Saucy Dog photo by 白石達也
●セットリスト1. グッバイ
2. ナイトクロージング
3. 新曲
4. 新曲
5. マザーロード
6. 煙
7. Wake
8. 新曲
9. 新曲
10. いつか
昨年5月にリリースされた
Saucy Dogの1stミニアルバム『カントリーロード』のリリース・アンコールツアー「Saucy Dog カントリーロード Encore TOUR 『もっと～東名阪対バンツアー～』」のファイナル公演が、渋谷CLUB QUATTROにて行われた。この日ゲストとして呼ばれた
Halo at 四畳半も、後輩であるSaucy Dogの輝きに負けない真っ直ぐなアクトで会場の空気を熱いものにしていた。
Halo at 四畳半 photo by 白石達也
Saucy Dog photo by 白石達也転換が終わって会場がふっと暗転すると、せとゆいか(Dr・Cho)、秋澤和貴(B)、石原慎也(Vo・G)がひとりずつステージインし、拍手が沸き立つフロアに向かって丁寧にお辞儀をした。そして「お待たせしました！ Saucy Dogです、どうぞよろしく！」との石原の挨拶をきっかけに、「昨日までの弱かった自分に、最低だった自分に…《グッバイバイ》」と言葉を繋げて“グッバイ”で幕を開けた。秋澤が前方に乗り出してクラップを誘引すると、そのまま“ナイトクロージング”へと続け、リズミカルに弦を弾く秋澤と軽快なドラミングを繰り出すせと、ふたりが生み出す心地好いグルーヴに乗せて自由で伸びやかに歌い上げる石原の楽し気な姿にこちらもつられて笑顔になった。この時も思ったが、Saucy Dogの3人はいつどんなステージの上でも、決して肩肘張らず背伸びもせず、驚くほど素のままでステージに立つ。もちろん緊張や不安はあるのだと思うが、決して小さくないクアトロのステージであろうとまるでスタジオでセッションしているかのような和やかさと絶妙な緩さを生み出していて、それはメンバー同士のふとした目配せの瞬間に安心したようにほころぶ3人の様子からも伝わってくる。そしてあのまどろむような空気感はどうにかして作り出せるものではないし、そんな居心地の良さがあるからこそ、オーディエンスもリラックスしてステージだけを観ることができるのだろうなと思う。
Saucy Dog photo by 白石達也この日のライブでは、石原の「今日は、新曲盛りだくさんでいきたいと思います！」との言葉通り新曲が多く披露された。BPMやカラーの違いはあれど、彼らの曲には「言葉を届ける」という絶対的な大前提がしっかりと息づいているなと改めて思える名曲ばかりだった。世界の見知らぬどこかで起こっているような遠い物語を語るのではなく、例えば今日乗った電車の中でふと思ったこと、友人との何気ない会話の中で気になったやりとり、帰り道で思い出した昔の恋愛――そういった誰の身にも覚えがある日常での出来事を、真っ直ぐ、豊かに、優しく言葉にするのが本当に上手いし、何より彼らの曲は「自分が最も伝えたい言葉を、その言葉が最も映えるメロディに乗せて歌う」というもはや当たり前とも言える「歌を唄うこと」の原点に立ち返らせてくれる。奥が深いなぁと心底思うし、作り手としての丁寧さがひしと伝わってくるライブをするバンドだとつくづく思う。
Saucy Dog photo by 白石達也そんな新曲多めのタームを終えると、石原の「みなさん、お正月はいかがお過ごしでしたでしょうか？ お年玉もらいました？」というMCから、オーディエンスへのお年玉的サプライズとして、今年5月から始まる自身初のワンマンツアーが解禁された。これにはフロアも大歓喜で歓声と拍手がなかなか鳴り止まず、その様子を見たメンバーも嬉しそうにしていた。そして石原は、新たなツアーが決まったのは去年1年をスタッフやお客さん含めて沢山の人に支えてもらったお陰だと感謝を述べ、「最後に、そんな僕たちのことをすごく助けてくれた1曲演って帰りたいと思います」と、“いつか”をプレイしてツアーの幕を閉じた。最後に伝えられた「またいつか会えますように」という彼らの願いは、これから先、もっと大きな会場での再会に繋がっていくのだろう。そんな期待と確信を思わせる、素晴らしい夜だった。(峯岸利恵)
photo by 白石達也
