90年代後半のシーンを制覇したニュー・メタルの双璧である、KOЯNとリンプ・ビズキットをヘッドライナーに迎えて行なわれた「Vans Warped Tour Japan 2018」の第1日目。4年前のノットフェスト・ジャパンにも両者揃って出演したが、スリップノットの看板の下に別日程でエントリーしているよりも、こうして続けて見られた方が、やはり特別な感慨が抱ける。
当日は他にも、海外組のイシューズやオブ・マイス・アンド・メンなどに加え、CrossfaithやMONOEYESといった国内の人気バンド、さらにBiSHのようなアイドル系アクトまで並んだラインナップ。トリ前から場内をしっかり盛り上げたそれらの出演者の多くにとって、90'sオルタナ系のラウド・ミュージックは重要なルーツのひとつだろうし、この枠組は大いにアリだと感じた。実際、ニュー・メタル原体験世代と、より若いオーディエンスがバランスよく大勢つめかけ、会場は大盛況である。
そんな感じで温まりきったフロアを前に姿を現したリンプ・ビズキット。まず嬉しいのは、2012年に解雇されたオリジナル・メンバーのDJリーサルが先ごろ復帰したことだ。リーサルは、いきなりオープニングから、ビースティ・ボーイズとレッド・ツェッペリンをマッシュアップする技を繰り出し、ブランクを感じさせぬ存在感を見せつける。
一方、ベーシストのサム・リヴァースは病欠らしく、代打を務めたのはOkai SistersとしてLAで活躍中の日本人女性Tsuzumi Okaiさんで、リンプのパワフルなサウンドに相応しい、ガツゴツした感触のぶっといベースを鳴らしてくれた。なんとなくセクハラ上司っぽくボーカルのフレッド・ダーストに発言をうながされ、「こんばんは」と彼女が挨拶すると、「何て言ったんだ?」と尋ねるフレッドに、ギタリストのウェス・ボーランドがすかさず「グッド・イブニングって言ったんだよ」と返す一幕も。
そのウェスは、顔の上半分だけ真っ白、あとは真っ黒という扮装に身を包み、例によってメタリカやスレイヤーのフレーズをさらりと弾いたりしつつ、独自のセンスを発揮するプレイで演奏全体を牽引していた。それに負けじとフレッドも、セッティング中の隣のステージにまで姿を現したり、積極的にフロアに飛び込んでいくなどして熱演。
現状、なかなか新作を完成させられないでいるリンプだが、リーサルも戻ってきたことだし、今後ツアーを重ねていくうちに、バンドを再活性化できるだけのポテンシャルは十分に伝わってきた。
そして、いよいよKOЯNが登場。メンバーの脱退/復帰など数多くの困難に見舞われながら、滞ることなくキャリアを更新してきた彼ら。しばらく前にオリジナル・メンバーのヘッドが戻ってからは、バンド史上最も安定した時期に突入したようで、この晩も威風堂々の貫禄を見せた。
ずっと音楽面でトライアルを重ねてきた実績も、ここにきて集大成的な実りをもたらしているように感じられる。最新作からのナンバー“Rotting in Vain”でスタートしたことも現役感を主張していたし、“Make Me Bad”のエンディングでピアノをフィーチャーしたアレンジ(※フェイス・ノー・モアの“Epic”がモチーフになっている印象)を施すなど、バンドが現在進行形であると象徴する瞬間は幾つもあった。
ステージ後方に巨大なスクリーンが設置され、曲ごとに映像を写し出すという、今回の地方公演も含めて過去の来日では無かった演出も新鮮。内容はまずまずといったレベルの出来栄えだったが、今後の彼らのライブにおける表現をいっそう拡大する可能性として注目しておきたい。
フロントマンのジョナサン・デイヴィスの喉も調子がよさそうで、高いレベルのボーカリゼーションを聴かせてくれた。それに応えて大観衆も、“Y'All Want a Single”では「ポクテー」としておなじみの掛け声、“Coming Undone”では途中に挟んだクイーンの“We Will Rock You"などでマイクを向けられた際には大声で反応し、最高潮の盛り上がりを迎えて初日は終了。
もともとVans Warped Tourは、メロディック・パンク系のアーティストを柱としたイメージの強いイベントだったが、ここでは、コテコテのヘヴィメタル系フェスだとイマイチ座りが悪いものの、かつて一時代を築いたレジェンドをヘッドライナーに冠し、そこへニュー・メタルの系譜にある現在のラウド・ミュージック勢をうまくパッケージすることで、新しいコンセプトを提示できていたと思う。(鈴木喜之)
「Vans Warped Tour Japan 2018」2日目のライブレポートは以下。