●セットリスト
01.LAST MINUTE
02.Starrrrrrr
03.I Don't Believe In You
04.Follow Me
05.spit!
06.Girl A
07.Come Closer
08.PARTY IS OVER
09.SNOW SOUND
10.Kaiju
11.MILK
12.Mosquito Bite
13.Kick&Spin
14.You're So Sweet & I Love You(サブステージ)
15.明日、また
16.NEW WALL
17.FISH TACOS PARTY
18.Your Song
19.Adventure
20.アルペジオ
(アンコール)
SE.Burger Queen
EN01.Dracula La
EN02.月色ホライズン(新曲)
EN03.Pray(サブステージ)
EN04.ワタリドリ
[ALEXANDROS]の全国ツアー「Sleepless in Japan Tour」のファイナル公演が、さいたまスーパーアリーナにて6/15と6/16の2日間に渡り行われた。昨年12月よりスタートしたライブハウス&アリーナツアーは、最新アルバム『Sleepless in Brooklyn』を携えて約2年振りに行われたもので、 [ALEXANDROS]史上最長かつ最大規模でのツアーとなった。その間には川上洋平(Vo・G)の喉の不調や庄村聡泰(Dr)の腰の治療に伴う一時休養、さらに磯部寛之(B・Cho)の骨折など度重なるアクシデントに見舞われながらも、彼らはしっかり4人揃ってゴールテープを切った。その瞬間を目撃すべく、千秋楽である2日目の公演を観てきたのだが、バンドのグルーヴや磨き研がれた楽曲の迫力、ライブアレンジのクオリティ、そして「絶対に一番になる」という信念――演奏された25曲全てから、「最新こそ無敵」という[ALEXANDROS]が持つ芯の強さと凄みを改めて思い知った夜となった。
アメリカ・ブルックリンの街中をイメージしたかのようなレンガ調のステージセットが視覚的に高揚感を高める中、暗転と同時にメンバー紹介の動画がスクリーンに映し出されるとオーディエンスは一斉に席を立ち、中央ステージに登場したメンバーを大歓声で迎えた。そしてアルバムのトップを飾るアンニュイな“LAST MINUTE”でアダルティックなスタートを切ると、“I Don't Believe In You”や“Follow Me”、“spit!”などの攻撃的でソリッドな楽曲を連発。爆竹や目では追い切れないほど発射された無数のレーザーなど、アリーナならではのド派手な演出に引けを取らない硬質なプレイで会場の興奮を煽っていった。“SNOW SOUND”ではオーディエンスのシンガロングを巻き起こして会場をひとつにするも、その後には特大バルーンが会場を回遊した“Kaiju”や“Mosquito Bite”などの怒涛の攻め曲で圧倒する。セットリストからそうしたメリハリの良さを感じながら、曲の繋ぎやアレンジはもちろんのこと、4人のプレイに一切の隙がないことに驚いた。10曲以上をタイトに歌い続けているにも関わらず“Kick&Spin”のアウトロ入り4小節で綺麗なロングトーンを響かせた川上には「マジか」と思ったし、足の怪我故に着席にてプレイするというイレギュラーな状況でもアクティブにプレイする磯部や、休養によるブランクを全く感じさせない庄村のハイスキルなドラミング。そして着実で刺激的なギターワークで惹き込む白井眞輝(G)と、全員の気力と集中力が並じゃない。前述した要因による身体的な不安は彼らにも少なからずあったはずだが、「あいつなら大丈夫だ」という共通意思があるからこそ、各々のプレイに最大限で集中できたのだろう。そこにあるのは安心感や信頼感というよりは、プレイヤーとしての各々の誇りに近いように思えた。[ALEXANDROS]としてステージに立つのならばやってやるという誇りと気迫が4人それぞれに宿っているからこそ生み出せるバンドのグルーヴが確かにあって、この日はその最たるものを目の当たりにした。
そして「機材が上から降りてくる」という斬新なセットを経て、花道の先にあるサブステージにてプレイされたのは“You're So Sweet & I Love You”だったのだが、この日プレイされた[Champagne]時代の楽曲はこの曲を含めてわずか数曲だった。[ALEXANDROS]がこれまで生んできた数ある楽曲の中で「ライブで聴きたい」と願う曲なんて山ほどあるし、ライブに向かう度に「昔の曲も聴けるかな……」と淡い期待を持っていたことは否めない。けれど、この日の[ALEXANDROS]のライブを観る中で、「過去」という概念がここに入り込む隙はまるでないなと思った。『Sleepless in Brooklyn』についてのインタビューの中で、川上は「“Mosquito Bite”ができた時点で、今までの曲全部捨てていいと思った。今はとにかく、このアルバムからデビューしましたっていうバンドの気分なのかもしれない」と当時の心境を語っていたことを思い出した。アリーナを埋めるバンドでありながらも余計なプレッシャーを背負うことなく「自分自身でいることがロックだ」と孤高を受け入れる強さ、「いい音楽」に対して持つフラットかつピュアな視点と感性、そして飽くなき好奇心と貪欲さ、さらには実行力。その全てを持ち得ているからこそ、彼らは真っ直ぐに「今よりも先」に向かって邁進できているのだろうし、10年近くに及ぶバンドの歴史を感じながらもそれだけを見ることができているのだろう。この日、映像を交えて「曲とあなた」の関係性を歌ったバラード“Your Song”やアルバムをリードする“アルペジオ”、さらにアンコールでプレイされた“Pray”と最新曲“月色ホライズン”を聴いて、改めてそう思えた。
アリーナクラスを「アットホームだ」と呼べるほどに味方を増やしても、そこに決して満足はしていない。それは彼らが元来持つ性格ももちろんあるが、アメリカ・ブルックリンで楽曲製作をし、その期間で現地の音楽・文化・芸術・空気にめいっぱい触れたことによって触発された野心が、この日体感した彼らの集中力と技術力をより一層研ぎ澄ましたのではないかと思う。海外での生活の中で楽しい思いも悔しい思いも味わった彼らは、その上でこの日「やっぱり自分たちは世界一だなと思っています。怪我したり喉壊したり腰悪くしたり……まぁ無事な人もいますけど。何があっても[ALEXANDROS]は進み続けます。クソジジィになっても、死ぬまで続けます。必ずうちらは一番になります」とはっきりと明言した。それは誇張表現や願望なのではなく、これは彼らが見ている確実な未来なのだ。6月21日(金)からは、中国・上海公演を皮切りにアジアツアーも始まる。彼らがその「未来」に向けて着々と歩みを進めている姿を見るのがファンとしても楽しみで仕方ない。絶えずアップデートしていく[ALEXANDROS]の未来をまたひとつ近くに感じることができた、最高のツアーファイナルだった。(峯岸利恵)