ザ・フージアーズ @ 渋谷O-EAST

愛すべきバンドである。このバンドのチャーミングさが存分に発揮されたライブだった。

ザ・フージアーズは、イギリスはレディング発の3人組。07年発売の1stシングル“ウォーリード・アバウト・レイ”でいきなり全英5位に、デビュー・アルバム『ザ・トリック・トゥ・ライフ』は全英チャートで初登場1位を獲得、という人気新人バンドだ。これまで日本で招待制のショウケース・ライブを行ったりサマーソニックに出演しているが、単独日本ツアーは今回が初となる。

PVでアメコミ・ヒーローになったり、サマーソニックではスパイダーマンのタイツ姿で登場したりと、オーディエンスをあっと言わせるコスチュームでもおなじみの彼ら。今回はピカピカ光る電飾スーツで登場。やっぱり笑わせてくれた! 

“ザ・トリック・トゥ・ライフ”から幕開けたステージ。彼らのライブを観るのは、実は初めて。ヴォーカルのアーウィンの歌声が、CDで聴いていた以上に艶のあるファルセット。ジェフ・バックリーやレディオヘッド初期の頃のトム・ヨークなどにも通じる、繊細で色気のある歌声を自在に操っている。特に“Clinging On For Life”“Run Rubbit Run”“Everything Goes Dark”といったメロウな曲では、そのエモーショナルな歌声が、はっとさせられるほど美しく場内に響き亘っていた。ただし、もちろんのこと、ザ・フージアーズは、例に挙げたようなアーティスト達のフォロワー・バンドではない。

彼ら自身、自分達のサウンドのことを“オッド・ポップ(奇妙なポップ)”と呼んでいるが、まさにそのとおり。歴代の英国ポップ/ロックの旨味をぐっと凝縮させたような楽曲の良さもことながら、独自のユーモアと哀愁が抗いがたい魅力を生んでいるのだ。ともすると、ただのコミック・バンドと勘違いされ、リスナーが限定されてしまう可能性もある。ある意味リスキーなことをやってはいるのだが、最終的に実力がちゃんと評価され、セールスにも結びついていっているところに英シーンの懐の深さを感じる。

ライブでは、あのユーモアも表面的なものではなく、メンバーそれぞれの人柄と結びついているんだ、ということが一目瞭然。とにかく動きも表情も愛嬌たっぷりで、親しみやすさ満点。フロアからはたびたび、アーウィン(ベン・スティラー似)に向けて「カワイイ!」の声が上がっていたけど、納得。

ここ日本でも熱心なファン・ベースを築きつつあるようで、“ウォーリード・アバウト・レイ”や“グッバイ・ミスターA”といったアップ・テンポな曲ではシンガロングが巻き起こっていた。新曲が2曲披露されたが、さっそくフロアからいい反応をもらっていて、メンバーもちょっと嬉しそう。アンコールでみせたアーウィンの弾き語り“Money To Be Made”もなかなか味わい深いものだった。(森田美喜子)

1.The Trick To Life
2.Worst Case Scenario
3.Clinging On For Life
4.Run Rabbit Run
5.Sister Sister
6.Cops and Rovvers
7.Everything Goes Dark
8.Killer
9.A Sadness Runs Through Him
10.Sarajevo
11.Fire
12.Worried About Ray

アンコール
13.Money To Be Made
14.Good Bye Mr.A
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