現UKのインディ・ロックの枠から大きくはみ出し、多ジャンルのミクスチャーによって生み出されるグルーヴを信条とするフォーメーションは、後期のザ・クラッシュやパブリック・エナミー、LCDサウンドシステムやカサビアンらを引き合いに出して語られているバンドだが、今回のライブで明らかになったのは、彼らは前述のどんなアーティストの後継者にもなりうるし、どんなアーティストの路線からも外れて好きな方向に行くこともできる、そんなふたつのポテンシャルだった。
かと思えばウィル(Vo)がブチ叩くカウベルの超原始的な催眠効果も効いているアフロビートや、“Powerful People”を筆頭にスリリングなダブもあり、シンプルな4つ打ちとシンセのコンビネーションのハウスとヒップホップをミックスさせたナンバーもある。
曲毎に、いや、曲中でも忙しなくジャンルをスイッチングし、それらを片っ端から果敢に乗りこなしていく筋肉質なパフォーマンスだ。
そう、彼らのグルーヴは横に広がる楕円形オンリーというわけではなくて縦横無尽、とにかく身体を躍らせ滾らせるものであるならなんでも歓迎する雑食のマナーだ。
演奏自体はまだまだ荒削りだが、そのとことんフィジカルなグルーヴが天井が低く狭いアストロ・ホールのあちこちに激突し、壁をぶち破りそうな興奮状態を生んでいくのだ。
ただし、勢いと野生の肉体性の一辺倒で押し切るタイプかと思いきや、意外にも知性と計算を感じさせる面もあり、そのクールな側面を仕切っていたのがマットのキーボードだった。
シンプルなピアノリフとフィルターかけまくった分厚いレイヤーのコントラストから、後半はほとんどサッドコアと呼ぶべき域に到達していた“Blood Red Hand”は、まさにこのバンドのキーボードの真骨頂と呼ぶべきナンバーだろう。やはりフォーメーションの軸は、ウィルとマットの双子のリットソン兄弟ということなのかもしれない。
ウィルがどんなにシャウトしようとも、そのシャウトがMCで話をしている時の彼の声質やトーンとほぼ変わらないのも驚いたが(ステージ・アクションやボーカル・スタイルはザック・デ・ラ・ロッチャを彷彿させるにもかかわらず)、 これもまた彼らの音楽とメッセージの当事者性、リアリティの土台を成しているものだと思うし、革新性の強迫観念に縛られない新世代ならではの軽やかなアティチュードを感じさせるものだった。
約45分とコンパクトなセットだったが、フォーメーションが彼らの「フォーメーション」を確立する前の姿を目撃できたことを、1年後、5年後と反芻し、語り継ぎたくなるような一夜だった。(粉川しの)
Drugs
Hangin
Control
Back Then
Powerful People
Pleasure
Waves
Blood Red Hand
A Friend
Ring(アンコール)