フォーメーション @ 原宿アストロホール

英ウィンブルドン出身、ロンドンを拠点に活動する要注目のニューカマーであるフォーメーション。デビュー・アルバム『ルック・アット・ザ・パワフル・ピープル』を引っさげての彼らの初来日公演は、いくつものかたちになる前の可能性がバンバン飛び交う光景を目撃する、そんなプリミティブな興奮に満ちた体験となった。

現UKのインディ・ロックの枠から大きくはみ出し、多ジャンルのミクスチャーによって生み出されるグルーヴを信条とするフォーメーションは、後期のザ・クラッシュやパブリック・エナミー、LCDサウンドシステムやカサビアンらを引き合いに出して語られているバンドだが、今回のライブで明らかになったのは、彼らは前述のどんなアーティストの後継者にもなりうるし、どんなアーティストの路線からも外れて好きな方向に行くこともできる、そんなふたつのポテンシャルだった。

フォーメーション @ 原宿アストロホール - pic by Kazumichi Kokeipic by Kazumichi Kokei
スラップベースを駆使した攻撃型のファンクもあれば、“Pleasure”のようにアシッド・ジャズ的な間と余裕を感じさせるファンクもある。
かと思えばウィル(Vo)がブチ叩くカウベルの超原始的な催眠効果も効いているアフロビートや、“Powerful People”を筆頭にスリリングなダブもあり、シンプルな4つ打ちとシンセのコンビネーションのハウスとヒップホップをミックスさせたナンバーもある。

曲毎に、いや、曲中でも忙しなくジャンルをスイッチングし、それらを片っ端から果敢に乗りこなしていく筋肉質なパフォーマンスだ。

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ちなみにステージ上の5人のポジションは少しユニークで、上手にドラムス、下手に2台のキーボード、中央奥にベースが陣取っている。つまりセンターのウィルを見守り取り囲むように4人が半円形を成しているのだ。

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特に向かい合うかたちになったドラムとキーボード、連獅子の毛振りのようにドレッドヘアを振り回しながら全身を大きく使ってブチ叩くカイ(Dr)と、坊主頭&クールな表情で淡々と、しかし忙しなく多彩な音色とビートを弾き出すマット(Key)のコントラストは最高に絵になる。

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ファンク&アフロなナンバーが続いたオープニングから一転、いきなりエイト・ビートで思いっきりパンクな縦ノリを生じさせたのが“Back Then”だ。

そう、彼らのグルーヴは横に広がる楕円形オンリーというわけではなくて縦横無尽、とにかく身体を躍らせ滾らせるものであるならなんでも歓迎する雑食のマナーだ。

演奏自体はまだまだ荒削りだが、そのとことんフィジカルなグルーヴが天井が低く狭いアストロ・ホールのあちこちに激突し、壁をぶち破りそうな興奮状態を生んでいくのだ。

ただし、勢いと野生の肉体性の一辺倒で押し切るタイプかと思いきや、意外にも知性と計算を感じさせる面もあり、そのクールな側面を仕切っていたのがマットのキーボードだった。

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彼のプレイはメロディを担い、ギターがいない変則編成のフォーメーションにおけるギター・リフとコード弾きも担い、もちろんベースと共にビートも弾き出す。EDM一派のシンセ使いにも勝るとも劣らない彼のマルチな活躍がフォーメーションのサウンドの多様性の核となっている。

シンプルなピアノリフとフィルターかけまくった分厚いレイヤーのコントラストから、後半はほとんどサッドコアと呼ぶべき域に到達していた“Blood Red Hand”は、まさにこのバンドのキーボードの真骨頂と呼ぶべきナンバーだろう。やはりフォーメーションの軸は、ウィルとマットの双子のリットソン兄弟ということなのかもしれない。

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また、ポリティカル・メッセージを多分に含んだ歌詞や一連のヴィジュアル、ザ・ストリーツのマイク・スキナーが監督を務めた“Powerful People”や、暴力と流血の“A Friend”のミュージック・ビデオの印象から、「アンダーグラウンドの怒れる若者たち」というティピカルなイメージを持っていたのだが、実際の彼らは拍子抜けするぐらいフレンドリーで笑顔を絶やさないチャーミングな佇まいを魅力とした人たちだった。

ウィルがどんなにシャウトしようとも、そのシャウトがMCで話をしている時の彼の声質やトーンとほぼ変わらないのも驚いたが(ステージ・アクションやボーカル・スタイルはザック・デ・ラ・ロッチャを彷彿させるにもかかわらず)、 これもまた彼らの音楽とメッセージの当事者性、リアリティの土台を成しているものだと思うし、革新性の強迫観念に縛られない新世代ならではの軽やかなアティチュードを感じさせるものだった。

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本編ラストはキャッチーな歌メロとアグレッシヴなビートが融合したエレクトロポップ・チューンとして、現時点でもっともカッチリしたかたちを持つ“A Friend”、そしてアンコールは現時点で最も不確実で伸びしろだらけの“Ring”であるという、未来へ期待を高めていくエンディングも爽快だった。

約45分とコンパクトなセットだったが、フォーメーションが彼らの「フォーメーション」を確立する前の姿を目撃できたことを、1年後、5年後と反芻し、語り継ぎたくなるような一夜だった。(粉川しの)

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〈SETLIST〉
Drugs
Hangin
Control
Back Then
Powerful People
Pleasure
Waves
Blood Red Hand
A Friend
Ring(アンコール)
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