TERIYAKI BOYZ @ ZEPP TOKYO

約3年半ぶりに、まさかの2ndアルバム『SERIOUS JAPANESE』を発表したTERIYAKI BOYZ。2月5日に横浜BLITZで幕開けた、これまた約3年ぶりとなる全国ツアー『DO YOU LIKE JAPAN? TOUR』のファイナル公演となる。

前作『BEEF of CHICKEN』は“酉”年の2005年に発売。新作は“丑”年の2009年に発売、とこうしたアルバム発売タイミングだけでなく、これまで活動の端々に“ビーフ”と“チキン”を絡めた遊び心をちりばめてきた同ユニット。そもそも、このユニットの誕生自体が「遊び心」からきていると思うけれど、この日のステージもそんな彼らの徹底した“遊び心”が満載。加えて、そのポップで軽快なノリとは裏腹にあるような“凄味”も感じさせるステージでもあった。つまり、実力もキャリアもある大人が「本気」で“遊び心”を発揮すると、とんでもないことになる、ということを知らしめる「お見事!」と言うほかないショウだったのだ。

入場時に紙製のオリジナル王冠やシール・セットなどが配布されたりと、開演前からワクワク感高まる仕掛けが。フロント・アクトのLOW JACK THREEによる緩急自在のブレイク・ビーツですっかりヒート・アップした超満員のフロア。いよいよTERIYAKI BOYZの登場だ。

その登場の仕方一つとっても、変化球でくるのがTERIYAKI流。ステージ左右両端に6体設置された2m超のミルク缶オブジェの中から、“HeartBreaker”の壮大なイントロにのせて、にょきっとMC4人が現れたのだ。おそろいのパーカー(各自色違い)にジーンズという出で立ち。ミルク缶の背後には、ZEPPのステージ天井いっぱいまでに掲げられた巨大な牛の絵(ちなみにお乳からちゃんとミルクも出てきて、ショウの合間にILMARIが飲んでました)。牛のお腹部分にはスクリーンが入っており曲ごとに凝った映像が映し出される。NIGO(R)は、ステージ中央に鎮座する巨大な“エサ樽”型のDJブースに姿をみせた。割れんばかりの歓声! そこからは一気に場内がダンス・フロア化。「HeartBreaker〜」の部分になれば、PVでおなじみの右へ左へと身体をくねらせながらステップするという、あの振付をフロア中がやってみせる。約3千人分の人影が右へ左へと一斉に波打つようにうねる光景は、なんとも壮観。

そして“ZOCK ON!”“TOKYO DRIFT”とフロアの熱狂を加速させるように、ダンサブルなチューンが繰り出されていく。その後の「もういいよ〜」と声を張り上げたくなる“THE TAKEOVER”、“Beef of Chicken”での「どうしよう?」、“Celebrity Death Match”の「Ah〜」といった掛け合いでは、フロア中が一体感を実感したことだろう。フロアが声を上げやすい曲を、このタイミングで連発してくるセットリスト構成も上手い! さりげなく聴き手の心の殻を破ってしまうような雰囲気作りも上手く、“TERIYA-KING”で、「まだ(声出すの)恥ずかしがってるよな」「(入場時に渡された紙製王冠を指して)でもこれをかぶっちゃえば平気だよ、王様だからね」と、“ここにいるみんな(オーディエンス)こそが王様なんだ”といわんばかりに煽ってくれた。

“超LARGE”で、かくし芸大会?と思うほど鮮やかにILMARI着用のパーカーがビリっと左右に引き裂かれたりと、視覚的なサプライズもいっぱい。“SERIOUS JAPANESE”では、カメラマンが各バースを担当するメンバーを接近撮影。その映像があらかじめ仕込んであったアニメ映像とともに即中央のスクリーンに映し出されたりも。曲ごとに変わっていくスクリーンの映像は、PVだけじゃなくて、歌詞が飛び出したり、“5th ELEMENT”ではトラックに使われている音色の正体が明かされたりと、目が離せない。

途中、MCタイムで、WISEが“上を向いて歩こう”をカバー。なんでも、広島ではカープの応援歌を披露したそうで、各会場ごとにこうしたご当地ネタも織り込んでいたよう。NIGO(R)よるDJタイムからの流れで“パラダイスベイベー”もやってくれた。アンコールでは、ILMARIの提案によりフリー・スタイルも披露。4人のマイクリレーは起承転結があってさすが。ILMARIのヒューマン・ビート・ボックスによるパワフルなビート・メイクも臨場感満載だった。度肝を抜かれたのが、ラスト、ステージ両端のパイロからオリジナルTERIYAKI BOYZ紙幣が紙ふぶきのように飛び出してきたところ。「お札が天から降ってくる」を体験できるチャンスなんてそうそうない。このシチュエーション、圧倒的すぎる。

もちろんこうした演出が活きてくるのも、各メンバーの確かなスキルがあってこそ。尻上がりにラップのキレが鋭くなっていたところに、百戦錬磨のパフォーマー軍団としての貫禄が漂っていた。特に、TERIYAKI BOYZの個性に合わせて各プロデューサー陣が制作したという2ndアルバムの曲群は、“生”だとさらにダイナミックに。「千秋楽、余力を残さないよう出しきっていくよー」と、RYO-Zは何度も口にしていたけど、そんな彼らの気合と、オーディエンスの熱気が見事合致していた。

“遊び心”と“ポップの先鋭性”とが、とても高い次元で結びついたパフォーマンス。RYO-ZもMCでフロアに向けて「ここにいるみんな、こんな濃い〜トラックで遊んじゃって楽しすぎじゃない」と言っていたけど、まさにそこにTERIYAKI BOYZの凄味がある。TERIYAKI BOYZは自身を媒介にして、世界の先端を行く「ビート」の快感や楽しさを、伝えてくれる。逆に海外のオーディエンスは「TOKIOの今」のヴァイブがたっぷり詰まった“AFTER5(A.M.)”なんかで「東京」の一つの側面を知る。そんなふうに「輪」が広がっていく喜びを、体感させてくれるライブでもあった。素朴な感動かもしれないけれど、そもそもポップ・ミュージックの凄味は、そういうところにあるのだ。(森田美喜子)

1.HeartBreaker
2.ZOCK ON!
3.TOKYO DRIFT(FAST & FURIOUS)
4.THE TAKEOVER〜Beef of Chicken〜Celebrity Death Match
5.超LARGE
6.SERIOUS JAPANESE
7.SWEET GIRL
8.You Know What Time Is It!?
9.TERIYA-KING
10.5th ELEMENT
11.AFTER5(A.M.)feat.MADEMOISELLE YULIA
12.School of Rock feat.TAKAGIKAN
13.MASH UP(熱帯夜〜Shine like a star〜LOTTA LOVE)
14.いつも IT\'S MORE
15.I still Love H.E.R.
16.HeartBreaker

アンコール
17.(CAN\'T)“BAKE”THAT“FAPE”feat.TAKAGIKAN
18.WORK THAT
19.KAMIKAZE 108
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