おいしくるメロンパン/マイナビBLITZ赤坂

おいしくるメロンパン/マイナビBLITZ赤坂 - All photo by 上山陽介All photo by 上山陽介

●セットリスト
1. look at the sea
2. 色水
3. 夕立と魚
4. 命日
5. 桜の木の下には
6. caramel city
7. 泡と魔女
8. 蜂蜜
9. 砂と少女
10. nazca
11. シュガーサーフ
12. 紫陽花
13. dry flower
14. あの秋とスクールデイズ
15. 水葬
(アンコール)
EN1. 新曲
EN2. 5月の呪い


3作目のミニアルバム『hameln』を携え、9月から全国11公演のスケジュールで繰り広げられてきた「hamelnレコ発ワンマンツアー ~ピーヒョロピッピッピ♫~」。東京・マイナビBLITZ赤坂をソールドアウトさせたファイナルの舞台では、お馴染みのSEで最初に原駿太郎(Dr)が、続いて峯岸翔雪(B)がオンステージ。最後にナカシマ(Vo・G)が中央で深々とお辞儀し定位置につくと、3人揃って頭上に手を掲げ「(せーの)どうも、おいしくるメロンパンです!」。おお、一時は見かけなくなっていた挨拶が復活している。嬌声混じりにどよめく場内にも納得だ。風通しの良い滑り出しから瞬く間にサウンドをギラつかせ始める“look at the sea”、緩急のコンビネーションを決めまくる“色水”と、ミニアルバム3作分の楽曲が揃ったからか、序盤から出し惜しみなしという選曲で攻め込んでくる。

おいしくるメロンパン/マイナビBLITZ赤坂
足を蹴り上げ頭を振り、瞬く間にアクションが激しくなっていった峯岸は、ツアーファイナルへとたどり着いた感慨と感謝を織り交ぜながら「僕らのライブに決まりはないので、とにかく自由に楽しんでください。やるぞ! あー! 最後までよろしく!」と思いを投げかける。新作曲“命日”では、ひしゃげたサウンド、前のめりなグルーヴ感の向こうから、ナカシマの透明感に満ちた歌声が心象を伝えていた。ナカシマの歌詞は、離別や思いの儚さと季節の移ろいを重ね合わせ、高度な文学性をもって死のイメージを立ち上らせる作風が目立つ。新作『hameln』はその決定打と言えるだろう。桜色の照明に染まりながら「死」の物語を繋ぐような“桜の木の下には”への流れも素晴らしい。

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原は、キャリア最大規模の会場でも思い思いに体を揺らしたり、聴き入っているオーディエンスの様子が見える、と声を昂ぶらせながら「楽しんでるパワーを分けてくれ。ブリッツ、盛り上がってるかー!」と歓声を誘う。そして「俺のターン!」と語り出すナカシマは、「入った時に人が多すぎて、ビビったよね。浮かれ気分で。さっき僕の名前呼んでくれた方、ありがとうございます」と、原や峯岸の名を呼ぶ声が先に聞こえたという話題で笑いを誘っていた。ナカシマがアコギ、峯岸はアコベという編成で、唯一のアコースティック曲として届けられた“蜂蜜”は、歌詞のテーマどおりに、ライブにもひと味違ったアクセントを加える、おいしくるメロンパンの音楽性の広がりを伝えるナンバーだ。

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そこから再び爆音を決壊させる“砂と少女”も素晴らしかったが、儚さを積み重ねたその果ての景色を見るような“nazca”は、やはり圧倒的なスケール感を誇る一幕だった。可変拍子の複雑な曲調でもポップさを保ち、荒馬の手綱を振り絞って乗りこなすようにロックしてみせる。そんな、おいしくるメロンパンの頼もしい成長がありありと描かれている。また、おそらく僕がこれまでに聴いた中でも最速の“シュガーサーフ”は、ハードコアかと見紛うような爆発力に原のドラムソロも加わって、フロアを熱狂の渦に叩き込んでしまった。

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「前回まではおいしくるメロンパンを探すツアーだった。今回は、本物のおいしくるメロンパンになってから初めてのワンマンツアーだと思ってます」。峯岸が、セットリストの流れにも意味がある、と語っていたとおり、“紫陽花”から“dry flower”にも物語の連なりが見える。《情けないな》のリフレインが暴風圏アンサンブルを突き抜けてくる“あの秋とスクールデイズ”を経て、たどり着いた本編最後の曲は“水葬”だ。完璧な論理に裏付けられた、当たり前のような顔をして湧き上がる狂気が、そこにはあった。

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アンコールの催促がフロアに響く中、スクリーンには突如ビデオが映し出される。このツアーファイナルの舞台で“命日”の新作MVをサプライズ初公開するという、粋な計らいだ。そしてステージに戻った3人は、ここでさらに新曲を披露。ギターの瑞々しいリフレインとヘヴィなボトムで進む、これからの季節を共に潜り抜けてゆくリスナーに呼びかけるような、ツアーファイナルにも相応しいナンバーであった。そして、ナカシマは語る。

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「3年前においしくるメロンパンを始めて、最初は、翔雪がうちに来たときに“桜の木の下には”を聴かせたんだけど、その頃から音楽に対する気持ちはまったく変わっていないと言えます。自分がかっこいいと思う音、美しいと思う言葉を貫いてきました。僕たちはそういう風にしかできない。好きだと思ったこと以外はやらない。それだけは譲れないです。皆さんの支えがあったからやって来れたと、心から思っています。本当にありがとうございます。だからこそ、これからも自分勝手に、ワガママに、マイペースに、音楽をやっていくつもりです。無理に好きになって欲しいとは思わなくて、みんなも好きに音楽を選ぶべきだと思うし。でも、僕らの魅力をもって、みんなを離さないようなバンドになっていきます。おいしくるメロンパンは始まったばかりの長い長い夢のようなものだと僕は思っていて、これからもその夢を一緒に楽しんでください」。

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峯岸が「いいこと言うねえ」と思いを漏らして感動的なフィナーレかと思いきや、そこに原が割って入ってグッズ紹介のコーナーに突入するのも可笑しくてナイスだ。最後の最後には、峯岸の口上から“5月の呪い”へと向かう。誰に媚びることも恥じ入ることもない、リアルな思いを人々とともに積み重ね生きてゆく。そんな覚悟がひしひしと伝わる、堂々のステージであった。(小池宏和)

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