tacica @ SHIBUYA-AX

最新アルバム『jacaranda』を携えてのツアー『'09 TOUR “パズルの遊び方”』で5月から7月にかけて全国を巡っていたtacica。その追加公演として『'09追加公演“パズルの続け方”』と題して、東名阪ワンマンツアーが今日よりスタートした。ワンマンとしては初のAXだ。2週間前にイベントで初めてAXのステージに立ったそうだが、その時はすごく大きな会場に感じたらしい。しかし、今日ワンマンをやってみて「そうでもなかった」と猪狩は話していた。それもそのはず。フロアには少しでも近くでtacicaを感じようとたくさんのオーディエンスが詰め寄せ、熱気が立ち込めていた。

ツアーの追加公演といえど、大阪、名古屋公演がまだ控えているので詳細は伏せておくが、この数ヶ月の怒涛のライブの積み重ねが、tacicaのバンド・アンサンブルにどれだけの自信と躍動感を与えているか、この日の公演を見れば一目瞭然だった。坂井の地底を震わすようなリズムと小西のどっしりと構えたベースラインは余裕すら感じられるし、何より猪狩のボーカルが真っ直ぐに突き刺さるような鋭さを増していて、何度も身震いするような感じを覚えた。歌に表情が増しているというか、例えば、“黄色いカラス”のこぶしを効かすような情感たっぷりな歌い方だったり、“某鬣犬”のブルース調の楽曲で聴かせてくれた艶めいた歌声だったり、“メトロ”のドラマティックなメロディーを壮大に歌い上げる場面だったり、楽曲のバリエーションが増えると同じように猪狩の歌にも深みが出てきている。

メディアへの露出がほぼなく、オーディエンスはライブを観てCDを買う、あるいはCDを聴いてライブに足を運ぶという、あまりにも原始的なバンド活動を展開するtacicaだが、東京のワンマンとしては下北沢シェルター、渋谷クアトロ、恵比寿リキッド、そしてSHIBUYA-AXとロック・バンドとして至って健全な成長を遂げているし、演奏力もそれに応じて着実に伸びてきている。本当に真面目すぎるくらい真面目なバンドだ。だからか分からないけど、彼らのライブと向き合うには背筋をピンと伸ばして、正しい姿勢で聴きたくなってしまう。曲と曲の間は静かに次の音だったり、猪狩の言葉だったりをただただじっと待つ。この独特な間だったり、言葉少ななMCも、そして坂井による一生懸命なグッズ紹介もそうだけど、そのスタイルは小さなライブハウスでの空間と何ら変わりがないのだ。多分どんな会場だったとしても、この雰囲気は変わることがないんだろうなと思う。

しかし、そんな朴訥とした雰囲気が嘘のように、演奏時の熱さはライブを重ねるごとにどんどん増しているような気がする。一人ひとりに投げかけられるような外へ向かう歌の力や、立体感を帯びたバンドサウンドがtacicaの世界観へと私達を正しく導いてくれる。《何時まで経っても/僕は僕の身体/離さなかったから/何時まで経っても/僕は僕なんだ》そんなふうに歌う“γ”が演奏された時は、突き刺さるような内なる想いが心を奮わせ、一人ひとりがtacicaと対峙して熱くなる、まさにそんな時間だった。

アンコールでは、今年で3度目の開催となる『三大博物館』の開催が決定したことを発表! 12月1日(火)名古屋Electric Lady Land、12月2日(水)なんばHatch、12月13日(日)Zepp Tokyoの東名阪3公演で、ゲストを迎えてのイベント形式でのライブになるそうだ。「また、会おう」という力強い猪狩の言葉で締めくくられた今日のライブ。年内に行われるイベントでは、今日よりさらに広いZepp Tokyoが会場に決まっている。どんなライブを見せてくれるのか今から楽しみだ。(阿部英理子)
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