「Vans Warped Tour Japan 2018」、2日目でヘッドライナーを務めたプロフェッツ・オブ・レイジは、ご存知の通り、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの楽器隊3人=トム・モレロ/ティム・コマーフォード/ブラッド・ウィルクが、サイプレス・ヒルのB-リアルとパブリック・エネミーのチャックDという伝説級のラッパーふたり、そしてDJロードと組んだスーパー・バンドだ。
ほとんど反則技のようにさえ思えるメンバー編成だが、一方でレイジのボーカリストだったザック・デ・ラ・ロッチャが不参加である事実について、熱心なファンほど、なんとなくスッキリしない心情を抱いてしまっていたのではないかと思う。というか、筆者自身がそうだった。しかし今回、彼らのライブを実際に目撃し、その音楽を全身で体感したことで、そうしたモヤモヤは完全に吹き飛ばされた。
前日にB-リアルが表参道で購入したという着物を身につけ、6人のメンバーがステージ上に姿を現し、右拳を天高く突き上げる姿を目の当たりにした瞬間、つい笑ってしまいながらも頭の中で何かのスイッチがハジけたことがわかる。すかさず“Testify”のイントロが大音量で打ち鳴らされると、全身に電流が走るような興奮が湧き上がった。
ザックとは声質もスタイルも異なるものの、B-リアルとチャックDのラップはさすがに強力で、有無を言わさぬ説得力。さらに、サイプレスやパブリック・エネミーの代表曲を遠慮なくぶち込んだヒップホップ・コーナーや、クリス・コーネルへの哀悼を示してインストゥルメンタルで演奏されたオーディオスレイヴの“Like a Stone”など、このバンドならではのスペシャルな見どころが繰り広げられていく。ラストは、B-リアルが「危険な時代は危険な歌を呼ぶ。これは世界で最も危険な歌だ」とMCして始まった“Killing In the Name”で、フロアの熱狂は絶頂に達した。
結成後1年以上をかけてツアーを重ね、デビュー・アルバムも作り上げるなどして、新バンドのアイデンティティを鍛え上げてきたことももちろんだが、何より彼らは、過去に築いた偉大なキャリアを、重荷ではなく武器に転換する強かさを持っていたのだと思う。その強さをもたらしたのは「ゴチャゴチャ細けえこと考えてるヒマなんかないぜ」という行動第一主義だろう。それによってプロフェッツは「ザックの不在を、チャックとB-リアルで穴埋めしたもの」ではなく、「レイジとパブリック・エネミーとサイプレス・ヒルを統合した強力な表現」となることができたのだ。トム・モレロ本人も、それに加え「自分にとってはオーディオスレイヴやナイトウォッチマンでのキャリアも含めての集大成なんだ」というようなことを話してくれた。個人的には、10年前のオリジナル・メンバーによる再結成レイジの来日公演よりも、今回の方が凄かったと感じている。
この日はその他に、まもなく4年ぶりの新作を発表するカリフォルニア・パンクのベテラン=ペニーワイズ、衰えぬパーティ野郎ぶりを爆発させたアンドリューW.K.、下ネタ日本語など毎度おなじみの楽しいステージを繰り広げるゼブラヘッド、元スレイヤーの神ドラマーだったデイヴ・ロンバードを迎えてビルドアップに成功したクロスオーバー・スラッシュの重鎮スイサイダル・テンデンシーズなどが熱演。そこに日本代表のTOTALFATやHEY-SMITHらが並び、硬軟とりあわせながら、前日よりもワープド本来のパンク色が強い雰囲気となっていた。
また、トム・モレロがバックアップするザ・ラスト・インターナショナルをはじめ、PassCode、Dizzy Sunfist、LOVEBITES、BAND-MAIDなど多くの女性アーティストたちの活躍が実感できたのも嬉しい。
「Vans Warped Tour Japan」が来年も開催されるのかどうかはわからないが、コテコテのヘヴィメタル・フェスよりも、もう少しバラエティ感を持たせて、ポップ・パンク、ニュー・メタル、ラウド・アイドルなどをうまく組み合わせたイベントが、今後も何かの形で実現してくれることを願っている。(鈴木喜之)
「Vans Warped Tour Japan 2018」1日目のライブレポートは以下。