Mr.Children/日産スタジアム

Mr.Children/日産スタジアム - All photo by 渡部 伸、樋口 涼All photo by 渡部 伸、樋口 涼

●セットリスト
OPENING
01. 終わりなき旅
02. 名もなき詩
03. 海にて、心は裸になりたがる
04. シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~
05. innocent world
06. 彩り
07. 口笛
08. 車の中でかくれてキスをしよう
09. Sign
10. タガタメ
11. Documentary film
12. DANCING SHOES
13. LOVE はじめました
14. フェイク
15. ニシエヒガシエ
16. Worlds end
17. 永遠
18. others
19. Tomorrow never knows
20. 光の射す方へ
21. fanfare
22. GIFT
Encore
EN01. エソラ
EN02. HANABI
EN03. 生きろ


Mr.Children/日産スタジアム
デビュー30周年を記念した「Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス」が4月から行われ、全12公演を無事完遂した。30周年を祝うスペシャルなドーム&スタジアムツアーであるのと同時に、「Mr.Children Dome Tour 2019 “Against All GRAVITY”」ツアー以来、約3年ぶりとなる全国ツアーは、まさに「待望の」と呼ぶべきものだった。そのツアーの神奈川公演2デイズ初日、6月11日の日産スタジアム公演に足を運んだ。バンドのエネルギーと、Mr.Childrenの歌が持つ本質的なメッセージをダイレクトに受け取るライブは、未来への扉から光が射し込むような、あたたかく、希望に満ちた素晴らしいものだった。セットリストは過去の代表曲、名曲が惜しげもなく並び、まさに30周年の記念ツアーにふさわしいものだったが、「半世紀へのエントランス」と題されたツアータイトルが示す通り、決して過去を振り返り、慈しむだけの内容ではなかった。30周年の祝祭でありながら、それは40周年、50周年へと続いていくバンドの未来をも垣間見せるものだった。

Mr.Children/日産スタジアム
7万人が見守る中、“終わりなき旅”でライブがスタート。自分たちの音を確かめるように演奏が始まり、桜井和寿(Vo)もその音に向き合うように歌い始める。マスクを着け、歓声をあげることができない観客は、いつにも増してハンドクラップや拍手で自身の想いを表現する。歌が1コーラス終わるごとに波のような拍手が起こり、腕は高く突き上げられ、誰もがMr.Childrenの30年を祝福し、無事にこのライブの日を迎えられた喜びを全身で伝えようとしているのがわかる。そうした客席の想いはステージにも伝わったはずだ。楽曲後半、《息を切らしてさ 駆け抜けた道を 振り返りはしないのさ/ただ未来へと夢を乗せて》と歌いあげたところで、桜井の表情が笑顔に変わった。そしてこのフレーズは、まさに今回のツアーのテーマに重なるものだった。

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続く“名もなき詩”の軽やかなイントロに会場中のハンドクラップが重なって、中川敬輔(B)のベースや鈴木英哉(Dr)のドラムとともに、とてもスケールの大きなリズムが生み出されていくのを感じた。Mr.Childrenのライブに欠かせない存在であるサポートミュージシャンのSUNNY(Key・Cho)がアコーディオンの柔らかな音色で彩りを添え、田原健一(G)のスライド奏法のギターソロは、光のようにあたたかく響く。“海にて、心は裸になりたがる”では早くも、桜井はステージからアリーナの中央に延びた花道の前のほうまで出てきて、指を差しながら観客一人ひとりに届けるように歌う。大きくなる会場のクラップ。それに応えるように桜井は「ありがとう」と笑顔でサムズアップ。たとえ声をあげることができなくても、こんなふうに想いは通いあう。しかもスタジアム規模のライブで。「見てよ、この人数! 最高です!」と言って客席を見渡した桜井の笑顔も最高だった。“シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜”、“innocent world”では、シンガロングできないオーディエンスの分まで歌うかのように、ボーカルもコーラスも力強い歌声を響かせる。ステージと客席との一体感という言葉はよく目にするけれど、この日のそれは格別だった。コロナ禍での制限、それさえも乗り越えて、7万人がMr.Childrenの歌に心を重ねていく。

Mr.Children/日産スタジアム
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「ライブという僕らのホームグラウンドで、ただいまとおかえりの意味を込めて」と始まったのはもちろん“彩り”。本来なら《おかえり》と客席からレスポンスするところを、この日はたくさんの腕が、手が、ステージへと向けられる。桜井はまた「ありがとう」とつぶやいた。その後、桜井と田原、SUNNYという3人の編成で、花道の先端に設えられたセンターステージに向かうと、アコースティックな響きで“車の中でかくれてキスをしよう”を披露。Mr.Childrenがデビュー前から演奏していた曲で、それこそ30年以上の歴史を持つ楽曲は、とても普遍的な青さと切なさを持つラブソングだ。より生っぽく響く歌が、今この時代にも心を揺さぶる。さらに中川、鈴木もセンターステージに集まり演奏した“Sign”。あたたかでオーガニックなバンドサウンドに聴き入る。

Mr.Children/日産スタジアム
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後半は、世界が直面している争いを映し出す“タガタメ”が突きつけられ、不穏なエレクトロサウンドの“LOVE はじめました”やヘヴィな“ニシエヒガシエ”と、ダークな楽曲が続く。そして息苦しい現実を光で切り裂くように高らかに響いたのが“Worlds end”だった。ドラムとともにビートを刻むような中川のベースが、未来へ誘うように牽引し、とてもポジティブなバンドサウンドに解放感が広がる。そして「新しい歌を」と言って“永遠”へ。限りある時間の中で、その瞬間の輝きこそが永遠となる──Mr.Childrenがこのツアーに刻みつけたいのは、そんな想いだったのではないかと思う。ライブの冒頭で桜井が観客に語りかけた「どんなことにもきっと、終わりがあるのだと、今はそう思っています。でもだからこそ、いつまでもずっと続いていくことを願って、今ある情熱のすべて、エネルギーのすべてを音に変えて、声に変えて、皆さんにお届けします」という言葉の意味を、ここでまた噛み締めた。

Mr.Children/日産スタジアム
“光の射す方へ”ではスタジアムによく似合う、スケールの大きなロックサウンドで魅了し、“fanfare”ではさらにバンドサウンドがグルーヴしていく。鳴り止まない拍手の中、桜井は何度も「ありがとう」と言葉にしていた。「誰かが言ってくれました。Mr.Childrenは音楽に愛されてるって。ほんとにそう感じることがあるけど、何よりも皆さんにこうして愛してもらえていると実感します。本当に本当にどうもありがとう」という言葉に、会場中からまたもや大きな大きな拍手が湧き起こる。そして「ずっとこの時を待ち望んで、握りしめていた曲を最後に」と言って、“GIFT”を歌い始めた。《僕は探していた 最高のGIFTを/君が喜んだ姿をイメージしながら》という歌詞に、この日は《いつもイメージ 今日も これからも イメージしながら》という歌詞を付け加え、会場のファンへ届けた。この“GIFT”という楽曲自体がそうであるように、Mr.Childrenの歌は時を経て、何度も何度も時代に求められるものだ。その理由が少しわかったような気がした。常に彼らの歌は現実の裏側やその先の未来や、そして自分ではない誰かのことを「イメージ」している。そうでなければ今日のような「一体感」を超えた結び付きを感じるライブなどできるはずがない。

Mr.Children/日産スタジアム
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アンコールは“エソラ”、そして“HANABI”。終演が近づく名残惜しさもあって、切なく胸に刻み込まれるように響く。「最高に楽しくて、本当に待ち遠しくて、いざステージに立ったら嬉しすぎて飛ばしすぎて、3回くらい気を失いそうになりました」と笑いながら打ち明けた桜井。客席からはそんな雰囲気はまるで感じられなかったが、この日のライブのエネルギー量を思えば、それもそうだろうと納得もする。それくらいのパフォーマンスだった。アンコールラストは“生きろ”。5月にリリースされたベストアルバムに収録された新曲である。自身に歌い聴かせるように、そして何より7万人の観客にすべての力を届けるように、強く歌声が響いた。最後にステージで「Mr.Childrenがこの4人でよかった」と桜井は口にした。さらに「聴いてくれてるファンが皆さんでよかった」という言葉も。Mr.Childrenと7万人のオーディエンスで作り上げた素晴らしい夜はこうして幕を閉じた。(杉浦美恵)
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