正体不明の“4人組unknownバンド”=G over、初ライブに潜入! 熱狂の渦を生み出したエネルギッシュな一夜をレポート

正体不明の“4人組unknownバンド”=G over、初ライブに潜入! 熱狂の渦を生み出したエネルギッシュな一夜をレポート

日々の飢えや渇き、苛立ちや不安や悲しみを、ポジティブなエネルギーとして人に伝えることは難しい。しかしG overという4人組は、恐ろしいほどの精度で「それだけ」をやっているロックバンドだ。

2021年1月に結成・始動。この正体不明の“4人組unknownバンド”は、結成直後“曙光”をデジタルリリース/MV公開し、続く3月の“花曇”は「AWA ROOKIES STAGE」でグランプリを受賞した。現行メンバーは、Nao(Vo)、Yoki(G)、Aoi(B)、そしてリーダー・Ibuki(Dr)。2022年秋にはタワーレコード限定でアルバム『Hood』を発表し、購入者限定で視聴可能なオンラインライブも開催。2023年発表の“drive”や“スニーカー”がバイラルヒットを記録する中、「都内某所」というシークレットの触れ込みで遂に初の有観客ワンマンライブ「Hide out」開催がアナウンスされた。即ソールドアウトとなった会場には、開演前から「じおば」の愛称のもとに集まったファンの熱気が立ち込めている。

正体不明の“4人組unknownバンド”=G over、初ライブに潜入! 熱狂の渦を生み出したエネルギッシュな一夜をレポート

メンバーの姿や経歴を明かさず、楽曲の力で勝負するように活動してきたG over。日暮から夜にかけての街にメンバーが集まってくる。そんな、紗幕スクリーンを用いたザラついた質感のイントロ映像を経ると、揃いの黒いフーディー(バンドロゴのバックプリント入り)に身を包んだ4人が“drive”を切り出す。クールでスモーキーなNaoの歌声、タイトなリフと雄弁なフレージングを織り交ぜるYokiのギター、のっけから激しく動き回るAoiのベースライン、そして緩急自在にペースをコントロールしながらいつでも鋭く突き刺さるIbukiのビートと、開演後ものの数秒で4人それぞれの高度な表現スキルを明らかにしていった。そのサウンドに焚き付けられ、早くも場内のオーディエンスがバウンスする。

バンドのメインソングライターは、IbukiとNaoの2人だ。ジャンプブルースやブギー、ファンク、フュージョンやアシッドジャズ、ラップ、そして切々としたバラードまで多様な音楽スタイルを見渡しながら、ヒリヒリとしたロックの熱を手放さないという点で、G over独自のテイストはがっちりと共有されている。強烈なスウィング感のベースを奏でながらAoiの美声がNaoの歌と交錯する“本性”や、ローランドピアノをファンキーに弾けさせつつ歌う“深意”とプレイしたのち、MCとなると「みんな、会いたかったよーっ!!」と途端にご機嫌で無邪気な声を上げるNaoである。Ibukiも雨上がりのライブ開催を喜びつつ、遠方から飛行機に乗ってはるばる駆けつけたファン(SNSで知ったらしい)にも感謝の思いを投げかける。

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バックライトにシルエットを浮かび上がらせながら、狂おしいメロディと歌声を際立たせるNao作曲の“未来の話”。“曙光”や“黒に悶える”ではスリリングなコンビネーションを繰り広げ、フィニッシュと同時にオーディエンスの大喝采を誘う。“ヒーロー”は音源とは異なり、赤裸々に無力感を歌い上げるNaoとその歌心を押し広げるYokiのアコギ伴奏のみのアレンジだ。椅子に腰掛けて向き合った2人がじっくりとパフォーマンスする。このあたりは、ライブだからこその魅力が引き出された一幕だろう。最後にはギターの音も止め、オーディエンスに歌声を預けながらハンドウェーブを巻き起こす光景へと辿り着いてみせた。

入り組んだ感情の色彩を見事に音楽へと変換する“Hood”は、個人的にも大好きな曲だ。エキゾチックなギターフレーズを奏でるYokiといい、G overの表現ボキャブラリーはまだまだ底知れない。Ibuki、Aoi、Yokiが3人のみで繰り広げるインストセッションは、それぞれにきっちりと見せ場も盛り込みながらライブの熱を増幅させていた。また、ソファに腰掛けたNaoが悩ましく歌い上げる“I”は、シアトリカルなムード作りで楽曲を共有させるアイデアが心憎い。真っ向からオーディエンスを挑発しまくる“衝撃”は、ストリーミングもMVも未公開の楽曲(応募者限定CD『衝撃E.P.』に収録)でありながら最高のライブ曲である。

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Naoのピアノ弾き語りに3人が合流する展開がドラマチックな“花曇”を経て、ライブ本編は残り1曲に。「僕らだってやりたいですよ? でも一個だけ大きな問題がある。曲がない!!」と身も蓋もない言葉で笑わせてくれる。そう、G overは素顔も経歴もミステリアスなようでいて、その実とても人懐っこく親密な、感情や体温をごく近い距離感で伝えてくれるバンドだ。今回のライブで明らかになった最重要ポイントはそれだろう。Ibuki作曲による未発表のダンサブルな楽曲が、ピアノの同期サウンドも絡めながら堂々とフィナーレを担った。

アンコールの催促に応えてからも、めくるめくフュージョンテイストの同期サウンドに彩られた目下の最新シングル曲“スニーカー”でメンバーがステージ上を忙しなく動き回り、オーディエンスの歌声を誘う。AoiやYokiもあらためて挨拶したあとには、これまで自分たちの楽曲をライブで表現できるか心配していたことをまっすぐに語り、だからこそ今回の盛況ぶりを喜ぶのだった。「みんな、俺たちを観にきてくれたんだよなあ……」というNaoの呟きが印象的だ。

正体不明の“4人組unknownバンド”=G over、初ライブに潜入! 熱狂の渦を生み出したエネルギッシュな一夜をレポート

最後の最後には、歌声と歌詞、グルーヴとサウンドがジグソーパズルのように噛み合って鮮やかな心象を描き出す“晩夏”で締めくくられる。「Hide out」のタオルを掲げて揺らすオーディエンスたちも、心を揺さぶり潤すライブの一部になっていた。4人が揃って深々とお辞儀し、温かな拍手喝采を浴びてステージは幕をおろす。その刹那に思ったことはひとつ。G overがライブをやらずにいることは、彼ら自身にとってもファンにとっても、シーンにとっても損失でしかない。今後はより多くのステージに立ち、熱狂の輪を広げていってほしいと強く願う。(小池宏和)

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