大)