秋山黄色とPEOPLE 1、BUG=エラー同士のシンパシーがもたらす優しさに満ちた光──生き物のように変化する秋山黄色の対バンツアー「BUG SESSION」、リアルドキュメント! Part 2・Zepp Nagoya編

秋山黄色とPEOPLE 1、BUG=エラー同士のシンパシーがもたらす優しさに満ちた光──生き物のように変化する秋山黄色の対バンツアー「BUG SESSION」、リアルドキュメント! Part 2・Zepp Nagoya編 - All photo by 小杉歩All photo by 小杉歩
秋山黄色が東名阪を回る対バンツアー「BUG SESSION」。緑黄色社会を招いた初日4月4日のZepp Osaka Bayside公演に引き続き、4月5日、ツアー2日目となるZepp Nagoya公演が開催された。この日のゲストに招かれたのは、PEOPLE 1。この対バンまで直接的な交流はそこまで多くはなかったようだが、秋山はかねてよりPEOPLE 1にシンパシーを抱き続けていたという(この日のMCで秋山自身が言っていたが、彼は2019年の時点で、SNS上でPEOPLE 1に言及している)。この日、秋山はステージ上で、彼の中にあるPEOPLE 1へのシンパシーをこう言葉にしていた。

「知っている人はいると思いますが、僕の曲は8割方、『死ぬこと』について歌詞を書いています。あまり共感できない人もいると思いますが、ある特定の人には必ずわかる歌詞になっています。もちろん、共感できなければ僕の曲は対象外だ、というわけではなくて。……PEOPLE 1の歌詞は、僕とほとんど同じ題材で作られているように感じています。本人には聞いていないし、みんなの解釈でいいと思います。でも、同じ痛みや絶望を共有した人間同士じゃないとわからない温度って必ずあって。ただただ暗い歌詞を書いているわけじゃないんだよ。わかるでしょ? ネガティブなわけでもない。最低限明るく、最低限の挨拶と、適度な遅刻で生きています。『自分って結構ギリギリだな』と思いつつ、『死んでないよな、僕らは生きていますから』というふうに成り立っていたりするんですよ」。

かつて、PEOPLE 1のDeu(Vo・G・B・Other)は「孤独の海の底で出会う音楽がある」というようなことを言っていた。秋山黄色の音楽も、PEOPLE 1の音楽も、どこまでも広がっていきそうなポップネスを持っているが、彼らの音楽に孤独の海の底で出会う人もきっと多くいるだろう。ギリギリの心とギリギリの生活を抱えて、自分の内側の痛みや哀しさを掘り進めた先で、聴こえてくるメロディやビートや言葉──秋山黄色も、PEOPLE 1も、そういう音楽を奏でている。孤独の海の底で、彼らは「こんな人間もいるぜ」と待っている。


秋山黄色とPEOPLE 1、BUG=エラー同士のシンパシーがもたらす優しさに満ちた光──生き物のように変化する秋山黄色の対バンツアー「BUG SESSION」、リアルドキュメント! Part 2・Zepp Nagoya編
先攻としてステージに立ったPEOPLE 1は、アルバム『星巡り、君に金星』のクロージングトラックでもある“鈴々”でライブをスタートさせた。華やかで、力強く、開かれた、素晴らしい幕開けだ。Ito(Vo・G)、Takeuchi(Dr)、Deuの3人に加え、Hajime Taguchi(G・B・Syn)とベントラーカオル(Key・G)というサポートメンバーを加えた5人編成で繰り出すダイナミックな演奏。縦横無尽にステージ上を動き回るDeuのアジテーター的なパフォーマンスも相まって、会場全体が一気に盛り上がっていく。

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演奏は立て続けに“DOGLAND”、そして“銃の部品”へ。フロアをズブズブと音と感情の深みに引きずり込みながら、熱狂は爆発していく。煌びやかな照明のもとで披露された“GOLD”に“YOUNG TOWN”、そして近年のライブではダンサブルなアレンジが施されていた“東京”は、ダイレクトなロックアレンジで響いた。“フロップニク”を狂騒的に披露したあと、Deuは「黄色くんが好きって言っていたやつ、全部やった」とこの日のセットリストに込めていたものを明らかにする。そして「……なんとなく、俺は(秋山と)同じ島にいそうな気がする。ネットミーム大好きだし」と語ると、「あと2曲なんだけど、黄色みを感じる曲かもしれない」と続ける。そして始まったのは、切なくも衝動的なガレージパンクソング“高円寺にて”。本当に、この2組の根っこにあるものはとても近いのだろう。1日目のMCで、「BUG SESSION」の「BUG」とは「虫」を指すのではなく、「エラー」という意味だと秋山は言っていた。エラーとエラーのシンパシー。でも、それが生み出す空間は、とても優しい。肯定や許しがそこにはあるからだ。

秋山黄色とPEOPLE 1、BUG=エラー同士のシンパシーがもたらす優しさに満ちた光──生き物のように変化する秋山黄色の対バンツアー「BUG SESSION」、リアルドキュメント! Part 2・Zepp Nagoya編

後攻の秋山黄色。アニメーションのオープニング映像が流れ、ステージのカーテンが開くと、井手上誠(G)、Shunta(D)、藤本ひかり(B)という3人のサポートメンバーとともに既にセッティングを完了させた秋山黄色がいる。

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彼のステージの幕開けを飾ったのは“やさぐれカイドー”。ギターのリフが響き、力強いビートが打ち鳴らされると、フロアからは大きな歓声と手拍子が巻き起こる。「2日目だけど、まったくもって疲れてません!」──そんな言葉とともに、2曲目の“Bottoms call”へと続く。《なあ 調子どうだい》と、まるで気の置けない友達に語り掛けるように始まるこの曲は、《一生逃げようよ/なあ》──そんな提案で締めくくられる。くすんだ生活。消えない痛み。それでも彼は「一緒に未来に逃げようぜ」と、友の手を引く。

秋山黄色とPEOPLE 1、BUG=エラー同士のシンパシーがもたらす優しさに満ちた光──生き物のように変化する秋山黄色の対バンツアー「BUG SESSION」、リアルドキュメント! Part 2・Zepp Nagoya編
「疲れていません」とは言いつつ、それなりに大変な状態ではありそうな、秋山。前日の大阪公演で喉にダメージを負ったという。しかし「ご心配なく。秋山黄色は疲れないので。全然大丈夫だと思います」と告げると、会場からは大きな拍手が起こる。さらに続けて「3万円しか持っていませんし、すさまじい借金もありますし、毛先なんて大変なことになっているんですけど、要はベストコンディションでございます」と話し、さらに盛大な拍手が会場を包み込む。本当はもっと早くやる予定だったが、一度頓挫していたというPEOPLE 1との共演。ついに果たされたことへの喜びを語ると、続けて、今回の「BUG SESSION」ツアーの目的のひとつを話し始める。「最近、大人として取り繕って、自分で自分のリミッターを外せなくなっていて。ひとりじゃできないから、ツーマンで。……ぶっ壊れたいんですよ、僕は」。

秋山黄色とPEOPLE 1、BUG=エラー同士のシンパシーがもたらす優しさに満ちた光──生き物のように変化する秋山黄色の対バンツアー「BUG SESSION」、リアルドキュメント! Part 2・Zepp Nagoya編
秋山黄色とPEOPLE 1、BUG=エラー同士のシンパシーがもたらす優しさに満ちた光──生き物のように変化する秋山黄色の対バンツアー「BUG SESSION」、リアルドキュメント! Part 2・Zepp Nagoya編
本編の最後を飾った“アイデンティティ”の間奏部分で、秋山は昨年、活動再開後にひとりで回ったツアー「MY COLOR」の時の話をした。ライブができるかどうか、ライブの直前になってもわからない精神状態だったこと。そんな時に見た名古屋の鶴舞公園の桜に圧倒されたこと。そして、こう続ける。「……結局ライブはできたんです。なんでかというと、まだ僕の音楽を食べてやろうという人がたくさんいたからです。聴く人間がいないと、僕らは歌う意味があんまりなかったりします。今日僕がライブできているのも、『秋山黄色を観に行くぞ』と来てくれたみんなのおかげだったりします。来てくれて本当にありがとうございます。こんなこと、ステージ上でないと言えませんので、はっきりと伝えます。……花ですら努力していて、嫌になりますけど、花ですら誰かの力で咲くんだと強く思いました。僕らが『頑張って歌います』と言うのは、正真正銘、みんなのためだったりします。こういう光景を忘れずに、脳の深いところに釘を刺して、みんなが本当に困った時に今日の1日を思い出して、脳がバグって、『どうにでもなれ!』と思えるように願っています」。

秋山黄色とPEOPLE 1、BUG=エラー同士のシンパシーがもたらす優しさに満ちた光──生き物のように変化する秋山黄色の対バンツアー「BUG SESSION」、リアルドキュメント! Part 2・Zepp Nagoya編
秋山黄色とPEOPLE 1、BUG=エラー同士のシンパシーがもたらす優しさに満ちた光──生き物のように変化する秋山黄色の対バンツアー「BUG SESSION」、リアルドキュメント! Part 2・Zepp Nagoya編
アンコールでは“ソニックムーブ”と“とうこうのはて”を披露。「クソデケえ声出そうぜ!」と始まった“ソニックムーブ”は爆発的な盛り上りで本当にクソデカい声がフロアから響き渡った。“とうこうのはて”では途中で「イヤモニいらん!」と、耳につけていたイヤモニを放り投げて「聴いたことないぐらい盛り上がるライブ作ろうぜ!」と叫んだ秋山。最後には「腰やったかもしれん……」と本当に満身創痍という感じだったが、そのくらい全力で、卑屈さが一切ない、清々しいパフォーマンスだった。ギリギリでも、孤独の海の底を泳いでも、こんなにも光のような景色を見ることができるのだと、PEOPLE 1と秋山黄色は証明した。「BUG SESSION」の最終公演は4月12日、Zepp Handeda(Tokyo)にて、秋山黄色(ソロ)vs秋山黄色(バンド)という異例の対バン。その模様も後日、レポートする。(天野史彬)

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秋山黄色presents 「BUG SESSION」
2024.4.5 Zepp Nagoya

●PEOPLE 1/セットリスト
01. 鈴々
02. DOGLAND
03. 銃の部品
04. GOLD
05. YOUNG TOWN
06 東京
07. フロップニク
08. 高円寺にて
09. スクール!!

●秋山黄色/セットリスト
01. やさぐれカイドー
02. Bottoms call
03. 燦々と降り積もる夜は
04. シャッターチャンス
05. SCRAP BOOOO
06. PUPA
07. モノローグ
08. Caffeine
09. アイデンティティ

Encore
10. ソニックムーブ
11. とうこうのはて


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