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    宇宙まお/晴れたら空に豆まいて

    宇宙まお/晴れたら空に豆まいて - All photo by 吉澤 健太All photo by 吉澤 健太

    ●セットリスト
    01. 満月の夜
    02. サボテン
    03. ブルーナ
    04. 向こう岸
    05. エイリアンズ
    06. ヘアカラー (w/SUNNY)
    07. 無限の力 (w/SUNNY)
    08. 夜が明ける (w/SUNNY)
    09. ベッド・シッティング・ルーム (w/SUNNY)
    10. 休みの日 (w/宮田和弥・SUNNY)
    11. うつくしい夜
    12. ランジェリー
    13. くしゃみ
    14. 愛だなんて呼ぶからだ
    (アンコール)
    EC.1 バイバイ (w/SUNNY)
    EC.2 百年の夢


    宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
    シンガーソングライター・宇宙まおが、2017年10月から2ヶ月おきに開催してきたソロ弾き語りワンマン「Wardrobe Songs」。当初予定されていた3回の公演に続き、好評を受けての追加公演である。毎回、異なるテーマに基づいてセットリストが構成されるシリーズライブであり、今回は「Wardrobe Songs –スニーカーとパンプス-」というタイトル。さしずめ、新生活を迎える季節や、大人への成長がテーマに据えられたステージというところだろうか。
    宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
    満場のフロアを前に、「よろしくお願いしまーす」と朗らかな挨拶で登場した宇宙まお。ステージには、これまでとは違いキーボードやグランドピアノも設置されている。まずはアコギとブルースハープを携え、夜に誘い込むように切り出すキャリア初期からのナンバー“満月の夜”だ。自身の呼吸でグルーヴするギターストロークといい、染み渡るブルースハープのフレーズといい、シンプルなサウンドでありながら強く触れる者を引きつける。
    宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
    挨拶を挟み、ストラトやテレキャスとギターをスイッチしながら、“サボテン”や“向こう岸”といった近年の失恋をテーマにした楽曲群へと持ち込むのだが、ただ情緒を溢れ出させるというよりも、移ろいやすい感情や記憶の風景を永遠に刻みつけるソングライティングが際立つ。これが宇宙まおのポップだ。加えて、しっかりと感情を込めながらもメロディの輪郭を明瞭にする、歌声のトーンコントロールが素晴らしい。
    宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
    宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
    メトロノームで柔らかなビートを刻みながらのキリンジのカバー“エイリアンズ”の後、彼女は「ひとりだけで演奏しようというのが、自分に課した試練だった」と一連の弾き語りライブについて語っていたが、まさに今の彼女の歌声は試練を越えた先の新しい表現の境地に達している。ここで、ゲストとしてアナウンスされていた名キーボード奏者・SUNNYを迎え入れ、ソロアーティストとして成長した宇宙まおの歌が、さらに彩り豊かに披露されてゆく。
    宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
    SUNNYのピアノフレーズが転がる“無限の力”は、過去の弾き語りライブでは披露されていなかった楽曲。そもそもはサッカークラブ・水戸ホーリーホックのオフィシャル応援ソングとして力強いバンドアレンジが施されていたが、今回は歌のしなやかさでグイグイと牽引するパフォーマンスになった。この4月から茨城と宮城でレギュラーのラジオ番組がスタートした宇宙まおは、水戸ホーリーホックの選手にも番組に出演してもらうことで、“無限の力”がまたひとつ身近な楽曲に感じられるようになったそうだ。
    宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
    4月11日に配信リリースされたシングル『休みの日』の表題曲は、前回の「Wardrobe Songs vol.3 -休日と白いシャツ-」のテーマに沿って取り上げたJUN SKY WALKER(S)のカバーだ。なお、間もなくデビュー30周年を迎えようとしているジュンスカとは、現在レーベルメイトでもある。離別した恋人たちのそれぞれの立場の歌という意図を込めて“ベッド・シッティング・ルーム(Acoustic Ver.)”を新たに制作し、“休みの日”のカップリングとして収録したと言う。ここでSUNNYのピアノと共に、別れの喪失感を五感でつぶさに捉える“ベッド・シッティング・ルーム”が披露される。
    宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
    そして“休みの日”なのだが、なんとサプライズゲストとして、本家ジュンスカから宮田和弥が登場。どよめくオーディエンスの合間を縫ってフロア後方から進み、ステージに登る。宇宙まおは、宮田のソロライブに赴いて直接、今回の共演を申し出たそうだが、「懐にバンッと入るのがうまいですよね(宮田)」「宮田さんの懐の広さのおかげです(宇宙)」という言葉を経て、いよいよパフォーマンスへ。宇宙まおの1コーラスから宮田にバトンが手渡され、滋味深さを増した歌声が届けられる。宮田から「歌に寄り添う演奏」と評されたSUNNYのキーボード、そして宮田自らのブルースハープも加わり、最後には2人のユニゾンの歌で締め括った。フロアは当然の大喝采である。
    宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
    興奮冷めやらぬまま、ステージは「Wordrobe Songs」で届けられてきた新曲群によって本編フィナーレへと向かった。2日前に完成したという“くしゃみ”は、新生活のテーマに相応しい、遠距離恋愛の歌だ。彼女は、今後の制作過程で新曲のどれかが没になることもありうる、と語っていたが、どの曲も聴いてしまった以上は音源化を熱望せざるを得ない、素晴らしいナンバーになっている。刻一刻と風化する感情と風景に永遠の魔法をかける、優れた記録メディアとしてのポップソング。孤独と戦いながら、宇宙まおはシンガーソングライターとして真に意義深い表現を手にしている。アンコールで披露された“百年の夢”も、その事実を裏付けていた。
    宇宙まお/晴れたら空に豆まいて
    弾き語りワンマンのライブシリーズは、今後4月に神戸と名古屋で、5月には大阪と仙台で、「Wardrobe Songs -彩色ツアー-」として各地公演が行われる。彼女は「宇宙まおの歌を、みんなに染めてもらう」と意気込みを語っていたので、ぜひライブ情報をチェックして、近隣の会場に足を運んで欲しい。(小池宏和)

    終演後ブログ
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