ザ・コーティナーズ @ 恵比寿リキッドルーム

マンチェスターから現れた新星、ザ・コーティナーズ。すでにNME誌をはじめとする本国UKのメディアでは次代を背負って立つバンドとして大々的にフィーチャーされているが、デビュー・フル・アルバム『セイント・ジュード』のリリースにあわせて、ついに日本上陸である。日本においてはまだまだこれからのバンドゆえ、満員御礼とはいかなかったものの、すでに熱狂的なファンが付いていて、フロア前方はライブ開始前から盛り上がっている。

さて、そのコーティナーズだが、フロントマンのリアム・フレイが「ビッグ・マウス男」として通っていて、メディアでもたびたび挑発的な発言を繰り返している。同世代のバンドをこき下ろしたり、デカいヴィジョンを当たり前のように語ったり。それはまあUKロックの伝統みたいなものなのだが、どうもそのイメージばかりが先行して、実質が理解されていないきらいがある。というのも、アルバムを聴いてもらえれば明白だが、このバンドのロックはじつにナイーヴでリリカルなものなのだ。アルバムのタイトルにキリスト教の守護聖人の名前を冠していることからも分かるだろう。昔はポエムを書くのが趣味だったというリアム、じつは感受性豊かでいい奴なんだと思う。オアシスの後継者なんていわれたりもしているが、むしろスミスとかラーズの系譜に連なるバンドなのではないだろうか。

ネタはアルバム1枚のみということで、当然セットは短い。大体40分くらいだったろうか。どうも前の晩に飲みすぎたらしく、リアムの声も本調子ではなかったようで、すべてが完璧というライブではなかった。しかしその中でも繊細なギター・ワークやリアムの歌に宿るリリシズムは感じ取ることができたし、そのソングライティング能力の高さも確認することができた(個人的にはテンポの速いロックンロール・チューンよりもミッド・テンポの楽曲のほうが、この声と演奏は活きるのではないかと感じたが)。まだ公式にはアナウンスされていないが、フジ・ロック出演が決まったらしい(ステージから本人が言っていた)。夏にはもうひと回り大きくなった姿を見せてくれるはずだ。(小川智宏)
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