エレファントカシマシ/日比谷野外大音楽堂

エレファントカシマシ/日比谷野外大音楽堂 - All photo by 岡田貴之All photo by 岡田貴之

●セットリスト
(一部)
01.Wake Up
02.Easy Go
03.おはよう こんにちは
04.浮き草
05.上野の山
06.人間って何だ
07.おれのともだち
08.星の砂
09.珍奇男
10.武蔵野
11.神様俺を
12.いつもの顔で
13.さよならパーティー
14.かけだす男
15.Destiny
16.なぜだか、俺は禱ってゐた。
17.ズレてる方がいい
18.オレを生きる
19.RAINBOW
(二部)
20.今宵の月のように
21.笑顔の未来へ
22.友達がいるのさ
23.シグナル
24.悲しみの果て
25.歩いてゆく
26.月の夜
27.旅立ちの朝
28.男は行く
(アンコール)
EN1.星の降るような夜に
EN2.ファイティングマン


「あいにくの雨ですが、気合い入れてやりますんで。よろしくお願いします」――カッパやレインウェアに身を包み、開演前からすでに全身ずぶ濡れのオーディエンスが見渡す限り客席を埋め尽くした中、宮本浩次(Vo・G)の気迫の「開演宣言」に、そして冒頭から放たれたニューアルバムの表題曲“Wake Up”に、日比谷野外大音楽堂は高揚感と緊迫感が渾然一体となった独特の空気感に包まれていく――。

今年は「エレカシ復活の野音」(2013年)以来の東京・大阪2会場での開催となった、エレファントカシマシ恒例の野音公演。6月17日の大阪城野外音楽堂公演は、梅雨の合間の陽光降り注ぐ中で行われたが、6月23日の東京・日比谷野音公演は一転、強い雨が降り続く中で開演を迎えた。しかし、それゆえにこの日の日比谷野音公演は、灼熱の爆走感に満ちた大阪城野音とはまるでベクトルの異なる、鋭利な凄味に満ちた一夜となった。

エレファントカシマシ/日比谷野外大音楽堂
大阪公演と同じく、宮本浩次、石森敏行(G)、高緑成治(B)、冨永義之(Dr)の4人にサポートメンバー=ヒラマミキオ(G)&細海魚(Key)を迎えた6人編成でステージに臨んだエレファントカシマシ。“Wake Up”のダンスビートに収まりきらない宮本の衝動燃え盛る熱唱が、雨粒に冷えた体を芯から奮い立たせていく。そこから立て続けに『Wake Up』から披露した“Easy Go”で曇天を貫くような咆哮を轟かせ、客席一面に拳と歓喜を突き上がらせていく。

“浮き草”(1stアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』/1988年)、“上野の山”(3rdアルバム『浮世の夢』/1989年)、“人間って何だ”(16thアルバム『風』/2004年)……など初期曲/アルバム曲/カップリング曲入り乱れた選曲も大きな魅力の「エレカシ野音」。さらに、“浮き草”では街をうろつき佇むように、“上野の山”では孤独と違和感に身悶えするように、ひとつひとつの歌に封じ込められた物語と思考をそのまま体現し「今」に解き放ち歌い上げていく宮本の切迫したボーカリゼーションが、30年越しの楽曲にもスリリングなほどに生々しいリアリティを与えてみせていたのが印象的だった。

時に自身でギターソロを奏でながら、時にハンドマイクで石森/高緑/冨永/ヒラマ/細海のアンサンブルとせめぎ合いながら、紅蓮のロックを立ち昇らせていく宮本。
「細海さんと一緒に昔、『エレファントカシマシ5』というアルバムで一緒にアレンジを考えてもらって。細海さんの素晴らしいアレンジと、ミヤジの強引なアレンジとが混ざり合って、非常にいい曲になったっていう……」と紹介しつつ披露したのは“おれのともだち”。細海のオルガンと3本のギターの響きが、雨音と重なり合いながら至上の音の波を描き出していく。
“星の砂”では舞台前面の雨に濡れたエリアを闊歩し歌い回る宮本の姿に刺激された観客が、星砂の如く手を頭上に舞い踊らせる。さらに“珍奇男”。アウトロの爆裂セッションパートで《苦労してオッとっと》の「オッとっと」のフレーズを幾度も繰り返し、客席を指差してわっはっは! オッとっと!と目を剥いて叫び上げる。ロックの化身の如き宮本の圧巻の生命力が、野音丸ごと狂騒の異境へ導いた名場面だった。

エレファントカシマシ/日比谷野外大音楽堂
そして、今回の野音公演ではその随所で、最新アルバム『Wake Up』の楽曲が確かな存在感を放っていた。細海のオルガンの音色とレゲエのリズムが織り成す穏やかな空気感と終盤の宮本の絶叫が不穏なコントラストを描いた“神様俺を”。包容力に満ちたメロディとコードワークが、雨の風景と美しく融け合った“いつもの顔で”。「その先」を見つめる透徹した視線と不屈の魂の迫力が胸震わせる“オレを生きる”……昨年から今年にかけて全国を席巻した30周年アニバーサリーイヤーの熱量と躍動感を、さらなる未来への指針として凝縮した『Wake Up』が、雨の野音でも、いやこの逆境だからこそ確かな訴求力をもって響いてくる。
“かけだす男”(8thアルバム『ココロに花を』/1996年)、“なぜだか、俺は禱ってゐた。”(17thアルバム『町を見下ろす丘』/2006年)といった楽曲群と“Destiny”、“ズレてる方がいい”などシングル曲群を織り重ね、前半=一部の最後を飾る“RAINBOW”の全身全霊傾けた激唱&激演に応えてオーディエンスの拳が一面に突き上がる。「雨でアレですけど、集中してできました」という宮本の言葉に、野音狭しと高らかな拍手が沸き起こっていった。

情感たっぷりに歌い上げた“今宵の月のように”で幕を開けた本編後半=二部。《東京中の電気を消して〜》のフレーズで始まる“友達がいるのさ”では、《おわれねえストーリー》の絶唱で雨に冷えた日比谷の夜空をばりばりと震わせ、「行くぜ! 来年も再来年もその先も、エブリバディ! 飛び出すぜ! 一緒に行こうぜ!」の叫びとともに宮本と観客が拳を掲げ合う――。「雨の中、集中力をみんな一生懸命……ありがとうございます! 野音らしい、いいステージになってます。いい顔してるぜエブリバディ! よく見えないけど」という宮本のMCに、惜しみない喝采の声が広がる。
“悲しみの果て”から“歩いてゆく”(22ndアルバム『RAINBOW』初回盤シークレットトラック/2015年)〜“月の夜”(4thアルバム『生活』/1990年)へ、と自らのキャリアを縦断しながら、1曲1曲に全エネルギーを注ぎ込むような渾身の歌を響かせていく宮本。『Wake Up』から披露した凛とした名曲“旅立ちの朝”の《俺よ もう一度起て》と、怒濤のハードロックンロール“男は行く”の《俺はお前に負けないが/お前も俺に負けるなよ》の歌声が、観る者の心にでっかい渦を巻きながら、本編のエンディングをどこまでも熱く凄絶に彩っていた。

エレファントカシマシ/日比谷野外大音楽堂
宮本がメンバーひとりひとりと握手を交わし、6人で肩を組んで深々と一礼――というカーテンコールの場面を合図にするかのように雨がぴたりと降り止み、一気に晴れやかな空気が野音に広がる。
鳴り止まない手拍子に応えて、アンコールで6人が舞台に登場。「30周年、本当にすごい1年になって。『エレファントカシマシってこんなにいっぱいお客さん入るんだ!』って、俺たちもみんなも驚いた1年でした(笑)。もう6月なのに何言ってんだって話ですけど……今年もよろしくお願いします!」と客席に語りかける宮本に、ひときわ高らかな拍手が巻き起こっていく。
“星の降るような夜に”ではステージ前面に導かれた石森&高緑が熱演を展開する中、宮本が拳を突き上げ会場一丸の歌声を煽っていく。この日のフィナーレの“ファイティングマン”まで、一瞬一瞬に己の魂と意志をすべて注ぎ込みながらひた走るような、全30曲・約3時間。最高のロックアクトだった。

なお、大阪城野音公演の模様は6月30日(土)発売の『ROCKIN’ON JAPAN』8月号でレポートします。併せてぜひご一読を。(高橋智樹)
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