Official髭男dism/「ONLINE LIVE 2020 - Arena Travelers -」@東京ガーデンシアター

Official髭男dism/「ONLINE LIVE 2020 - Arena Travelers -」@東京ガーデンシアター - All Photo by 溝口元海(be stupid)All Photo by 溝口元海(be stupid)

●セットリスト
1.HELLO
2.宿命
3.ノーダウト
4.パラボラ
5.ビンテージ
6.Rowan
7.夏模様の猫
8.イエスタデイ
9.Laughter
10.たかがアイラブユー
11.115万キロのフィルム
12.異端なスター
13.旅は道連れ
14.夕暮れ沿い
15.FIRE GROUND
16.Stand By You
17.Pretender
18.I LOVE...
19.ラストソング



Official髭男dism/「ONLINE LIVE 2020 - Arena Travelers -」@東京ガーデンシアター
9月26日、Official髭男dismは初のオンラインライブを行った。本来ならば今年3月からアリーナツアーで全国をまわる予定だったが、全公演が延期となってしまったこともあり、多くのリスナーが久しぶりのライブを楽しみにしていたと思う。そして、その期待をはるかに上回るような、度肝を抜く素晴らしいライブだった。藤原聡(Vo・Pf)がライブ中に口にした「アリーナツアーができなくなって、その代わりみたいなライブにするのは健全じゃないと思った」との言葉のとおり、オンラインならではのカメラワークで、画面越しだからこそ楽しめる映像の工夫が細部にまで施されていたのはもちろんのこと、アリーナでのスケール感も存分に、というよりも本当にリアルなダイナミックさで伝わってきたのだった。

Official髭男dism/「ONLINE LIVE 2020 - Arena Travelers -」@東京ガーデンシアター
予定時刻通りに始まった配信は、まず機材搬入やステージセットの設営、カメラや照明のセッティング、サウンドチェックなど、ライブ前の準備の様子を映し出していた。その映像の様子から、ライブ会場は東京ガーデンシアターであることがわかる。そしていよいよ本編のスタート。8月にリリースされ、『めざましテレビ』のテーマソングとしてもすっかり耳になじんだ“HELLO”から。力強いバンドサウンドが響いた瞬間、とんでもないライブになることが予感できた。ずっとこの曲のロック感あふれる演奏をライブで体感したかった。画面越しとは言え、そのダイナミズムがものすごい熱量で伝わってくる。続いて“宿命”、“ノーダウト”と、たたみかけるようなオープニングで、花火や金テープの放射など、序盤から特効も連発。“パラボラ”では藤原がピアノを弾きながら美しい歌声を響かせ、ステージ横に設えられた巨大モニターには、早くも上着を脱ぎ捨てて気持ち良さそうにドラムをたたく松浦匡希(Dr)や、コーラスで彩りを添える楢﨑誠(B・Sax)の表情を映し出していく。小笹大輔(G)のアウトロのギターアルペジオが格別の余韻を残す。

スライドギターの独特の揺らぎのあるサウンドとともに、会場中が星空に覆われたかのような演出で響いたのは“ビンテージ”。ターンテーブルのアナログノイズとセピアな照明で彩った“Rowan”。そしてやわらかなピンスポットの下で藤原がピアノで弾き語った“夏模様の猫”と、しっとり聴かせた後はバイオリンを含めたバンドサウンドが心地好い“イエスタデイ”へ。バンドのコーラスも出色の美しさ。そう。ヒゲダンはこのコーラスワークも魅力のひとつなのだ。それがオンラインでは通常のライブ以上に繊細に伝わる。

“たかがアイラブユー”では藤原はトークボックスを使って不思議な歌声を響かせる歌い出しで、一気にバンドサウンドはサイケデリックなファンクネスを携える。洗練されたうねりを生み出すベース、タイトなドラムとパーカッション、バイオリンも、ホーン隊も入り、これだけフルで音が鳴っているのにもかかわらず、そのバランス感の素晴らしさにただただ唸る。浸る。

Official髭男dism/「ONLINE LIVE 2020 - Arena Travelers -」@東京ガーデンシアター
藤原は今回、「今、お客さんとしてオレが観たいと思うオンラインライブをしようと思った」と語った。そのためにライブメンバーもヒゲダンメンバーを含めてついに二桁に上ってしまったこと(全12人!)、ステージセットもアリーナツアーに持っていくものをみんながどうしたらオンラインで楽しめるか、しっかり話し合ったことなどを伝えると、「みんながこれを受け取ってくれたら、このオンラインがまたひとつの思い出になる」と語って、“115万キロのフィルム”へ。思いをそのまま鍵盤に託すかのように力強いタッチで弾き語る歌い出し。ホーンの高らかなサウンド。《撮影を続けようこの命ある限り》と歌う声がまっすぐに響いた。

アリーナのスケール感とオンラインならではの視覚的なダイナミズムを最も強く感じさせてくれたのは“FIRE GROUND”だった。小笹はステージセンターに立つと、そのフロアが高く高くせり上がって、ヘヴィなバンドサウンドを引き連れてメロイックサインを決める。「コロナウイルス燃やしつくしてやろうぜ!」と叫ぶと、ステージ上に炎が何度も立ち上る。レーザーもバシバシに飛ぶ。突き上げられる拳。メタリックな小笹のギター、藤原は光るショルダーキーボードで小笹に向き合う。倍テンで疾走する速弾きのギターソロ。何もかもが圧巻だった。会場から大歓声が聞こえてくるような気さえした。

Official髭男dism/「ONLINE LIVE 2020 - Arena Travelers -」@東京ガーデンシアター
一転、“Stand By You”はホーンの音とパーカスとドラムが刻む軽快ながら力強いリズムのイントロから、全員参加型のハンドクラップへ。巨大モニターには、過去ライブでの映像だろうか、オーディエンスのクラップの様子が映し出されている。コール&レスポンスで合唱する風景も、すぐそこにあるかのように感じられて、藤原もその景色をイメージするように、マイクを客席に向けてシンガロングの声に「聴き入った」。

“Pretender”ではとびきりのロングトーンを響かせ、シンプルなバンドサウンドでグッドミュージックの真髄を感じさせる。“I LOVE...”では《イレギュラー》と叫ぶサビの歌声が、いつにも増して胸に響く。つくづく良いバンドだなあと思う。そしてこのサポートメンバーも含めてOfficial髭男dismなのだと実感する。藤原も「僕はこのメンバーが、このチームが、大好きだし、(リスナーの)みんなと一緒にこうやって音楽の時間を共有することがほんとに人生でとっても大事だなと思った」と語った。そして「自分たちがやりたいと思って作ったものを、少しでも日々の糧にしてもらえているのなら、バンドとしてこんな幸せなことはないです」とカメラの向こうにいる視聴者に語りかけた。この日のリアルタイムでの視聴者は全国で12万人にも達したという。この素晴らしいライブをそれだけ多くの人と共有したという事実は、ヒゲダンにとっても嬉しいことだったのではないだろうか。

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最後は文字通り“ラストソング”でエンディングを迎えた。《まだ遊びたりないよ もっと歌いたいのにな》という歌声は、画面越しの視聴者も同じ気持ちだ。客席で多くの人の腕が揺れているような光の演出。それがさらにその思いを増幅させる。何より、ヒゲダンの音楽が、歌が、そのライブの景色を明確にイメージさせてくれた。ラストは「絶対また元気に会いましょう!」という藤原の叫び。
冒頭で「ツアーの代わりにオンラインライブをするのではない」ということを藤原は言っていたが、アリーナでのライブと同等、もしくはそれさえ凌駕しているのではないかと思うほど濃密でエモーショナルでフィジカルなライブだった。掛け値なしに歴史に残るオンラインライブだと思う。まだまだ書きたいことは山ほどあるので、10月30日(金)発売の『ROCKIN’ON JAPAN』12月号で、より詳細なレポートを書きたいと思っている。よければそちらもぜひ。

そして、リアルタイム視聴がかなわなかった人も、まだアーカイブ配信で10月3日(土)23時59分まで視聴が可能なので、後追いでもぜひ観ておくべきだと思う。アーカイブ配信ではさらに、メンバーがこの日のライブを振り返りながら語り合う副音声も追加されているので、何度でもメンバーと一緒にライブを楽しむことができる。リアルタイムで視聴した人もこれからライブを観る人も、お聴き逃しなく。(杉浦美恵)

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