Photos by 小松陽祐[ODD JOB] / 堀卓朗[ELENORE] / 加藤千絵 [CAPS] / 岡部守郎 / 飯岡拓也 [Tenrich]
●セットリスト01. サクリファイス
02. 自壊プログラム
03. 立ち入り禁止
04. エグゼキューション
05. 悔やむと書いてミライ
06. 空腹
07. 夢のまた夢
08. ひともどき
09. 栞
10. ジグソーパズル
11. ハローディストピア
12. デジャヴ
13. フューリー
14. 忍びのすゝめ
15. イカサマダンス
16. ブレス
17. 神様の遺伝子
18. 暗い微睡みの呼ぶほうへ
19. 命に嫌われている。
(アンコール)
EN1. すーぱーぬこになれんかった
EN2. 女の子になりたい
EN3. CQCQ(カバー)
EN4. 輪廻転生
Photos by 小松陽祐[ODD JOB] / 堀卓朗[ELENORE] / 加藤千絵 [CAPS] / 岡部守郎 / 飯岡拓也 [Tenrich]「表裏一体」という言葉を実感する2日間だった。
まふまふのソロ活動休止前ラストライブとなった東京ドーム公演「ひきこもりでもLIVEがしたい!~すーぱーまふまふわーるど2022@東京ドーム~『表/裏』supported by povo」2DAYS。初日「表-OMOTE-」は「明るく楽しい」、最終日である「裏-URA-」は「感情を吐き出せる」をコンセプトにセットリストが構築された。
異なる趣向のライブを観てまず思ったことは、まふまふは相反する表現を追求してきたアーティストでありながらも、その両極の間には明確なラインがないということ。「表-OMOTE-」でも「裏-URA-」でも、現実と懸命に向き合う彼の姿がそこにあるだけだった。よりよい毎日を送るために、より楽しい時間を送るために、自分の理想を描くために、彼は音楽を11年続けてきたのだろう。その歩みの先にあったものが、この東京ドームという空間だったように思う。だからこそ、方法論は異なれど、「表-OMOTE-」に引き続き「裏-URA-」も非常にポジティブなムードに包まれていた。
黒をモチーフにしたオープニングムービーを経て、“サクリファイス”のイントロとともにステージ中央の鳥かごを彷彿とさせるせり上がりから、黒い衣装に身を包んだまふまふが登場。“自壊プログラム”ではバンドメンバーによるハードなサウンドスケープの中、感傷的なメロディを歌い上げ、“立ち入り禁止”では高音が閃光のように駆け抜け、どこまでも遠くへと飛んでいくような解放感を感じさせた。
Photos by 小松陽祐[ODD JOB] / 堀卓朗[ELENORE] / 加藤千絵 [CAPS] / 岡部守郎 / 飯岡拓也 [Tenrich]「僕には寂しい気持ちを綴った曲がたくさんあります。でもみんなには寂しい気持ちになってほしいわけじゃないんだ。音楽は普段言えない、思ったことを言える空間だと思う。ここには仲間しかいないから、思いっきり自分の感情を爆発させてください」。すっきりとした面持ちでそう語ったまふまふは、「表-OMOTE-」で初公開した新曲“エグゼキューション”を披露する。まさに表と裏を共存させる楽曲で、苦しみや混乱を抱えながらも新しいフェーズへ飛び出そうとする彼の姿が投影されていると言っていい。切実に思いを伝えるように歌う姿に、彼の本気を感じる。そのテンションをさらに増幅させたのが“空腹”。歌詞、サウンドともにシリアスな状況を落とし込んだ楽曲がゆえか、ステージ全体から途轍もない気迫と集中力が発せられる。《ああ》という言葉にならない叫びのような歌は、言葉以上に楽曲の主人公の心情を物語っていた。切り裂かれるような音像に、しばし息をするいとまを失った。
「ちょっと喉を落ち着かせたい」と言うまふまふは、キーボードの宇都圭輝に「ちょっとその間、気の利いたピアノでつないでおいて」と急遽オーダー。すると宇都は“ナイティナイト”を弾き始め、釣られてまふまふが歌い始めると「キーが高いから休憩にならない!」、「“ナイティナイト”もセットリストに入れればよかったね」と笑った。和気あいあいとしたムードは、前日と同様だ。「声を出せなくても、思いっきり手を振ってね!」と呼びかけると“夢のまた夢”に続き、ギターボーカルスタイルで“ひともどき”と“栞”を届ける。「表-OMOTE-」でも披露された楽曲だが、この日はより心の陰を優しく包み込むような歌唱が印象的だった。
Photos by 小松陽祐[ODD JOB] / 堀卓朗[ELENORE] / 加藤千絵 [CAPS] / 岡部守郎 / 飯岡拓也 [Tenrich]バンドメンバーによるインストセクションを挟み、白と黒をモチーフにした衣装に着替えたまふまふは、“ジグソーパズル”や“ハローディストピア”と自身が制作したVOCALOID楽曲を立て続けに歌唱。特に後者は火柱が立ち上る演出や、カラフルな照明や映像も刺激的で、カオティックな空間がスリリングかつユーモラスに映った。
EDMナンバー“フューリー”、忍者の衣装に身を包んだダンサーたちによる殺陣も圧巻の“忍びのすゝめ”、ダンサーたちとともに花道とサブステージでパフォーマンスした“イカサマダンス”などで会場一体を盛り上げると、まふまふは「あっという間すぎる! 楽しい~! これで最後とは思えない」と笑顔を見せる。さらにこの場に集まっている客層が幅広いことに触れると、「想像以上にいろんな人が僕の曲を聴いてくれるようになった」と感慨深げな面持ちだ。コピーバンドをやっていた高校時代には想像できなかった夢のような景色が広がっていると続け、「僕は幸せだよ! ありがとう!」と観客に感謝を告げた。
「僕の全力を出します。あと3曲聴いてください。今日はここが僕らの世界!」。そう告げて全身を振り絞るように“神様の遺伝子”と“暗い微睡みの呼ぶほうへ”を観客の心臓めがけて歌うと、本編ラストは“命に嫌われている。”。歌い手としての生き様をこの瞬間に刻み付けるように、それ以上に自分自身の気持ちを吐き出すように楽曲と一心同体となって歌う姿は、まさに迫真の一言に尽きた。
Photos by 小松陽祐[ODD JOB] / 堀卓朗[ELENORE] / 加藤千絵 [CAPS] / 岡部守郎 / 飯岡拓也 [Tenrich]アンコールではまず「表-OMOTE-」同様に「まふてる気球」に乗り、前日とは逆まわりで“すーぱーぬこになれんかった”と“女の子になりたい”を歌唱。ステージに戻ると、11年間の感謝をあらためて言葉にした。「今日は僕は泣かないんだ。みんなもね! この日を楽しい思い出で終わらせたいから、湿っぽくさせないぞ!」という言葉のあとに「ずっとやりたかったことがあるんだ。内緒にしてもらえる? 緊張するなあ~!」と言い、ギターを抱えてマイクスタンドの前に立つと、演奏し始めたのは“CQCQ”。神様、僕は気づいてしまったのデビュー曲だ。“CQCQ”のカバーが決まったのは最終リハの前日とのことだが、その状況がバンドの演奏を焚き付けたのか非常に爽快感溢れる演奏だった。まふまふも「いや~いい曲だな! 常々『声似てるね』って言われてきたんだよね……。歌い手だから『歌ってみた』やってもいいでしょう!」とすがすがしい表情を見せ、念願のカバーに満足げだ。
Photos by 小松陽祐[ODD JOB] / 堀卓朗[ELENORE] / 加藤千絵 [CAPS] / 岡部守郎 / 飯岡拓也 [Tenrich]一息ついた彼は「とりあえずの最後、やりますか! 僕のわがままに今まで付き合ってくれてありがとう。またどこかで会おう! ありったけの声で歌うぜ!」と告げ、最後に届けたのは“輪廻転生”。《全て生まれ変われ/輪廻転生》と爽やかかつエネルギッシュに歌うその姿は、またアップグレードして我々の前に戻ってくるという約束のようにも見えた。
「いつかまた会おう!」と手を振り、彼はステージを去った。「表-OMOTE-」でも「裏-URA-」でも、裏表のない彼の姿を見られたような気がする。11年間の音楽活動で得た財産を総動員したような2日間は、健やかな幸福感に満ちていた。(沖さやこ)
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